(報告)再処理新規制基準等に関する政府との意見交換会 高レベル放射性廃液と再処理工場の恐怖 : 福島原発汚染水は1500Bq/リットルで問題だが,再処理工場廃液は1億7千万Bq/リットルで問題なし,でいいのか?
- 2015年 2月 4日
- 評論・紹介・意見
- 田中一郎
先週末1/30に,「三陸の海を放射能から守る岩手の会」(永田文夫代表)他の市民団体が呼び掛けて,政府関係省庁ならびに原子力「寄生」庁との「再処理新規制基準等に関する政府との意見交換会」が開催されました。下記は,その際の資料一式と録画です。報告を兼ねて簡単にご案内申し上げます。
使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す「再処理」のための工場は,今現在日本では,茨城県東海村と青森県六ケ所村にあります。また,その再処理工場には,それに密接に関連する施設として,再処理の結果生まれてくる高レベル放射性廃液を貯蔵しておく施設も併設されています。これらの再処理関連施設は大量の放射能を扱う超危険な化学処理工場であるだけでなく,正常運転時においても,べらぼうな量の放射能を海と大気中に放出してしまう環境破壊・汚染の施設でもあるのです。
中でも高レベル放射性廃液貯蔵施設は,茨城県東海村に394m3,青森県六ケ所村に202m3の廃液がそれぞれ冷却保管されており,本来であればガラス固化された状態で保管されるべきところが,非常に危険な液体のままで今は放置されています。万が一,これらの施設を大地震・大津波・火山噴火などが襲って冷却ができなくなれば,たちまち大変な事態となってしまいます(水素爆発,爆発並みの激烈化学反応,臨界爆発,大量の放射能の環境拡散などの可能性があり,こうした過酷事故の場合の影響の大きさは原発の比ではなく,東日本全土が,あるいは北半球全体が放射能に汚染されて人が住めなくなってしまうと言われています)。つまり再処理工場関連施設は,今現在は停止されていますけれども,この過去の再処理の結果として,できてしまった高レベル放射性廃液貯蔵のおかげで,危険な状態がずっと続いているとお考えいただければと思います。
また,再処理工場自体も,使用済み核燃料をぶつ切りにせん断して熱濃硝酸で溶かして化学処理するなど,原発の比ではない過酷な条件下での処理が行われるため,こちらも大変な危険性を抱えています(今は両工場とも停止中であり,かつ東海村の再処理工場の方は閉鎖されることになったとの報道ありですが)。おまけに,化学工場ですので,全長1300kmものパイプラインが工場内を縦横無尽に走っており,大きな地震に対しては脆弱な設備構造になっているのです。(津波に対しても,両再処理工場とも,ほとんど無防備な状態で,立地場所も津波被害を受けやすい場所にあり,ひとたび東日本大震災並の大津波がこの再処理関連施設を襲うと,高レベル放射性廃液貯蔵施設・再処理工場ともに,たちまち危険な状態に陥ってしまいます)
そして,きわめつけは,上記でも申し上げましたように,この再処理工場が正常に運転し,事故を起こさなかった場合においても,再処理工場は大気中と海に,原発が1年間に放出するのと同じくらいの量の放射能を1日で放出してしまうのです。たとえばトリチウムで見ますと,福島第1原発事故後において福島で海洋放出が問題になっているのは1,500ベクレル/リットルの濃度の汚染水ですが,六ヶ所村再処理工場の場合には,1億7千万ベクレル/リットル(170,000,000ベクレル/リットル)もの高濃度トリチウム汚染水が2日に1回ずつ,海に大量に放出されてしまうのです。福島では1500ベクレルが問題化しているのに,青森では,何故,170000000ベクレルが問題とはならないのでしょうか? それは政府や原子力「寄生」委員会・「寄生」庁が,再処理工場に対しては放射能の排出基準を設けていないからです(逆に言えば,妥当な基準を設けると再処理はできなくなるからです)。もちろん,海や大気中に大量に放出されて放射能はトリチウムだけではありません。様々な危険極まる放射性核種が環境に際限ないほどに出てきます。
以下,私が下手な説明をするよりも,「三陸の海を放射能から守る岩手の会」の方々が,下記URLに掲載される内容の要請書や説明資料を作成されていますので,そちらを熟読くださればと思います。再処理工場とその関連施設の危険性と汚さ(放射能の大量環境放出)は原発の比ではありません。こんなものが,何故,未だに生き残って再稼働へ向けて準備が進められているのか,全く理解できるものではありません。
そもそも,原子力「寄生」委員会・「寄生」庁に,再処理工場の安全性を審査できる技術的能力や知見があるのかさえ疑わしいものです。仮に彼ら規制当局の悪意を不問にするとしても,純粋に再処理施設を工学的に理解できている人間,再処理過程を核化学的に十分に理解できている人間が彼ら規制当局の中にどれだけいるのか,それさえも怪しいと言わざるを得ません。そして,おそらくは,その再処理に関する技術的,知識的な欠落を補う目的で,先般,再処理推進の権化のような人間であった田中知(さとる:東京大学教授)が原子力「寄生」委員会の委員となりましたが,その結果,再処理工場の審査を詳細にウォッチしている「三陸の海を放射能から守る岩手の会」の永田文夫氏のお話では,田中知が来て以降,審査の厳しさや鋭さが鈍り始めてしまっているとのことでした。危険な兆候が出始めているのです。
●ウィキペディア 田中知
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B0%E4%B8%AD%E7%9F%A5
では,下記をご覧下さい。再処理関連施設の現状とその危険性については,下記の「六ヶ所・東海再処理工場の新規制基準適合性審査の強化等を求める要請書(9団体 2015年1月30日)を,また,原子力規制庁及び政府関係省庁との意見交換の様子については,下記の録画(UPLAN)をご覧いただければと思います。
まもなく主催団体の方から正式な報告がなされるだろうと思います(サイトにアップ)。さしあたり,このメールは緊急報告ということでご覧下さい。私が見るところ,脱原発を志す多くの市民運動・社会運動においても,まだまだ再処理工場とその関連施設の危険性についての認識が甘いように思えます。今現在,再処理工場が動いていないからと言って,安心しないでいただきたいです。安心どころか,上記で申し上げたように,高レベル放射性廃液貯蔵施設という,水爆並みの超危険施設を日本は首都圏ののど元と,青森県に抱えてしまっているのです。今現在も取り返しのつかない過酷大事故へ向かってカウントダウンが始まっていると言っても過言ではありません。
<関連サイト>
(1)三陸の海・下北の大地を放射能から守ろう
(2)工場直下に活断層か 六ケ所・核燃再処理施設(河北新報) クマのプーさん
http://www.asyura2.com/07/genpatu4/msg/529.html
(3)全文表示 東海村「再処理施設」で水素爆発の恐れ プルトニウム溶液と高放射性廃液「放置」状態 J-CASTニュース
http://www.j-cast.com/2013/12/03190726.html?p=all
(1)六ヶ所・東海再処理工場の新規制基準適合性審査の強化等を求める要請書(9団体 2015年1月30日)
(2)放射能海洋放出規制法(仮称)の法律制定に関する請願書()豊かな三陸の海を守る会 2014年11月18日)
(3)止めよう再処理!(三陸の海を放射能から守る岩手の会 2007.12.11他)
(4)止めよう再処理! 共同行動ニュース 「再処理とめたい!、首都圏市民のつどい 2015.1.28)
(5)(イベントパンフ)連続学習会 破綻した核燃料サイクル (澤井正子さん 2015年2月16日 月曜)
<録画>
●▶ 20150130 UPLAN【政府と意見交換会】六ヶ所・東海再処理工場の新規制基準について – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=KYaxWi4Wl3U
<追>
上記(5)のイベントチラシにあります通り,来る2015年2月16日(月)に,原子力資料情報室の澤井正子さんを講師に招き「破綻した核燃料サイクル」と題した学習会が開催されます。(18:30~20:30 連合会館5Fー501会議室)ふるってご参加ください。
それから,この再処理施設や高速増殖炉「もんじゅ」などの核燃料サイクル事業は,その目的が商業利用というよりは,潜在的な核兵器製造手段(プルトニウム)の確保・保有という「軍事がらみ」であることも認識しておく必要があります。だからこそ,いつまでたっても商業利用できる見込みがたたないにもかかわらず,核燃料サイクル事業が生き残り続けているのです,そしてこのことは,明らかに非核三原則と核拡散防止を国是とする日本の核政策に真っ向から反しています。
(イベントパンフ)連続学習会 破綻した核燃料サイクル (澤井正子さん 2015年2月16日 月曜).pdf
止めよう再処理! 共同行動ニュース 「再処理とめたい!、首都圏市民のつどい 2015.1.28).pdf
止めよう再処理!(三陸の海を放射能から守る岩手の会 2007.12.11他).pdf
放射能海洋放出規制法%28仮称%29の法律制定に関する請願書(%29豊かな三陸の海を守る会 2014年11月18日).pdf
六ヶ所・東海再処理工場の新規制基準適合性審査の強化等を求める要請書(9団体 2015年1月30日).pdf
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5162:150204〕
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