内部被曝の隠蔽⇒知られざる核戦争⇒核抑止力体制⇒すなわち⇒核の植民地支配から訣別しよう!

 

 —人類の生存と人道・人権のために格闘する科学者の提言―

新刊:矢ヶ崎克馬『放射線防護の科学と人権』(緑風出版、2024年 12月、定価 2500円)

 

「沖縄に米軍基地が押し付けられた歴史と、内部被曝が隠され福島に原発が押し付けら

れた歴史は同根」と語った1943年生まれの著者矢ヶ崎克馬は、物性物理学を専門とする琉球大学名誉教授である。2003年より原爆症認定集団訴訟や2015年からの「黒い雨訴訟」で内部被曝について証言し19連勝と2連勝に貢献した。被曝被害の実態を暴き続け、どうすれば放射線被曝から市民のいのちと暮らしを守れるかを考え続け、「事実をありのままに認識することは民主主義の土台である」をモットーとしてきた科学者である。  

3・11 直後から、妻・沖本八重美とともに福島に足しげく通い(なんと2年間で245回!)放射線測定器を届け、各地で大気・農地・水などの放射線測定を実施し、また地域および全国での学習会も開いてきた。妻・沖本八重美は、ともに結成した「つなごう命―沖縄と被災地を結ぶ会」の活動も軌道に乗った2年後の2013年1月、被曝によって帰らぬ人となってしまった。同時に矢ヶ﨑も病魔に襲われながらも「つなごう命―沖縄と被災地を結ぶ会」を継承した。発行する避難者通信は現在、 第153号。

ヒロシマ・ナガサキ・フクシマの被曝の実相を追い続け解明する著者の人生の始まりには、支えあい導きあってきた広島最年少の胎内被爆者であった妻・故沖本八重美との出会いと道行があった。妻はこう言い遺して逝ったという。「克馬クン、地球の未来が掛かっているよ、内部被曝の告発をいつまでも!…」これを受けた矢ヶ崎は、「科学的で人権に立脚した防護体系を定式化することが、人類を“核地獄”から救う光となる」と決意した。以下は、この新刊のメッセージである矢ヶ崎の年来の決意を一部紹介したものである。

 

前著〔矢ヶ崎克馬『放射線被曝の隠蔽と科学』(緑風出版、2021 年 5 月、定価 3200 円)〕

で著者は、原爆投下直後の被曝の隠蔽・被爆者放置からフクシマ避難民切り捨て「食べ

て応援」・「風評被害」の棄民政策の元凶である「内部被曝」の隠蔽を暴き、国際原子力

ロビーのエセ科学を徹底批判した。

 国際原子力ロビーとは、国連保護下の核不拡散と原発推進を担う国際原子力機関

(IAEA)であり、放射線防護を管轄する国際放射線防護委員会(ICRP)であり、被曝

を評価・報告する国連科学委員会(UNSCEAR)である。ともに核兵器・原発の核産業

を支えるため内部被曝の隠蔽によって国際世論操作を担うグループである。

 

唯一の被爆国である日本では、被爆直後の米調査団から「残留放射能がないという調

査結果」を指示されており、1947年に米国が設置した原爆障害調査委員会(ABCC)は軍事目的のみで障害の実態を調査するもので、当初から「治療」等の人権的観点など全くなく、内部被曝を表面化させることは一切なかった。このABCCは1975年に放射線影響研究所(放影研)に引き継がれICRPの内部被曝無視を日本に根付かせる組織となった。その姿勢は、原爆医療法、被曝者援護法など日本の放射線防護政策に反映され、東電事故後の食べて応援、汚染水海洋放出にまで一貫して内部被曝の隠蔽・無視による被曝強制を国の方針としている。

 

この新刊では、厚労省の人口動態調査からとくに2011年から9年間の性別年齢別死

亡率の経年変化によって明らかとなった死亡率の異常増減に着目する。9年間で、若年層と老年層にみられる63万人の死亡者異常増加と青壮年層にみられる57万人の死亡者異常減少を明らかにした。見かけ上でも7万人の死亡者の異常増加があるが、実際は被害が一桁大きいことを明るみに出した。実に巨大な被害結果である。

日本政府は東電事故直後から、公衆被曝限度を法定の年間1mSvから20mSvへと20

倍に引き上げた。これはICRP2007年勧告の「緊急時」には100 mSvまで可能とした“人を防護しない国家統治基準”を採用したことに基づいている(これをICRPは“防護アプローチ”から“状況に基づくアプローチ”への移行と表現する)。

これによって「高汚染地帯に120万人もの人々を住み続けさせる」ことまでやって

のけ、自主避難者差別を制度化した。敗戦直後からアメリカの属国となった日本は、法治主義と主権を放棄し自国民を「棄民」し続けてきて恥じない。特に放射線被曝分野では甚だしいのだ。

 

科学事実として既に確定している「因果関係」論をICRPは完全に無視している。「因果関係」論に基づいて、放射線被曝リスクの2要因を吸収線量(外部被曝と内部被曝)と内部応答としての電離修復困難度に着目した矢ヶ崎は、ICRPの科学逸脱による被害過小評価を暴く。「科学破壊」の柱が、「実効線量」であることを暴く。
 電離=分子切断の機序とその隠蔽構造を掘り下げて、電離密集度と年齢・性別・疾病免疫等身体状況による損傷修復力の多寡の両者に依存する損傷修復困難度をリスク係数に組み込むことの科学的必要性を説く。また、ICRPが完全無視している電離対象の70%を占める水分子切断による活性酸素症候群を取り入れてのリスク評価の体系こそが必要と提言する。
 多様な諸個人の基本的人権を科学的被曝評価体系に組み込むことこそ人類史の課題だとして、科学を破壊し、内部被曝を隠蔽し、深刻な被曝被害を見えなくするICRPに取って代わる、新たな「放射線リスク日本委員会(仮称)」の立ち上げを呼びかける。

 

戦後80年、明治以降の植民地侵略戦争惨禍の戦争責任と戦後責任を清算せず、ほぼ150年ともなるアイヌ民族・琉球民族・在日コリアンへの国家謝罪も国家補償も是正(リドレス)もせずに、また原爆被爆者・戦争被災者への真の補償もせずに80年を閲する日本国が、核不拡散防止条約を盾に核抑止力体制をつくる米国核戦略と国際原子力ロビーへの隷従から脱却できるかどうか、人類の生命と人道・人権が、日本人の主権と良心が試されている。

しかも、地震国日本には依然として45機(廃棄中・計画中を含)もの原発がある現実…。内部被曝の隠蔽⇒知られざる核戦争⇒核抑止力体制⇒すなわち⇒核の植民地支配から訣別しよう!列島社会と人類が、正義と公正に導かれますように…。

 

                            2025年1月16日

                          パレスチナ連帯・札幌

                                松元保昭

 

なお、新刊『放射線防護の科学と人権』を矢ヶ﨑克馬さんから、直接購入される場合は、著者割引の価格で、送料込みで2500円でお分けすることができます。

yagasaki888@gmail.com迄ご連絡ください。また松元からでもかまいません。

[松元保昭:携09095613750、メールアドレス:y.matsu0029@gmail.com)]