本間宗究の「ちきゅうブッタ斬り」(57)
- 2014年 7月 1日
- 評論・紹介・意見
- 投資本間宗究金融
ドーマーの定理
最近、いろいろな経済学者から、「ドーマーの定理」について意見を聞く機会があった。つまり、「なぜ、日本の財政が破綻しないのか?」という理由として、この理論が引用されているのだが、具体的には、「プライマリーバランスが均衡している時には、名目GDP成長率が、名目利子率を上回れば、財政赤字は維持可能である」という内容のことである。そして、「この理論を基にして、現在、世界的な金融政策が実施されている可能性」も指摘されたのだが、実際には、「荒唐無稽な意見」とも言えるようである。
つまり、「基礎的財政収支(プライマリーバランス)」が意味することは、「政府会計において、過去の債務に関わる元利払い以外の支出と、公債発行などを除いた収入との収支」のことであり、現在の日本では、「大幅な赤字の状態」になっているからである。そのために、「政府の目標」として、「2020年までに、プライマリーバランスの黒字化を目指す」という方針が示されているのだが、実際には、「国家財政は、悪化の一途を辿っている状況」とも言えるのである。
しかも、現在では、「異次元の金融緩和」という言葉が使われることにより、「日銀が、大量に国債を購入している」という、典型的な「リフレーション政策」が実施されている状況であり、このことは、「国家の借金を、日銀が肩代わりしている状況」とも言えるのである。つまり、「日銀の債務」を合計すると、「広義の国家債務」は、雪だるま式に増えているわけであり、もはや、「プライマリーバランスの黒字化」については、達成が、きわめて難しい状況とも考えられるのである。
また、この時に、「先進国の異常な超低金利状態」を考慮すると、現在では、「名目利子率」が、「本来の水準から、はるかに低い位置に誘導されている可能性」も存在するのである。つまり、「金利さえ上がらなければ、国家財政は破綻しない」という考え方が主流となっており、その結果として、「量的緩和」という「国債の買い支え」が、世界的に実施されてきたようにも思われるのである。
別の言葉では、「前代未聞の規模で、信用バブルが発生しているのではないか?」ということだが、この点については、今後、「金利の上昇」が起きた時に、全ての事実が明らかになるものと考えている。そして、その時期は、たいへん近くなっているようにも感じているのだが、「投資を実践する者」としては、この状況に対して、大きな危機感を抱くとともに、実物資産への投資を、より一層、お勧めする次第である。(2014.6.5)
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世界で最も割安な資産
「投資の基本」は、「割安な資産に投資し、長期的な値上がりを待つ」という方法だと考えているが、現在、海外で言われていることは、「銀(シルバー)が、世界で最も割安な資産の一つではないか?」ということである。つまり、「金銀比価」という「金価格と銀価格の比率」の面から考えると、現在の「1:66」は、「銀が売られすぎの水準」とも言えるのである。そして、この理由としては、いろいろな要因が考えられるのだが、一つには、「中央銀行の保有量が劇減した」という点が指摘できるようである。
つまり、「1971年のニクソンショック」まで、世界の中央銀行は「金本位制」を採用しており、この時には、「世界各国の中央銀行が、銀も大量に保有していた」という状況だったのである。しかし、現在では、「金(ゴールド)の保有量」だけに注目が当たり、「将来的に、中央銀行が銀を保有する可能性」については、全く無視されているのである。別の言葉では、「10年ほど前の金」と同様に、「誰も、中央銀行が銀を買い始める可能性を考慮していない状況」とも言えるのである。
また、二つの目の理由としては、「価格操作の噂」が指摘できるようだが、現在では、「ロンドン市場での値決めが、8月に中止される」とも予想されているのである。つまり、「価格操作に対する厳しい捜査により、値決め業者が手を引き始めた可能性」も指摘されているのだが、この点については、今後の報道を待つべきものと考えている。そして、かりに、「市場価格」が操作されていたとしたら、今後は、本来の水準に戻るものと考えているが、この点については、「ニュートン比価」と呼ばれる「1:15前後の水準」が予想されるようである。
つまり、「金価格が1250ドル」とすると、本来、「銀価格の妥当値は約83ドル」という計算になり、現在の「約19ドル」から「4倍以上の価格上昇」が見込まれるのである。しかも、今後、「金価格」の上昇が起きた時には、更なる価格上昇が見込まれるために、現在の「銀」については、まさに、「放置された宝の山」のような状況とも考えられるようである。
別の言葉では、「2000年頃」に「一家に一キロの金」を推奨した時よりも、現在の「銀」に魅力を感じているのだが、「一キロの銀が、8万円以下で買える状況」というのは、将来的に、「絶好のチャンスだった」と言われる可能性があるようだが、この点については、間もなく、何らかの「大きな変化」が起きることも想定されるようである。(2014.6.5)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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