マンション生活で知り得た社会問題を考える ― (11)もう一つのマンション問題[管理]
- 2015年 11月 11日
- 評論・紹介・意見
- マンション住宅問題住民自治羽田真一
突然の横浜の大規模マンションで傾きの発生から、施工業者の杭打ち偽装が発覚し、単に一マンションの問題ではなく大きな社会問題となっている。何処まで広がるか予断を許さない段階であるが、一企業の問題だけで収まるとは思えない。私はマンション居住者の一人として経験したマンション生活の社会問題を追及し、その管理上の問題点をちきゅう座投稿サイトに報告してきた。今や集合住宅の代表となってますます増加傾向にあるマンションなる居住システムは、歴史も比較的浅く、管理の法的環境の完成度も低く、まだ解決すべき本質的課題を多く抱えている。杭打ち偽装の問題がきっかけとなって、隠された建造物[ハード]問題の一端が明るみに出て来たが、もう一面の大問題のマンション管理[ソフト]にもっと世間の目が向けられるべきであると思っている。ハード面・ソフト面共にマンション問題は管理会社・管理組合の動きが重要な鍵であり、注目度が上がりその実態が世間に理解されることを願っている。当事者の分譲会社や管理会社の後ろに業界組織(会社・団体など)・公共機関(国・地方の役所、警察、裁判所など)・マスコミ等多く高いハードル(障害物)が控えており、一方、管理組合には管理会社とともに理事会を助けるコンサルタント・理事会有力OB・管理人などを従えた[管理中枢]というハードルが存在する。羽田がその中で住民として個人が異論を発すると、彼らが住民に牙をむいてくることを経験した。「お上の言うことに黙って従っておけばよいのだ」と考える組合集団から村八分的排除を受けている。百戦錬磨のマンション管理関係企業に抗して、個人がこの状況を打ち破るのは並大抵ではない状況に追い込まれる(個人体験では強靭な体力と精神力が必要と痛感している)。これがマンション内で羽田が置かれている現状である。最近、情報を共有する機会を得て、自分の判断思考に生かすことで少なからぬエネルギーをもらっている。
1. ある「管理会社マンション」管理変遷の経緯(既報(1)~(10)も参照下さい)
都市郊外にある、1980年建、大手不動産会社分譲、5階建て6棟からなる戸数240戸の中規模マンションは管理会社・管理人ともその子会社の直接管理で始まった。
1996年2代目の前管理人が管理会社に雇用されると直ぐに自主管理検討チームを発足させ、1999年名ばかりの自主管理体制が発足(これが紛争の根源と見ている):管理会社は会計管理のみ、管理実務はこの前管理人(管理会社の代理人待遇)の独占継続、既に専門委員会があり1994年第1回大規模修繕工事実施。専門委中心で管理規約の改訂・コンサルタント契約し長期修繕計画制定委託。前管理人が扱う小口現金会計処理などの会計実務、専門委を理事会に優先させる運営(理事会の形骸化)など問題多し。
その中で2011年羽田が理事長就任。前管理人の管理支配の違反や会計不正疑惑を文書配布で住民に訴える。マンション内外への文書配布による管理組合正常化、特に会計公開の訴えに対し、理事会はそれを無視しながら理事長を辞任勧告で排除した。しかし、直後に前管理人を逃亡させ、専門委の大半も辞任したが、2012年前述の管理中枢が動き[新管理体制]として管理会社の直轄支配を復活させた。専門委も徐々に理事会役員として復活させている。
羽田による会計公開の要求を理事会は無視し続けたので、2013年簡易裁判所に調停を申立てたところ、理事長は調停員には「見せる」と答えて調停を切り抜けながら、理事会で罰則付き制限だらけの閲覧細則試案と誓約書を持出し、唐突に審議するなどで巧妙に会計閲覧の実行を拒んできた。これをマンションの外にも伝えると、2014年理事会は羽田の文書配布差止請求書を出し、配布資料に羽田の悪人像を造り上げ(これぞ誹謗中傷)て住民を騙し、刑事告訴手続きを臨時総会で承認した(実質出席者は管理中枢)。その後、今に至るまで、理事会は羽田に告訴手続きの進捗状況などの情報を完全シャットアウトし、羽田の理事会傍聴・資料配布拒否を実行している。マンション内は管理規約があっても治外法権同様だから、掲示板や理事会議事録を悪用して情報操作する。住民が束になって文句を言わない限り、理事会は原則何でもできる状況にある。
2. 1人の管理会社マネージャーが預かる[管理費*]は?
マンションは私的空間でありながら集合住宅として共同生活の場である。そこに住民組合員による管理組合が形成され、それを代表する理事会が表に立つ。そこには運営費用として[管理費*]が徴収され、管理費や修繕積立金他として予算が組まれ、マンションという資産価値維持のための管理運営がなされることになっている。毎年高額の[管理費*]の集積があり、その使途は本来なら住民の意思を反映した民主的な決定に基づいたものであるべきである。しかし、その運営には手間と専門性も必要なところから管理会社委託の方式をとるのが一般的である。素人集団の管理組合住民と力も経験もある管理会社との関係では、[管理費*]を納める住民が主役という根本精神を歪め、管理会社のための理事会が支配する「管理会社マンション」が出現しやすい。(5)報で試算したように、ある面でマンションは「資産」の塊として長期にわたり多額の資金が集まり、不動産業界の餌食になりやすい。マンション管理組合会計の公正さは公的第3者機関での監査を義務化すべきと主張したい。
どれだけの経済規模か具体的イメージを掴んでいただくため、当方試算の数字を示す。
(Q)マンション管理会社1マネージャーの預かる年間の管理費総額はいくらか?
(A)[250戸・[管理費*]2万円/月のマンション10物件を担当すると、彼の下に少なくとも年間約6億円もの資金が預けられる (マネージャーが100人いたらそれだけで600億円規模の金を左右できる)] 正しくマンションは「金のなる木」なのだ。
現実に会計管理は本社のコンピュータープログラムに担わせるだけで、当マンションのマネージャーはトラブル解決の経験なし(彼は水漏れ発生1件の処理に半年かかった)で6億円を預かる。当方の理事長報酬遅延問題では本社会計部のお粗末な会計工作や文書偽造の疑問を持った。当方が主張する[管理費*]を減額(2万円→1万5千円)すれば、1戸当たり30年で180万円で上等なリフォームができる。マンション全体で4億3千万円は大規模修繕工事が2回無料でできる計算になる。一度真剣に皆で[管理費*]を考えてはいかがか。
3. 公的機関はマンション管理の意識改革が必要
現在、杭打ち偽造問題調査が進行中であるが、一方、羽田が採り上げているマンション管理問題[ソフト面]でも、上部で関係する公的機関の意識改革が必要と思われる。現場では管理組合住民の統治(管理)で金銭(会計)が絡み、正しくあるべき基本人権や組合会計という重要問題にも拘らず、社会問題としてクローズアップされてこなかった。個々のマンションが分断状態であり情報共有もなく、一部で「管理会社マンション」管理がなされていると訴えても「クレーマー」が騒いでいるだけと、一般住民は従来のマンション管理が当り前的感覚で事が進んでいる。業者も役所もマスコミも問題が大きく発覚しない限り問題は存在しないとばかり、真剣に取り組む気配が見えない。しかし、「管理会社マンション」管理が厳然として存在する。
マンション管理に関して、集団の力(管理会社を含む管理中枢)が強いのは当たり前、個人住民は弱者の立場にあることを前提にして、個人の訴えを真摯に受けとめ、双方の言い分を公平に聞き、不正者に鉄槌を下す公的機関が存在しない[裁判訴訟は別次元と考える]。住民の理事会議事録や組合会計の閲覧ができる規約があっても、集団の中では多数派集団の力で阻止できてしまう(正しく集団の暴力)。個人(少数派)を尊重する観点で集団の不正を防止する法的規制が弱すぎる(労働基準監督署の簡易版のイメージである)。
管理規約でも会計処理の規定条項はあるが(当マンションでは会計処理細則が意図的に未制定)、日本では会社会計に当たるマンション管理組合の会計基準は制定されておらず、現実は管理会社の会計支配が勝る環境にある。組合会計ではオープン性の確保、会計資料の提出義務・公認会計士による監査の導入・虚偽記載の罰則化などの(会社に相当する)会計基準が必要ではなかろうか。
前管理人を中心に仕組まれたエセ自主管理から13年、見事に「管理会社マンション」管理が完成していた。羽田の理事長経験から抗い始めて5年近くが経ちながら、まだ目的を達成できないでいる。何より主役の住民の自分たちの生活は自分たちの意志で守る意欲と努力でしか真の「自主管理」は実現しないのではなかろうか。
4.マンション生活で「3つの自」を実現しよう
何度も書くが、管理組合運営の資金は全て住民組合員が納める[管理費*]であり、原則は住民が意思決定の主役でなければならないと思っている。マンション住民は管理組合を通じて、真の主権者でなければならない。そのために「3つの自」を実現しよう。すなわち、自由、自主、自治の精神である(専門性というなら、勉強して騙されない”専門性”に委託契約することである)。
敵はさるもの、理事会を動かして次の総会で管理中枢に有利な管理規約の新設?を目論んで動いている。住民の無関心を利用してコンサルタントが紹介したマンション管理士まで委託し、住民に十分検討する機会を与えず、新「管理会社マンション」管理規約を押し付けてくると見ている。総会で(すでに完了済み)原案の早期公開を要求したら、現理事長は「早く見せたら、それが既成事実となって誤解されるので出さない」とのたまった。悪法が一度制定されてしまえば、害を被るのは一般の住民組合員である[その例が管理組合役員の任期であり、理事会役員:1期で交代、専門委員・管理人・大口委託業者:無期限契約が可能]。これが長期就任の大ボスを生み、癒着と会計不正に繋がっている。羽田は、①自分たちの意見を反映した「自主管理」ルール、②住民は社会人としての「自由意思」で行動、③集団として自立した「自治精神」に基づく管理組合運営、でありたいと願っている。第(10)報と重なる面があるが、その観点から提案する。既に「住民マンション」では当たり前であろう[羽田の提案は殆ど理事会が否決・無視して実現されていない]。
・管理会社関係者など非住民を審議決定の場に入れるな「住民自治管理組合」。いまだ支援と称して管理会社マネージャー・コンサルタント・管理人等が出席している。
・自主雇用管理人を雇え(雇用委員会による、組合管理精神を理解する人材を)。
・理事(含役員)・監事の選挙は順番くじ引きを止め、「住民投票による選挙制」を採用せよ。
監事の独立性確保とオンブズマン制を導入。住民投票・リコール制度の導入。
・全ての組合活動の「オープン性」確保。特に管理事務所窓口、理事会傍聴、各種資料の
自由閲覧。年1度程度の意見交換会「自由討論の機会」を確保せよ。
・理事会役員、管理会社・コンサル・管理人等大口契約の委託年数制限(5~10年)が必要。
・住民の要望書制度(住民意見の汲み上げ)、苦情処理委員会や総会成立監視委員会の設置。
・管理組合の法人化(メリット:個人商店→法人格扱い、例:不動産の取得可)の実現。
・総会審議事項の恣意的選択や総会逃れ後出し(理事会で決定執行)など規約違反の禁止。
・組合会計の公開・自由閲覧(管理人の扱う小口現金会計は廃止)を実施せよ。
・広報の活発化:悪用される組合ニュース・議事録の抄録回覧でごまかしを止めること。
再び、ガンジーの言葉を引用して、「あなたがすることは殆ど無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは世界を変えるためでなく、世界によって自分が変えられないようにするためである。」だから、村八分的排除などどうでもよい。もっと大切な自分を作るためにも、この抵抗を止める訳にいかない。羽田を権力で抑え付けても羽田の抵抗精神まで消すことはできないだろう。
[第11報終り]
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5768:151111〕
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