3月4日、学習会「千葉の空にもオスプレイ!―なにが問題?どこが危険?―」に参加~軍拡競争の真っ只中で、どうすれば
- 2017年 3月 9日
- 評論・紹介・意見
- 内野光子
日本、米・中・韓国・北朝鮮の軍拡競争の再来
2月27日の衆議院本会議で2017年度の予算案が通過、参議院でどうなろうとも衆議院優先で成立したことになる。97兆4547億円の過去最大規模で、防衛費5兆1251億円、前年度より1.4%増で、5年連続の増額である。収入内訳で、新たな借金となる国債は34兆円を超す。
『朝日デジタル』2月27日より
2月27日、 韓国政府は、北朝鮮の核やミサイルの脅威に対抗するため、アメリカの最新の迎撃ミサイルシステム「THAAD」を年内に配備する計画で、配備場所として、ロッテグループが所有するゴルフ場の土地を正式に取得したと発表している。
2月28日、トランプ大統領は、2018年度の予算について、公共の安全と安全保障を重視するとして国防費を増やす方針を示した。国防費10%、日本円で約6兆円の増額が見込まれるという。
3月4日には、中国で、全国人民代表大会が5日から始まる前の傅瑩報道官の記者会見で、2017年の国防費の「増加率は7%前後」と明らかにした。1兆人民元を超え、日本円で17兆円に迫ると見通しとなるという報道があった。
3月6日、北朝鮮は、弾道ミサイル4発を同時に発射、秋田沖300~350キロの排他的経済水域内外に落下した。日本は、「北朝鮮の脅威は新たな段階に入った」と安倍首相は、米韓日が緊密に連携して対応するとしている。
中国の尖閣列島周辺の動向や北朝鮮の弾道ミサイルの発射は大きく報道され、その脅威を増幅させているのが常である。たとえば、北朝鮮は、日米の軍事同盟の<強化>パフォーマンスがなされたとき、米韓合同訓練や日米合同訓練に合わて、ミサイル発射がされることが多い。相互が挑発に乗りあって、軍拡がエスカレートして、日本でも、根拠のはっきりいしない防衛予算、駐留米軍への多額の経費が計上される。折しも、3月6日から17日まで、陸上自衛隊とアメリカ海兵隊の合同訓練が、群馬県相模原演習場、新潟県関山演習場で展開されている現実。自衛隊員の命をないがしろにする駆けつけ警護、各所での福祉予算の切り捨て、東日本大震災被災地で仮設住宅や店舗の閉鎖、戻るに戻れない原発事故被災地、杜撰な補助金、役人の天下り利権、廃炉費用まで国民に押し付けておいて、守るものは何なのか。国民の命と財産を守るどころか、むしろ脅威にさらしているようなものではないか。
軍拡競争に歯止めをかけるのは、憲法9条を持つ日本でしかない。その9条の改悪を進める政府を延命させるわけにはいかない、国民は何を突破口として実現していくのか、が問われているのではないか。
『防衛白書』2016年版より。『日本経済新聞』(2016/12/23 1:30 電子版)では、「防衛費「聖域」扱い 中国・北朝鮮の脅威反映 過去最大の5.1兆円、5年連続増」という記事中、「中国や北朝鮮の脅威を名目に防衛費は<聖域>扱いとなっている」との文言も
当ブログでも、先日もお知らせした表記の学習会(さくら・志津憲法9条をまもりたい会主催)で、吉沢弘志さんの話を聞くことになった。近年、自分の勉強不足を痛感して、沖縄へ出かけたり、『琉球新報』を購読したりして、何とか沖縄のことを知りたいと思っていた。
危険だというオスプレイMV22 が、昨年末、沖縄の名護市海岸に墜落大破した。そのオスプレイの整備拠点となったのは、米軍の木更津基地で、すでに1月に飛来している。日本の米軍基地では、各所へのオスプレイ配備計画が進み、何十機ものオスプレイが整備のために木更津にやって来るのではないか。その危険性は現実のものとなるのではないか、というのが私たちの不安だった。
吉沢弘志さんの話
吉沢さんは、埼玉大学でドイツ語を教えている先生だが、幅広い知見と活動で、市民運動に参加されている。以下は、吉沢さんの話のレポートとしたい。
千葉県木更津には、米軍基地に陸上自衛隊駐屯地が併設されているが、米軍のオスプレイMV22、CV22 の整備拠点になることが決まり、すでに1月30日に飛来している。オスプレイは「空飛ぶスクラップ」とも呼ばれ、昨年12月13日名護市海岸に墜落し、19日には飛行再開、年明けの1月13日には空中給油を再開した、あのオスプレイ。日本は、墜落現場に近づけることもできず、原因究明も米軍まかせの安全宣言、すべて日米地位協定に拠るものである。オスプレイの開発は、1982年に始まり、1999年に量産体制に入ったが、開発中の死者も続出、死者を出した重大事故の事故率が、2011年からみても減ることはなく確実に増え、2015年末には、3.58%だという。*
*参考
・MV‐22の事故率について(防衛省2012年 )
http://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/osprey/pdf/dep_5.pdf
・MV‐22の死傷者を伴う重大事故(防衛省資料、新聞記事から作成)
開発
試験 段階
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1991年6月 | 試作機初飛行で制御不能で転覆、軽傷2人 |
1992年7月 | エンジンから出火し墜落、死亡7人
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2000年4月
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急降下で墜落、死亡19人
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2000年12月
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着陸進入ときに王戎不能不能となり墜落、死亡4人 | |
実用
段階
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2010年4月
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アフガニスタンで墜落、死亡4人
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2012年4月
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モロッコで演習中墜落、死亡2人、重傷2人
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2012年6月
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米フロリダ州で墜落、負傷5人
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2015年5月
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米ハワイ州で着陸失敗事故、死亡2人
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2016人12月 | 沖縄県名護市海岸で墜落大破、負傷2人
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普天間基地には、24機が配備されている。1機は墜落、1機は爆破?2機減ったはずが、直ちに増強され24機。横田基地には空軍仕様のCV22が10機、岩国にCV22が12機、厚木、三沢基地はじめ各地の演習場での飛行訓練が計画されている。70機近いオスプレイが、日本の空、低空を飛ぶ。さらに、自衛隊が2018年度までの「中期防衛力整備計画」で17機購入を決めていて、それらを含めて整備拠点の木更津に離着陸する。
米軍や政府が日本の防衛上、オスプレイの必要性を強調するが、ことごとく、「オスプレイの“ウソ”」として論破する。(下表は、吉沢さんの資料から作成)
垂直離着陸ができる
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重装備の24人搭乗は不可能に近く、重量から垂直離着陸は5%に過ぎず、1500m以上の滑走路を必要としている (木更津は1800mの滑走路がある) |
航続距離が長い
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危険な空中給油を不可欠としている |
抑止力
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兵力としての乗員数は24名×機数が増強されても、抑止力の増強にならない |
災害救助
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300度の熱風を下方に噴出、離着陸の場所確保が困難、積載量が少なく、輸送ヘリCH-47Jの方が効率が機能的 |
急患搬送
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離着陸の場所確保困難、防寒の必要、酸素吸入の必要も必要で、ドクターヘリの方が機能的 |
政府は、熊本地震では、災害救助としては、米軍に役立たずのオスプレイ出動を要請し、たが、飛行距離も長い必要はなかったし、積載量は段ボール200個分程度、着地には、熱風除去の大量の散水を必要とし、水不足の災害地では顰蹙を買い、「政治利用」だとの批判を浴びていた。*
オスプレイの危険性だけでなく、冷戦体制が崩れた以後の日米同盟と米軍再編との流れに沿って、日本の防衛の建前が、離島防衛から離島奪還へと転換する中で、アメリカでの軍事利権保護のためだけに米軍のオスプレイ配備、日本へのオスプレイ売却が進められているのが現状である。しかも、住民の反対で、アメリカ国内での飛行訓練がままならない状況の中で、主たる訓練は日本で実施されているのが現実。さらに、現在、オスプレイの購入を決めているのは、世界中で日本だけで、その購入価格もアメリカ政府のいわば「言い値」であって、関連機材、訓練費用などを含めると1機200億以上という。さらに、おかしなことに、防衛省は、オスプレイのメーカーのボーイング社と契約するのではなく、ボーイング社から買い取ったアメリカ政府から買う仕組みとなっている。しかも、日本に先払いをさせておいて、契約内容を履行しないというのがアメリカの日本へのやり口だそうだ。
吉沢さんの話は、まだまだ、あるのだが、とりあえずのレポートである。
家にかえって少し調べてみた。オスプレイのアメリカ政府からの買い付けには、間に三井物産が入る。日本の2015年度予算案では、オスプレイ5機の購入費用として516億円(1機約103億円)、2016年度は12機で1321億円(1機約110億)が計上されていた。米軍の購入費用は1機当たり50億~60億円との報道もある。* そういえば、自衛隊にオスプレイが届いた話は聞こえてこない。
*参考
・自衛隊内でも異論…安倍政権「オスプレイ」相場の2倍で購入
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/157524
・熊本地震 オスプレイ物資搬送 「政治利用」の声も
毎日新聞2016年4月19日
http://mainichi.jp/articles/20160419/k00/00m/040/083000c
・「米軍オスプレイの我が国への配備の経緯」
防衛白書2016年版より
初出:「内野光子のブログ」2017.03.08より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2017/03/34-4371.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6557:170308〕
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