ぶどうの郷の「藤切り祭」とワインの旅(1)
- 2019年 5月 13日
- カルチャー
- 内野光子
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大善寺藤切り祭、5月8日
今回は、連れ合いたっての旅、すべておまかせの旅程だった。近場だけれど、二泊してゆっくりしようということで、評判の良い民宿も予約。5月8日の夕方がクライマックスという大善寺の「藤切り祭」が初日のお目当てである。勝沼ぶどうの郷駅に午後1時過ぎ下車、タクシーで、等々力にある民宿「みゆき荘」へ。看板犬のゴマに迎えられ、一休みをし、祭りにはまだ時間があるので、近くの「ハーブ庭園」へと向かう。入場無料の「旅日記」と名付けられた庭園で、1万坪とのこと、ちょうど、さまざまなバラが咲き、広い一画、いちめんの黄色い花はカルファニアポピーということだった。庭園のオーナーは、1960年、宝石の研磨をする志村製作所を起こした人物で、いまでは手広くレストランや地元の宝石、工芸品、化粧品などを扱う店を多数持っているとのこと。レストランで、遅いランチをいただく。
「ハーブ庭園旅日記」にて、2019年5月8日。
頼んでおいたタクシーが来ずに、別のお客さんを待つ運転手さんが、しきりに名前を呼んでいる。当方も催促の電話をするとどうやら、一足先に別のお客さんを間違えて乗せてしまったらしい。会社は違うが、待機の車に乗って、大善寺に向かう。ご縁と思って、帰りの車もその運転手さんにお願いすることに。ともかく急な階段をのぼりに上って、薬師堂までたどり着く。参道の石段の踊り場や境内は露店がいっぱい、子どもたちで大賑わいである。4時から始まるという稚児行列を待つが、少年指導員の腕章をつけた人たち、消防団の法被を着た人たち、警官たちの姿も目立つ。いったい何が始まるのだろう。
山伏のような出で立ちの修験者たちがほら貝を吹きながら先導し、やがて稚児さんたちがお母さん付き添いでやって来た。稚児さん募集20名のポスターも見かけたが、抱っこされている子から小学校高学年の女子を含めて7・8人ほどだった。最後は、赤い大きな傘を捧げられ、ご住職だろうか、ぶどうを持つ仏様として有名な薬師如来像のお堂に吸い込まれてゆく。
大善寺、拝観受付にはこんな張り紙とポスターがありました。
稚児行列、笑顔で出発。
冠がイヤだととってしまう子も
そして、修験者たちは、稚児堂という舞台で、ぶどう畑を荒らす大蛇を退治しようと、さまざまな方法で~矢を射る、刀や斧などで退治する様子を演舞し、稚児さん二人も太陽と月になぞらえ、演舞する。彼らのセリフで物語が進んでいるようなのだが、やがて、修験者たちは、境内の坂の上の神木にもとに集まり、すでにつるされている、藤の根っこを七回半巻きして、大蛇に見立ててたものを目がけて登り、先ほど演じた退治のさまざまな方法を、ここでも繰り返す、そして、最後に刀での一振りで、どさっと切り落とされた。つかさず、それまで神木を取り囲んで見上げていた若者たちが、叫び声とともに、その切り落とされた大蛇にどっと覆いかぶさるように重なり合って、土埃が高く上がる。
いま、矢を放たんとするところ、右端に立っている方が総代さん?
明治期の廃仏毀釈で、神仏混合になって、境内にある「神木」にしつらえられた藤の根っこの大蛇、長い赤い舌が生々しいが。
後で聞いた話だが、昔は、自ら刃物をもって、グルグル巻の根っこを切って奪い合うという危険なこともあったそうだ。そういえば、坂の途中で、滑り止めなのか、救急隊員が横並びで、梯子を倒して待機しているではないか。まだまだ、この物語は続きそうだが、車の約束もあって、6時前には、熱気が増す大善寺を後にした。記念にとお守りを購入したところ、今日は大サービスで、と藤の根っこを切り分けた20センチほどの「神木」と「ぶどうと大蛇の物語」(シャトー勝沼の発行)という冊子も頂戴した。その冊子によれば、農民たちに追われて山奥に逃げた後、住処だった木の根っこの穴倉には、ぶどうが発酵して、よい香りを放つ液体となっていたのを知って、葡萄酒づくりが始まったという。
宿での夕食は、ビールで乾杯、心づくしのお料理をいただき、明日の予定にはぜひ、と奥様からは、宮光園への川沿いの道などを勧められ、夫は、赤ワインを追加、ほどよいアルコールが眠りを誘う。この日の万歩計8643歩。
◆5月8日NHK甲府放送局「ニュースかいドキ」:映像は放送日より1週間で切れてしまうらしい。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kofu/20190508/1040006352.html
「歴まちカード」に甲州市も参加しているとのこと。上は、お守りを入れてくれた袋です。
初出:「内野光子のブログ」2019.05.12より許可を得て転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔culture0796:190513]
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