薄氷を踏む思い・・・/夏でも東電は電力供給可能
- 2011年 4月 11日
- 時代をみる
- 原発近藤邦明電力供給
昨晩、また東北地方で大きな地震(余震?)があった。一部回復しつつあった社会機能がまた直撃を受けた。東北地方の原子力関連施設が軒並み機能障害を起こした。
青森県六ヶ所村の使用済み燃料再処理工場では外部電源が切断され、非常用の自家発電装置が起動した。定期点検中の青森県の東通原発でも外部電源が喪失し、非常用の自家発電装置で使用済み核燃料プールの冷却を続けた。宮城県女川原発では4系統の外部電源の内3系統が失われ、残りの1系統で原子炉・使用済み燃料核燃料プールの冷却を続けた。報道によると、東通と女川の使用済み核燃料プールで一時的に冷却機能が喪失したと言う。
今回は幸い非常用電源が上手く作動して、事なきを得たようであるが、紙一重で福島第一原発同様の冷却材の喪失事故につながりかねない状況だった。まさに薄氷を踏む思いである。
福島第一原発では状況に大きな変化はないとしているが、幸運である。使用済み核燃料プールの燃料棒、原子炉に装荷中の燃料棒のいずれもジルカロイの被覆管の損傷はかなりすすんでいるようなので、ここに強い振動が加われば燃料ペレットが崩落してもおかしくない状況であろう。再臨界の悪夢がぬぐいきれない。
果たして核燃料を安定的に冷却し、再臨界を防ぐ処置を施すことが出来るのであろうか?直接状況を見ることの出来ない手探り状態の作業である。まだまだ事故処理はほとんど手付かずの状態である。気の抜けない日々が続く。
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(2011/04/07)
夏でも東電は電力供給可能
東電の電力供給実績~原子力発電所が全て止まっても夏は乗り切れる
一つ問題が解消しましたので最初にお知らせしておきます(笑)。No.566「節電に対する素朴な疑問」で、夜にどうして節電しているのか不思議だと書きました。これは私の認識が間違っていました。
最近の東電の電力供給実績の日変化のグラフを見つけました。これを見ると確かに17:00頃から電力供給量は上昇傾向を示しているのがわかります。納得です。しかし、この時間帯の電力需要を減らすことは本気になればかなり簡単なことのように思いますが・・・。まだとても本気とは思えないですね。
http://aruconsultant.cocolog-nifty.com/blog/
さて、この夏は原子力発電が止まっているので計画停電をしないと大停電が起きるのではないかと早くも恐怖宣伝が横行しています。この点を少し検討しておきましょう。
2011年1月現在の東京電力の自社所有の「発電所認可出力」の数値は次の通りです。
水力 | 火力 | 原子力 | 風力 | 太陽光 | 地熱 | 合計 |
8,981 | 38,696 | 17,308 | 1 | 0 | 3 | 64,988 |
(単位:MW)
出典:資源エネルギー庁電力調査統計1-(1)発電所認可出力表
つまり、現在は火力発電所もかなりのダメージを受けて供給は厳しいのかもしれませんが、火力発電所が復旧すれば、現状程度の電力供給には何の支障もないということです。
それでも、夏になると原子力発電所無しでは需要を賄えないのではないか、という心配をする方もいるかもしれません。上の表に示したのはあくまでも東京電力自身の保有する発電設備ですが、東京電力はその他に売電業者から電力を購入して自社発電分と併せて電力需要を賄っているのです。
2011年1月の実績(資源エネルギー庁電力調査統計2-(5)発受電実績)では、自社発電分と購入電力の比率は、
24,098,140 MWh : 5,070,040 MWh = 4.753 : 1.0
購入電力から、売電業者の発電設備の最小値を求めると、次の通りです。
5,070,040 MWh/(31×24)h=6,815MW
売電業者の設備利用率を70%程度と仮定すれば、概ね10,000MW程度の発電設備を持っていることになります。全ての原子力発電所が停止した場合の東京電力管内(他社の設備を含む)の発電設備の合計出力は次の通りです。
8,981+38,696+3+1+10,000=57,681MW
おそらく、この夏に東京電力の全ての原子力発電所を停止しても、それほど無理をしなくても十分電力供給は可能だと考えられます。
『環境問題』を考える http://env01.cool.ne.jp/index02.htm より転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1326:110411〕
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