日本政府も自民党政権も、そして司法・裁判所も、「原発利権まみれ」の出鱈目、そしてアメリカもだ(『実録FUKUSHIMA』(岩波)より)
- 2016年 1月 3日
- 評論・紹介・意見
- 田中一郎
(最初にいくつか)
1.高浜原発再稼動容認の裏に裁判所と原子力ムラの癒着! 原発推進判決出した裁判官が原発産業に天下りの実態|LITERA/リテラ 本と雑誌の知を再発見
http://lite-ra.com/2015/12/post-1822.html
2.小泉純一郎「安倍政権批判」インタビューで明らかになった「原発ゼロ」への次の一手! やはり進次郎と…|LITERA/リテラ 本と雑誌の知を再発見
http://lite-ra.com/2015/12/post-1790.html
3.(メール転送です)「インド、東芝傘下ウエスチングハウスに原子炉6基を来年発注へ」 ロイター 2015年 12月 30日(水) 20:56
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新年早々、嫌なニュースですが、ロイターのニュースによると、インドは、今年2016年(記事で「来年」とあるのは、12月30日付の記事のため、今年2016年のこと)、東芝傘下のウェスティングハウスに原子炉6基を発注する方針とのことです。東芝は、米国の原子力メーカーのウェスティングハウス社を巨額で買収したために、経営が傾き、粉飾決算までして、現在の危機を招いたのに、まだ懲りないのでしょうか!
インドへの原発輸出を可能にする日印原子力協定の調印・批准をさせてはなりません。原発保有国であるにもかかわらず、NPT条約(核兵器不拡散条約)に入ろうともしないインドに原発輸出や原子力協力をすることは、核兵器拡散の危険にもつながります。
●「インド、東芝傘下ウエスチングハウスに原子炉6基を来年発注へ」 ロイター 2015年 12月 30日(水) 20:56
http://jp.reuters.com/article/india-nuclear-westinghouse-idJPKBN0UD10L20151230
[ニューデリー 30日 ロイター] – インドは30日、東芝(6502.T)傘下の原子力事業子会社である米ウエスチングハウス・エレクトリックに来年、原子炉6基を発注する方針を認めた。インドはこのほかにも、少なくとも12基の原子炉をロシアと共同で建設する契約を結んだことを明らかにした。燃料供給に関してはオーストラリアと民生利用協力で合意したという。インドは約60基の原子炉設置を予定しており、実現すれば世界の原子力発電市場で中国に次いで第2位となる。
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(事実上、経営破たん・粉飾決算状態にある東芝を、日本政府と自民党政権は、こういうことをして、見えないところで全面支援していたということか。この対インド原子力協定や経済協力の交渉プロセスにおいて、日本の安倍政権からインド政府に対して、ひそかに「東芝の売り込み」がなされていた可能性があります。もしそうだとしたら、許しがたいことです。:田中一郎)
(ここから本文)(メール転送です)
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毎日、九州は福岡で、九州電力本社の前でずーっと抗議行動を続けておられる青柳行信さんから、毎日「★原発とめよう!九電本店前ひろば★」のメールをいただいていますが、その中に中西正之さんという方の非常に興味深い記述がありましたのでご紹介します。まだご覧になっておられなければ、ぜひ目を通してみて下さい。お話は、岩波書店の新刊本『実録FUKUSHIMA』の記載内容についてです。また、既に私はこの本をある市民集会で購入していて、これから読んでみようかなと思っているところです。みなさまも、よろしければ、どうぞお読みになってみてください。
●実録FUKUSHIMA アメリカも震撼させた核災害-デイビッド・ロックバウム/〔著〕 エドウィン・ライマン/〔著〕 スーザン・Q.ストラナハン/〔著〕(岩波書店)
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033342342&Action_id=121&Sza_id=C0
1.【報告】第1708目★原発とめよう!九電本店前ひろば★(2015年12月23日)
中西正之 さんから: 青柳行信 様
<「実録FUKYSHIMA」は福島事故により判明したアメリカのNRCの規制基準の見直書(1)>を報告します。
今、使用済み核燃料プールの大変な危険性や使用済み核燃料の乾式保管が注目されています。そして、アメリカのNRC(アメリカ合衆国原子力規制委員会)が福島第一原発の過酷事故発生時、4号炉使用済み核燃料プールにジルコニウム火災が起きると、使用済み核燃料が微粉化して100%の核燃料が大気中に飛散する可能性もあるので、その事を最も恐れたという説がウエーブでつぶやかれているので、私の専門領域からは信じられないのですが、何か盲点があるのかと思って、「実録FUKYSHIMA、アメリカも震撼させた核災害、デイビッド・ロックバウム、他」を購入して、全部読んでみました。
その事も詳しく書いてありましたが、この「実録FUKYSHIMA」のテーマーはそのような事では無く、アメリカのNRCの原発の規制基準にはたくさんの問題が有ったが、それはスリーマイル島原発の過酷事故やその後のアメリカで起きた事故の経験から策定されたもので有り、NRC自信も大きな問題を抱えている事は分かっていたが、アメリカの沸騰水型原発、加圧水型の原発とよく似た規制基準で操業されてきた日本の福島第一原発のマーク?型の原子炉で起きた過酷事故で、アメリカのNRCの規制基準を検証すると、アメリカの規制基準のどこに欠陥が有り、アメリカの既存原発の継続的な稼働や、新設が如何に悲観的な事かが分かる具体的な説明書です。 アメリカの原発メーカーがどうして、アメリカの原発会社を日本に販売してしまう事になったか良く分かりました。
今まで、IAEAの新安全基準や、ヨーロッパの新規制基準、ロシアの原発の過酷事故対策などは良く分かるのですが、アメリカのNRC(アメリカ合衆国原子力規制委員会)の新規制基準は霞がかかっていて、朦朧としか分かりませんでした。しかし、「実録FUKYSHIMA」を読んでみると、霞が腫れてきました。あまりにも、知らなかったことが多すぎるので、付箋がいっぱいつきました。これから、その事を少しずつ説明していきますが、初めに4号炉使用済み燃料プールのジルコニウム火災を説明します。
「実録FUKYSHIMA」に福島4号炉使用済み燃料プールのジルコニウム火災と、メルトスルーによるトーラス(ウエットチャンバー)における水蒸気爆発の可能性による、放射性物質の大量飛散の可能性が詳しく説明されています。167ページに4号炉使用済み燃料プールのジルコニウム火災による放射性物質の飛散が説明されています。「初めは、ペレットと被覆管の間の空間に閉じ込められていた、希ガスやヨウ素131やセシウム137などの放射性ガスに限られる。加熱がしばらく収まらなければ、燃料ペレット自体が壊れ、ペレットの中に閉じ込められていた放射性物質が、希ガスとともに放出される。最終的には、ペレットそのものが融け、プルトニウム239やアメリシウム241などさらに多くの種類の同位体が放出される可能性が有る」、と説明されているが、微粉化が起こり100%大気中に飛散される事もあるとは、全く説明されていません。
それから、180ページに水蒸気爆発の事が説明されている。「もし本当にプールが干上がっていたら、その脅威はとてつもなく大きい。高温の燃料が融けて、いまにもコンクリート製のプールの底に落ちるかもしれない。そしてその下方には、300万リットル以上の水をたたえたトーラスがある。もし融けた燃料がトーラスに到達したら、瞬間に水が蒸発して大きな水蒸気爆発が起こり、放射性を帯びた炉心の材料が広範囲にまきちらされるかもしれない。(しかし、プールが干上がっているという確信と同じく、融けた燃料による懸念も、実は根拠が無かった。翌日行ったコンピュータシミュレーションによって、燃料はプールの床を融かして突き破るほどの高温度では無い事が示された)。」と説明されているが、微粉化が起こり100%大気中に飛散される事もあるは、水蒸気爆発の場合で、ジルコニウム火災の場合では無い。そして、使用済み燃料プールからの、ジルコニウム火災による放射性物質の飛散は無かったと説明されています。
2.【報告】第1709目★原発とめよう!九電本店前ひろば★(2015年12月24日)
★ 中西正之 さんから:青柳行信 様
<「実録FUKYSHIMA」は福島事故により判明したアメリカのNRCの規制基準の見直書(2)>を報告します。
◎NRCタスクフォース
「実録FUKYSHIMA」のレビジョンを示します。
https://www.iwanami.co.jp/.PDFS/00/6/0054710.pdf
アメリカの政府とNRC(アメリカ原子力規制委員会)は2011年3月11日に福島第一原発に過酷事故が発生した時、即座に政府機関とNRCに福島事故調査と、対策を大規模に開始している。この目的は、日本国内と日本近辺の海上に滞在している自国民を放射能被害から守ることと、もう一つ福島第一原発の原子炉と同じタイプの自国の原発の運転を問題無く継続させるためだったと思われる。もともと、日本の商業用原発は1号機のみは、イギリスから黒鉛減速型原発を輸入したが、それ以後の原発はアメリカの沸騰水型原発と加圧水型原発を輸入し、その後原発をライセンス生産してきた。
そして、日本では安全神話が完全に浸透していたが、アメリカは原子爆弾を開発した国で、又沸騰水型原発と加圧水型原発を多数建設していたので、放射性物質が漏洩するような事故も起きており、安全規制も行ってきた。一方日本では、原発の安全規制は、世界中の安全規制を参考にするのではなく、アメリカのNRCの安全規制を参考に下、その一部で構成されていた。
そのために、3月11日に福島第一原発に過酷事故が発生した時、アメリカの方が、日本政府と原子力規制機関よりも、事故の規模や安全対策を良く知っており、日本政府に任せておいて、過酷事故が日本を壊滅させるほどになれば、アメリカの原子力産業や、電力産業も成り立たなくなることを恐れて、日本の過酷事故対策に全力を注いだものと思われます。 福島事故が危機を脱出したと思われた時、アメリカのNRCはタスクフォースを設置しています。
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/pdf/02480203.pdf
219ページから、タスクフォースの設立と、その後の検討内容が詳しく報告されています。そして、上記アドレスに示したように結論を出しています。『(1)に関しては、タスクフォースは、一連の福島原発事故に類似する事故はアメリカでは起こりえないと結論づけた。すでに取られている対応により、炉心損傷や放射性物質漏えいの可能性は減ぜられており、現行制度で公共の安全及び国民の健康は保護されているとした。』
NRCとタスクフォースが詳細に検討した、今後のアメリカの原発の新安全対策が、日本の原子力規制委員会の新規制基準のたたき台になったと思われます。したがって、新規制基準を理解するためには、NRCとタスクフォースが詳細に検討した、今後のアメリカの原発の新安全対策を良く知ることが、非常に参考になると思われます。
・『マークI 及びマークII 型格納容器を有する沸騰水型原子炉については、ベントの設計をさらに信頼性が高い強固なものとするよう要求するべきである。
・長期的視点での検討項目の1 つとして、福島原発事故の今後の研究を通し、追加的な情報が明らかになった場合、NRC は格納容器内又は他の建造物において、水素を管理すること及びその発生を最小限にすることについての洞察を深めるべきである。
・使用済核燃料プールの水補給の能力及び設備の強化を行うべきである。
・緊急事態運用手続、過酷事故管理ガイドライン、甚大な被害を軽減するためのガイドライン等の原発内での緊急事態対応能力を強化し、統合すべきである』
・水素対策は重要性が述べられているが、水蒸気爆発対策は記載されていない。
もともと、NRCとタスクフォースが詳細に検討した新安全対策は、ヨーロッパ、ロシアの過酷事故対策に比べて、レベルが非常に低くなっている。230ページからの説明では、アメリカの原発は、川の水を冷却水に使用しているものが多く、その原発の上流に大きなダムが有る物があり、万一ダムが決壊したら、福島第一原発の大津波よりもひどい洪水が予測されるものも多いそうである。それが分かっていながら、十分な対策は要求していない。また、228ページからの説明によると、産業界が提起したFLEX(多様で柔軟な緩和能力)プログラムは可搬式装置による緩和対策である。これも日本の新規制基準に積極的に採用されている。日本で策定された新規制基準は、アメリカの新規制基準の都合のよい処は積極的に取り入れるが、都合の悪いものは、避難計画等とか大事な対策でも取り入れに無い、世界最低の規制基準という事がよく分かると思われます。
3.【報告】第1712目★原発とめよう!九電本店前ひろば★(2015年12月27日)
★ 中西正之 さんから:青柳行信 様
<「実録FUKYSHIMA」は福島事故により判明したアメリカのNRCの規制基準の見直書(3)>を報告します。
◎「産業界における損傷炉心規制」(IDCOR)プログラム
1979年3月28日にスリーマイル島でメルトダウンが起きる過酷事故が発生したので、1980年10月にNRCは「現状の「設計基準事故」の方法論で考慮されているものを超える原子炉事故に対して、商用原子力発電所はどの程度まで対応できるよう設計すべきかを見極めるために」、規制を改正する必要があるかどうか、という疑問を律儀に取り上げた。そしてそのとりかかりとして、規則制定に先って草案がしめされた。提案の中には、格納容器の破裂をふせぐために、フィルター付きベントや水素の蓄積を抑える装置、あるいは、溶融して圧力容器を突き破った炉心を安全に捕まえるコアキャッチャーと呼ばれる構造体等の設備を設置するよう求めるというものが有った。
「この草案が出されると、原子力産業界に戦慄がはしった。」と説明されています。産業界は即座に、業界団体である原子力産業会議(現在の原子力エネルギー協会の前身)のもとに団結して、「産業界における損傷炉心規制」(IDCOR)プログラムという対策を立ち上げ、NRCを思いとどまらせようとした。アメリカ、日本、フィンランド、スエーデンの原子力発電会社や原子炉メーカーから1500万ドル(2013年の価値換算で4000万ドル以上)の出資を受けたIDCORの目標は「規則を作るのであれば、技術的利点に基づいて、しかも原子力産業が受け入れられるような規則にする事」だった。
1984年後半にIDCORのグループは報告書を発表した。「過酷事故による大衆へのリスクは大幅に過大評価されており、実際のリスクは極めて低くなっている。これ以上の規制は必要ない、と。産業界が過酷事故の放出放射能量を引き下げるよう提案したことは、NRCによる規制強化の取り組みを根底から覆すものに等しかった。産業界が特に取り下げさせようとした要件の一つが、課せられたばかりの、すべての原子力発電所の周辺の10マイル(約16キロ)に緊急避難区域を設定するというものだった。この要件が課せられたとき、ニューヨーク州では抗議の嵐か巻き起こり、州当局や地元当局は、ロングアイランドに新たに建設されたショーラム原発の緊急対応計画の承認を拒否して、稼働を阻止していた(原子力発電所に反対する人たちは、ロングアイランドの狭い道路では大勢の避難民をさばききれないと主張した)。
このように、アメリカでは、それまで起こらないと考えられていた過酷事故が、スリーマイル島で発生し、今までの想定より放出放射能量が多く成るために、10マイル(約16キロ)に緊急避難区域を設定する必要が有ると、NRCが意思表明した時に、電力会社が、従来の原発の新設時の放出放射能量の設計目標値を引き下げて、厳しい設計条件とし、既存の原発の安全対策の目標値も従来よりも厳しくするので、緊急避難区域を広げる必要はないとして、その規制方針をおし通しました。NRCもしぶしぶそれを認めてしまったようです。
日本で、原子力規制委員会が、設立されたばかりの時決めていた、過酷事故発生時のセシウム137の大気中放散量1万テラベクレルを途中から100テラベクレルに変更し、5km圏外の人は、屋内避難をすれば、慌てて避難する必要はないとの見解を表明する事になったのは、アメリカの原子力規制を見習ったものと推定されます。日本の原子力規制委員会は、ヨーロッパやロシアの安全基準は殆ど無視し、アメリカの悪い基準は直ぐにまねをするようです。
4.【報告】第1714目★原発とめよう!九電本店前ひろば★(2015年29日)
★ 中西正之 さんから:青柳行信 様
<「実録FUKYSHIMA」は福島事故により判明したアメリカのNRCの規制基準の見直書(4)>を報告します。
◎ アメリカのバックヒット規則
254ページから257ページにアメリカのバックヒット規則が説明されている。『1988年のバックヒット規則は、レーガン政権による規制撤廃の大きな動きに端を発している。1981年にロナルド・レーガン大統領は、連邦機関に対して、「社会に対する潜在的利益が・・・・社会に対する潜在的コストを上回らない限り」規制措置を取ることを禁じる大統領命令を発布した。』
分かりにくい表現ですが、257ページには、『NRCは1970年代半ばからすでに、そのような数値として一人1レム(10ミリシーベルト)あたり1000ドル(約10万円)という値を定め、この値を使って、影響を受ける集団の総被爆線量から費用を算出していた。がんのリスクに関する現代の知見に基づいて、人間の命の価値は1人分の命の価値を100万ドル(約1億円)から200万ドル(約2億円)とした。』と記載されています。
アメリカのバックヒット規則では、福島第一原発の過酷事故の発生等により、既存の原発の安全性が不足している事が分かり、事故の発生により原発の敷地外まで放射性物質が飛散し、住民に被爆の被害が出ると確率計算される場合でも、住民への保証に必要な費用よりも、安全性を高めるための補強工事にかかる費用がはるかに大きく成ると計算された場合は、被害が出た時損害を補償すれば良いので、補強工事の為に大きな投資はしなくても良いとの基本方針です。
IAEAの安全基準でも、アメリカの基準ほど明確には記述されていませんが、バックヒット規則は安全性を従来程度に取り戻すために必要な費用と、住民に被爆の被害が出る時に必要な費用はバランスを取る必要が有り、安全を確保するために巨額の費用を投入する事は好ましくないと説明されています。
その点では、住民の安全は、電力会社の利益や日本の経済よりも優先されるという建前を取っている日本の安全基準は、住民の利益を尊重し、安倍総理大臣の言うように世界最高水準の建前かもしれません。しかし、実質的には、海外の規制基準のように、原発にメルトダウンが起きて、水蒸気爆発が起きたら、住民への健康被害や命の喪失についての保証金額が幾らになるのかを算定せずに、福井地裁の林潤裁判長、山口敦士裁判官、中村修輔裁判官のように、新規制基準の適合性の審査に合格した高浜原発3、4号機はメルトダウンが起きる事は有り得ないので、過酷事故が発生した時に何十兆円の住民補償をしなければならないかを検討する必要はまったくないとの判決です。
アメリカの原発安全規制やIAEAの原発安全規制は少なくとも、過酷事故が発生した時にどのように巨額の補償費用が必要なのか算定をして、住民の被害とバックヒットに必要な投資額の代償を比較していますが、林潤裁判長、山口敦士裁判官、中村修輔裁判官は「過酷事故は起こらないので、過酷事故が発生した時にどのような巨額の補償費用が必要となるかの算定は不要で有り、再稼働を認めるという判決ですから、日本の原発規制は海外と比べても、比類なく冷酷な裁判の判決と思われます。
5.【報告】第1715目★原発とめよう!九電本店前ひろば★(2015年12月39日)
★ 中西正之 さんから:青柳行信 様
<「実録FUKYSHIMA」は福島事故により判明したアメリカのNRCの規制基準の見直書(5)>を報告します。
◎原子力発電運転協会は影の規制当局
200ページから204ページに原子力発電運転協会の事が記載されています。ここまでこのシリーズで報告して良いものかどうか迷うのですが、アメリカと日本の原子力規制の本質に触れる極めて貴重な情報なので、あえて報告します。
『スリーマイル島の事故を受けてアメリカの原子力産業界が直接取った対応の一つが、原子力発電運転協会の設立である。原子力発電運転協会は、産業界の情報センターとして機能するとともに、影の規制当局としての役割もある程度はたしている。・・・・・1970年代、原子力発電会社は互いにほとんど情報を共有していなかった。運転上の小さな問題や装置の不具合についてリアルタイムで情報をやりとりする事が無かったため、共通する問題に対してよけいに脆弱になっていた。いまでは、原子力発電運転協会が発電事業者に、良い経験や悪い経験を共有することを求めている。その目的は、すべての電力事業者が、過ちや不具合を直接経験せずともそこから学べるようにする事である。原子力発電運転協会はまた、最高基準を設定し、各原子力発電所をその基準に照らし合わせて定期的に評価している。しかし、情報の供給はこの範囲でしか行われていない。原子力発電運転協会の評価報告書は、原子力産業界において、アメリカでももっとも厳重に守られた秘密文書の一つである。NRCでさえ入手できない』と記載されています。
また、『1993年、公益団体のバブリック・シティズンが秘密扱いになっている、原子力発電運転協会によるアメリカ全土の原子力発電所の安全報告書を入手し、同じ時期にNRCが作成した評価書と比較した。原子力発電運転協会は56の発電所での463件の問題を取り上げていたが、NRCの報告書で懸念すべき問題として示されていたのは、そのうちの三分の一だった。』と記載されています。原子力発電運転協会はアメリカの電力会社が設立した組織ですので、アメリカの原発で起きた様々な事故は、一番良く知っており、しかも原子力発電運転協会の評価報告書は重要な秘密とされており、NRCにさえも秘密とされているので、国の公的機関のNRCにはアメリカの原発で本当に起きた事故の全貌はつかめなくなっています。そして、安全対策や原発の安全規制は最高級の水準の物は、NRCには作成できない仕組みになっ
ているようです。
このアメリカの「原子力発電運転協会は影の規制当局」の構造が日本の原発にも同じように反映されていると想像できます。そのために、福島第一原発の過酷事故が発生するまでは、IAEAの5層の深層防護の第4層は、日本の原子力規制法には策定されずに、電力会社の自主規制
に任せる規定になったように思われます。そして、日本の場合には、電力会社が、規制当局よりも水準の高い影の規制当局の役割を行わなかったことが、福島第一原発の過酷事故の発生時に被害を大きくした根本的な原因になったように思われます。
また、新しく原子力規制委員会が設立され、新規制基準が策定されても、IAEAの深層防護の第4層は、日本における影の規制当局の日本の電気事業連合会の言うままになったものと思われます。
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(田中一郎コメント)
上記の「4.」には「『NRCは1970年代半ばからすでに、そのような数値として一人1レム(10ミリシーベルト)あたり1000ドル(約10万円)という値を定め、この値を使って、影響を受ける集団の総被爆線量から費用を算出していた。がんのリスクに関する現代の知見に基づいて、人間の命の価値は1人分の命の価値を100万ドル(約1億円)から200万ドル(約2億円)とした。』」という記載が紹介されています。みなさま、これをどう受け止められますか。これは、国際原子力マフィアの1つである国際放射線防護委員会(ICRP)や、それをお手本としている日本の「原子力ムラ」「放射線ムラ」の考え方でもあります。いわゆる「ALARA]原則というものです(「あらら変ね」の「ALARA原則」については以下の「広島2人デモ」のサイトをご覧ください)。
「原子力ムラ」「放射線ムラ」の御用学者や政治家・官僚たちが、一般の有権者・国民・市民を「実験ネズミ」以下にか見ていないことの1つの証拠です。ここで「以下」の意味は、昨今の生物生体実験用のマウスは、おそらく上記の金額よりも高額であるからです。
かような人間たちが原発・原子力・核をあやつり、放射線被曝の危険性をゴマカシ、歪曲・矮小化し、もちろん福島第1原発事故後の福島県をはじめ、被災地域の人たちを翻弄しているのです。私は絶対に許せないと考えております。
〔参考)低線量内部被曝の危険を⼈々から覆い隠すICRP学説の起源(第128回広島2人デモ 2015.5.1)
http://www.inaco.co.jp/hiroshima_2_demo/pdf/20150501.pdf
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5840:160103〕
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