夏場の節電、15%なら企業も対応できる
- 2011年 5月 15日
- 時代をみる
- 浅川修史
東京電力、東北電力管内で電力需給が逼迫する夏場の節電要請は15%になりそうな情勢だ。停止していた火力発電所の運転再開などや企業、個人の節電意識の高まりにより、当初想定された25%節電という厳しい節電要請は避けられそうだ。
企業の生産活動への制約が懸念されているが、「15%なら乗り切れる」という声が多い。3月に東京電力が行った計画停電という名称の国民生活に対するテロ行為とも思える場当たり停電に比べると、総量で節電することは、日本人が得意とする分野である。
企業はどのような対策を行うのか。不要不急の電力を減らすことは継続するが、まず、工場へのガスや重油で動く自家発電機の導入である。夏場のピーク電力が上がる時期に稼働させて、減産を防ぐ効果がある。次に勤務時間のシフトである。サマータイムを導入して、操業開始の時間を早める。電力需給にゆとりのある夜間や休日に生産、研究開発活動をシフトする。
このほか、夏場に東京電力管内での生産を電力にまだゆとりのある60サイクル圏にシフトすることも構想されている。
大阪にある電炉メーカー(高炉ではなく電気炉で鉄くずを溶かして、鋼材を作る)は、以前から電力料金が安い夜間で生産をするという涙ぐましい努力をしていたが、こうした傾向が他の産業にも強まりそうだ。
休日出勤や夜勤を強いられる従業員の肉体的、精神的負担増が等閑視できないことは、もちろんだが、総量での節電には対応できそうな状況である。
おそらく日本中の原発が近未来に全面停止しても、日本経済に大きな打撃を与えず、乗り切れると思う。
これまで日本の経済産業省と電力会社は電力需要をきめ細かく制御するのではなく、ピーク需要に合わせて、電源開発を進めて、電力系統を強化するという政策を採用してきた。その政策の背後には原発利権など電力系統の利権構造がある。この結果、日本の消費者は世界1高い電力料金を負わされた。
これに対して日本に比べて電力系統が弱体な米国では、スマートグリッドという電力需給をきめ細かく制御する方式を構想している。日本も必要な電力に余裕をもって供給するという電力系統の考えを捨てて、供給と需要の双方を制御する方向に変わるべきではないか。
原発の心臓部である原子炉はしょせん発電機を動かす蒸気をつくる装置にすぎない。火力で十分に代替できる。災害が起きたときの危険性が甚大なうえ、操業・点検に被ばく労働が不可欠、核燃料リサイクルはコストがかかり、危険性も大きい、寿命がきた原発を廃炉する際にも被ばく労働が不可欠でコストもかかり、廃材の捨て場にも困るという代物だ。こうした危険でコストも高い原発維持を唱える勢力の動機は、もはや利権維持というしかない。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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