本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(76)
- 2015年 1月 14日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
ロシアの混乱
現在、「ロシアの混乱」が世界的な注目を集めているが、この点には、大きな注意が必要であり、また、表面的な意見を鵜呑みにしないことが大切だと感じている。具体的には、現在、ロシアで発生している「金利の急騰」や「通貨の下落」が、間もなく、西洋諸国で起きる可能性があるからだが、このことは、「国家の体力」に関して、きわめて危機的な兆候とも言えるのである。
つまり、国家の信用が失われると、必ず、金利が上昇し、また、通貨が下落するが、現在の問題は、「本当に、ロシアだけが危機的な状況に陥っているのか?」ということである。別の言葉では、「国債を守る陣営」と「金を信用する陣営」のどちらが、「現時点で、有利な局面にあるのか?」ということだが、表面上は、確かに、「アメリカ」や「ヨーロッパ」などの「国債を守る陣営」の方が有利な状態とも言えるようである
具体的には、「国債価格」が史上最高値圏に位置し、また、「原油」や「貴金属」などの価格は、低迷状態にあるからだが、相場の基本である「これから、どのような展開が想定されるのか?」を考えると、全く逆の意見も考えられるのである。つまり、「国債を守る陣営」にとっては、「これ以上の金融政策や財政政策が実施不能な状態」だが、「金を信用する陣営」にとっては、「国債の売り崩し」という方法が存在するのである。
しかも、先進諸国の国家債務は、時間の経過とともに、増え続ける一方であり、また、「アメリカの量的緩和」が終了し、後は、「出口戦略」という「いつ、金利を上げ始めるのか?」に、世界的な注目が集まり始めているのである。そして、一旦、国債価格の暴落が始まると、「国債を守る陣営」にとっては、現在の「ロシア」と同様に、「金利を急騰させて、自国の通貨を守る方法」が取られることも予想されるのである。
その結果として、「貴金属価格の急騰」という事態も想定されるようだが、実は、今まで「マネーの大膨張」を支えてきた要因として、「ロシアや中国などが、世界の金融市場に参入してきた」という点も指摘できるのである。つまり、かつての社会主義国までもが、世界の資本市場に参入してきた結果として、現在の「世界的な超低金利状態」が実現されたのだが、前述のとおりに、「ロシア」については、すでに危機的な状況に陥っている。別の言葉では、歴史的にも、きわめて異常な「超低金利状態」を支える力が、すでに失われ始めており、このことは、現在の「ロシアの混乱」が、間もなく、「日米欧の国々」へと移転を始める可能性を示唆しているのである。(2014.12.22)
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金融大地震とインフレの大津波
1999年末から、日本証券新聞にコラムの連載を始めたが、お陰様で、700回目を迎えることができた。そして、今回、「金融大地震とインフレの大津波~未来予測への挑戦Ⅱ~」という本を発刊する運びとなったが、今までの推移を振り返ると、実に感慨深いものが存在するようだ。具体的には、連載を始めたきっかけが、「2000年のITバブル崩壊」を警告することにより、多くの人が被害を受けないようにという「想い」だったが、実際には、多くの人が、聞く耳を持たず、バブルに突き進んでいったのである。
また、「2006年末」から「2007年7月に金融大混乱が始まる」と警告したが、やはり、この時にも、ほとんどの人が実情を理解せず、単に、「大恐慌の再来」を危惧しただけの状況だったのである。そして、このような「人々の認識不足」が利用され、その後の「量的緩和(QE)」という名の「問題先送り政策」へと繋がっていったのだが、実際には、「世界の国家債務」が大膨張しただけであり、本当の問題点である「デリバティブ(金融派生商品)」については、一種の「飛ばし」のような状態になったのである。
しかも、この間に、世界的な「金融大戦争」とでも呼ぶべき状態が発生し、実際には、「国債を守る陣営」と「金を信用する陣営」との間で、熾烈な戦いが繰り返されたのである。具体的には、「日米欧の国々が、国債を買い支え、貴金属を売り叩いた状況」のことだが、この理由としては、「デフレを演出することにより、金融のメルトダウンを防ぐ」という点が指摘できるようである。
つまり、「国債価格が暴落すると、世界的な金融システムや通貨制度が崩壊する」という危機感を抱き、無理矢理に、「ゼロ金利政策」や「国債の買い支え」を実施してきたのだが、現在では、全ての「金融政策」や「財政政策」が行き詰まりを見せてきたものと思われる。その結果として、間もなく、「デリバティブの崩壊」、すなわち、「第二のリーマン事件」が起きることも予想されるが、このことが、私の想定する「金融大地震」であり、その結果として、「世界の国々が、一斉に、紙幣の大増刷を迫られる状況」が考えられるのである。
そして、この時には、「インフレの大津波」が襲うものと考えているが、現在でも、「ケインズ」の言葉のとおりに、「百万人に一人も気づかない状況」が継続しているようだ。つまり、大事件が起きた時に、全てが理解されるものと思われるが、できるだけ多くの人が、自分の資産に関して、自己防衛を考え、被害が最小限になることを望む次第である。
(2014.12.22)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5118:150114〕
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