8月20日の朝刊一面は「昭和天皇の“反省”“肉声”報道」が氾濫した~「NHKスペシャル・昭和天皇は何を語ったのか」の拡散、これでいいのか
- 2019年 8月 21日
- 評論・紹介・意見
- 内野光子
一昨日8月18日の当ブログ記事では、NHKへのもろもろの不満の中で、8月17日放送のNHKスペシャル「昭和天皇は何を語ったのか~初公開・秘録『拝謁記』」について書いた。この数日、NHKニュースは、「NHKスペシャル」などの特別番組と共に「昭和天皇賛美」キャンペーンが半端でない。改元初の八月を期して「ここまでやるか」の印象で、先々の報道の偏向、国策報道への暴走がすでに始まったのではないか、の思いがする。
今朝8月20日の朝刊は、NHKが「独自に入手した」田島道治の「昭和天皇拝謁記」の一部がメディアに公開されたのを受けて、一斉に、ご覧のような見出しが並ぶ。わが家購読の三紙と日経、読売はどうだったのだろう。今朝のテレビといえば、「あおり運転」の容疑者宮崎某の学歴や職歴をはじめ小中学校からの友人知人、これまでの事件の実写や関係者の証言が盛られた。
上段右は、毎日新聞の昨日19日の夕刊。 下段左が朝日、右が東京
昭和天皇の「おことば」に「反省」の文字を入れることを吉田茂首相に拒まれたという個所に焦点があてられる。一方、「象徴」の在り方を模索したといいながら、かなり早い時期から「憲法改正をして、再軍備をしなければ」などの政治的な発言を政府に伝えようとしたことを田島に止められていたことにも触れる。「内奏」という形での情報収集や政府への介入を試みていたことは、ほかの資料でも明らかである。
これらの発言、田島との密室でのやり取りが、検証もなく、即「肉声」として取り上げられること自体、そしてそれがたとえ事実だとしても、発言の時代的推移における矛盾については、検証されないままである。そして、「先の戦争への反省」「平和への思い」が「平成」を経て現在の天皇に受け継がれているという「定説」は、むしろ覆されたのではないか。そして、天皇の「先の戦争への反省」「平和への思い」を過大評価することによって天皇賛美への道を確固とすることは、結局、誰を利するのか、国民は冷静に考える時期に直面している。私たちは、政府の、メディアの情報への、そして同調圧力へのリテラシーこそが問われているのではないか。
初出:「内野光子のブログ」2019.8.20より許可を得て転載
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