多発する山岳遭難と犠牲者
- 2018年 5月 30日
- 評論・紹介・意見
- 熊王信之
今年のゴールデンウィークには、山岳遭難が多発し、残念なことに死者が多数出ました。
近年、この国では、山岳遭難事故が多発しています。 警察庁の統計に依りますと、2016年に遭難した人は、2929人で、2006年(1853人)から10年で約1.6倍に増えています。
警察庁 生活安全の確保に関する統計等に関わる「平成28年における山岳遭難の概況」について
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/sounan.html
同じく警察庁の概況から「表2 都道府県別山岳遭難発生状況」に依りますと、2016年には、最高峰が959mの大和葛城山である大阪府において死者が二名も出ていることに驚かされます。
参考までに、同じく最高峰が972mの皆子山の京都府でも、死者が三名。 更に、最高峰が408mの愛宕山である千葉県でも死者が一名出ています。
以上の事例では、遭難現場が最高峰とは限りませんが、山岳遭難事故では、山の高い、低い、はあまり関連性が無いようです。
これは、私自身の経験からも言えることです。 私の趣味は、トレッキングと呼ばれる自然に触れることを主とするものですが、この国の自然は、その殆どが山岳に所在するので、必然的に山に登ることになります。 しかしながら、最高峰を極めるのが趣味ではありません。 加えて、何日も山で過ごす時間がありませんので、日帰りを基本とし、必然的に近郊の里山歩きが中心になります。
ところが、その里山が今や危険なのです。 そもそも、里山自体が見捨てられています。 古のように薪炭を採取したり、建築材を調達したり、と利用することが無くなったために管理が不充分なのです。 更に、東海自然歩道のような歩行に利用する道であっても道標が不完全です。 加えて、台風や地震等で荒れても放置されているのが現状ですので、危険個所があり、また道に迷うのです。 場所に依れば、産業廃棄物の不法投棄があり極めて危険です。
其処で、自分では、絶対に道に迷わない訓練をして、服装、携行品は完全にすることを心掛け、万が一のために救急薬品と非常食の携帯を忘れず、負傷事故を防ぐ防備品を携行しています。
登山地図と軍用コンパス(M2 Compass)は必携品で、その使用法を常に山地等で練習していますが、人に依れば、その姿を見て、何を勘違いしているのか、軽蔑の眼差しを送る輩も居ます。 愚かにも道に迷っていると勘違いしているのでしょうか。 若しくは、オリエンテーリング(英語:Orienteering )を知らないのでしょうか。
その効果がどれ程のものかは、私の友人達が知っていることでしょう。 グループでの山行で進路に迷った時に、直ちに正しい進路を指示したのですから。
靴は、定評のある革製長靴で、服装は、ゴアテックスのもの、同素材の雨具も忘れず装備し、照明器具に万が一のためのサバイバルグッズ満杯のセットを入れたバックは、少し重いですが、安心感も一杯です。
更に、今では、年齢的にも骨折事故等を防止のために、脚の関節防護のサポーターを着用、また必要ならば着用可能な肘と膝の防具も持参し、手には、サポーターと防護手袋をします。
その昔、甥を連れて京都北山に昇った時のこと。 夏の日差しが強くて、経路を変更して沢に降り谷川の水を浴び涼しい思いに浸っていた時に、甥の唇が紫色になったのを眼にしたことがあります。
慌てて、甥に装備品から雨具上着を出して着るように指示し、自分のザックからも衣類を出して着せました。 そして非常食のチョコレートを食べさせて、安全な経路で陽が注ぐ尾瀬道に引き返したことがありました。
谷川で過ごした時間的に、静脈血の酸素欠乏による末梢性チアノーゼと思われたので、何事も無く自宅に帰れましたが、当時は、携帯も無い時代のことでしたので、救急のために連絡が必要になっていたとすれば、大変な事態になる処でした。
このように自然に親しむには、当面、必要が無いものであっても、装備として必ず持参すべきものは相当数にあります。
加えて、天候の急変等で、計画を変えて帰路につくべき時もあります。
絶対にしてはならないのは、経路に迷った折に、未知の進路に足を入れることです。 迷った時には、尾瀬まで登るか、その場で待つことです。
日本の山では、沢は、危険個所です。 沢登りのための装具が無いのに昇りよりも危険な降りることは無謀です。 滝に出会えば、進退窮まります。 そして、低山でも滝は、其処此処にあるのです。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion7689:180530〕
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