M65 フィールド・ジャケット
- 2018年 5月 1日
- 評論・紹介・意見
- 熊王信之
醍醐先生が、この国のリベラルへ言いにくいけれども、言わねばならないことを実に真摯に語られているのを拝見しまして、久し振りに、私も一つ物を言わせて貰おうかな、と思いました。
ただ、私は、全く個人的なことでネット界隈での物言いや難癖には飽きてしまいましたので、時には敵対的な言説を披露するかも知れませんので、お読みになられる方に依れば、お気を悪くされるかも知れません。 事前にお詫びを申しあげます。
さて、この国では、何故か、大勢順応の気配が古より濃厚であり、俗世間で通用する言説が跋扈し、更にそれが増幅してこの国独特の「常識」が形成されてしまうのですが、それが所謂村社会に顕著な共同絶交(村八分)の因習とも相まってこの国独特の閉鎖空間を形成してしまうのでしょうか。 リベラルも同様です。
最初に長年の間、不満に思っています我が身の衣服の趣味に関わる彼是について述べます。
この国では、幼児期より服装に関わる統制があり、通園・通学ともなれば制服着用を強いられるのが一般的です。 個人の趣味は制限されるのです。
長じて就職してから退職までの間の勤務中には私服であっても一定の決りがあるのは当然でした。 但し、休日等の私的時間には、我が身の趣味に依って私服を着るのは当り前であり、自身の趣味の良し悪しを批評されるのは個人の自由ではあるものの、他人に己の私服を批判される所以は無いものと思われる処ですが、僭越にもその一線を超える輩が多数居るのです。
他人の趣味の良し悪しを僭越にも公に批評されるのは、聊か非常識であり、己が社会的規範に違背している他は特に指摘を受ける所以はありません。
処が、私の場合には、主に憲法第九条命と信じる方々ですが、私人の着用する私服に遠慮会釈の無い批判を加えるのです。 此れには、最早、我慢の限界であり、徹底的に抵抗権の発動を致したいと思います。 場合に依れば、自衛権の発動も。
其処で、我が身の趣味ですが、それは、出生が敗戦間もない頃でしたので、生活必需品に事欠く時代の頃ですので、亡父が良く「進駐軍」のものを買い込んで来たことにも起因します。 今記憶にあるのは、米軍の毛布でした。
田舎の木造家屋では冬季になっても暖房器具は、炭火のものしか無く寒い夜には凍える思いでしたが、米軍の分厚い毛布は温かく手触りは良かったのでした。
亡父がその毛布を頭から被り、温いぞ、一緒に寝ようと呼びかけていたことを思い出します。
続いては、テレビの番組。 昭和30年代には、今でも懐かしい、「コンバット」(Combat)と言う伝説的な番組の放映が始まり、映画の中で米軍兵士達が着用していた戦闘服が印象に残りました。
長じては、御多分に漏れず、当時一世を風靡したアイビー・ファッションに影響を受けたのは当然でしたが、この服装の一角には、米軍の野戦服があったのは確かでした。
そして決定的な米軍野戦服に出会ったのでした。 M65フィールド・ジャケット(Field Jacket)です。
このM65。 当初は、オリーブドラブ(略してOD)と呼ばれる濃い緑色一色のものでしたが、後には、ウッドランド(Woodland 森林迷彩)や、デザート(Desert 砂漠迷彩)のものが兵士に支給されました。 それが、一般に放出されて、安価で頑丈、更にデザインが良いために普及したのでした。
デザインが合理的で機能的であり、如何にも軍用として一分の無駄も無いもので、今日に至るまで、一流デザイナーでさえもが模倣する程の完璧なジャケットです。 当然ながら映画にも登場する機会が多く、未だに映画版のM65が発売される程です。
代表的なものは、米映画「タクシードライバー」でデ・ニーロが着用したものですが、他にも米映画「セルピコ」でパチーノが着ていますし、スタローンも着ています。
但し、デ・ニーロのものは、オリジナルの部隊マークを設える等と特に凝った設定がユニークなので、今日では、彼が着用したものと同等の復刻品が発売されて居る程です。
The Definitive Buyer’s Guide To M-65 Field Jackets Dec 23, 2014 | History | by Nick Coe https://www.heddels.com/2014/12/definitive-buyers-guide-m-65-field-jackets/
意外に思えるかもしれませんが、この国でも高倉健が着用することが多かったのが知られています。 但し、色彩がオリジナルのODや迷彩では無く、紺色のものです。
今日では、ODでも迷彩でも、M65は、米軍の正式戦闘服ではありませんが、未だに米軍から放出されたサープラス(Surplus)として売られていますし、復刻品も売られています。
更に、有名デザイナーもこの型式から着想を得た自ブランド品を発売しています。 多くの作業着は言うに及ばず、です。
因みに、眉を顰める方がおられる処の迷彩ですが、これまた、今日では、ファッションの一部として一般にも認められています。 そして、多数の一流デザイナーが迷彩を取り入れたブランドものを発売されています。
Saint Laurent 星付アーミーカモフラージュジャケット
http://www.fwrd.com/product-saint-laurent-army-camouflage-jacket-with-stars-in-army/SLAU-WO90/
ただし、私が普段着にしているウッドランドのM65は、米軍放出の古着ですので、買値は一万円を切ります。
軍服、中でも戦闘用に使われた衣服は、後に一般に使用される場合が多々あります。 その名称から自ずと知れるのは、トレンチ・コートです。 これは、第一次大戦中に英軍兵士が塹壕(トレンチ)で使用したものが起源です。
Tシャツは、第二次大戦で米軍兵士に支給された下着です。 登山等の野外で使用するものの多くも、兵隊に支給されたものが起源であるのが多数存在します。 日用品の多くもそうです。
戦争反対は理解出来ますが、だからと言って、戦争に使われたものの一切を拒否して生きて行けるのでしょうか。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion7598:180501〕
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