天皇奉迎提灯、日の丸小旗を配るのは誰なの?

 天皇夫妻の歓迎行事の主催者は誰か

 6月19日、天皇夫妻は、広島を訪問、原爆死没者慰霊碑に供花、被曝遺構展示館、平和祈念資料館の見学の後、被爆者、伝承者らと面談した。その後、ホテル(リーガロイヤルホテル広島)の窓から提灯奉迎に応えた。その様子を、「産経新聞」は、つぎのように伝えている。

 ホテル近くの「ひろしまゲートパーク」(旧広島市民球場跡地)では、約5千人(主催者発表)がLEDの光で灯(とも)るちょうちんや日の丸の小旗を手にし、「天皇陛下万歳」を三唱した。 主催者によると、天皇陛下は宮内庁を通じ、「広島の街に浮かびあがる皆さんの提灯のあかりはとてもきれいでした。皆さんの万歳の声もよく聞こえ、うれしく思いました」とお言葉を贈られた(産経新聞 6月19日22時15分配信)

「主催者」ってだれ?記事にはない。調べてみると、以下のようになっていた。後援が広島県、広島市と各教育委員会となっている。 

主催:天皇陛下奉迎広島県委員会
名誉会長:湯崎英彦(広島県知事) 会長:池田晃治(広島県商工会議所連合会会頭)
後援:広島県・広島市・広島県教育委員会・広島市教育委員会

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「沿線で歓迎『感動。うるうるでした』天皇皇后が広島市に到着」「広島テレビNEWS」 2025年 6月19日13時49分 

「天皇、皇后両陛下の広島ご訪問を歓迎する提灯奉迎に集まった人々」=19日午後8時8分、広島市中区の「ひろしまゲートパーク」(恵守乾撮影)「産経新聞」2025年6月19日22時15分配信。他のテレビ報道によれば、女性の声で「みぎィ、ひだりィ」の号令で提灯は揺れていた。

ホテルの窓から「奉迎提灯」に応える天皇夫妻「広島テレビNEWS」2025年6月19

 そしていつも気になる、この提灯や日の丸の小旗は、いったい誰が配るのだろう、とネットで今回の歓迎行事を調べていくと、「日本会議(広島)」のホームページに以下のようなポスターが掲載されていた。これによると、先着1000名に「奉迎提灯」を用意するとあった。また、小学生、200名には記念品を贈るとも。提灯は「日本会議」が配布していることがわかった。提灯はLDLの灯りというから回収するのだろう。日の丸小旗の方はというと、同じ「日本会議(広島)」のホームページには、下のチラシに続いて「天皇陛下奉迎広島県委員会」の事業内容として、以下のように掲げているので、日の丸小旗も配布していると思われる。なお、この委員会の事務局の連絡先住所・電話番号は、「日本会議広島」と同じであった。

一、  提灯奉迎:ご宿泊の際に、お泊りのお部屋からご覧いただける広場にて、提灯でお迎えの心をお伝えします。
二、  行幸地及び沿道での奉迎活動:お通りになられる沿道やご訪問される場所で、 国旗小旗でお迎えの心をお伝えします。
三、  皇室を敬う心を大切にする諸活動:日本の美しい国柄(皇室と国民の絆)を次代に伝えるために、記念冊子の頒布活動
どを行います。

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 歓迎のための大掛かりな警備 

天皇皇后の地方訪問は、国民に寄り添い、国民とふれあうためにということで、とくに平成期に拡大の一途をたどった。ところが訪問先の受け入れ体制、とくに警備は強化されてきた。今回の歓迎行事を後援する広島県の秘書課から「天皇皇后両陛下の行幸啓について」と題し、「天皇皇后両陛下におかれましては、地方事情御視察のため、来る令和7年6月19日(木曜日)から6月20日(金曜日)まで、広島県へ行幸啓になる予定ですのでお知らせいたします。」して、以下の「お願い」を、5月19日に発表している。さらに、広島県警は、6月12日に天皇皇后の広島訪問にむけて大掛かりな訓練も行っている。加えて訪問当日は、広島市周辺の大規模な交通規制を行い、車列の走る沿道の規制、訪問先の施設の入場制限も実施した。

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歓迎行事に小学生を動員?

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 「奉迎事業」の一環として、広島市の秘書課から上記のような文書が、市内の小学校に発せられた。近隣の小学校6年生を「お出迎え」要員として、動員をかけたのである。6年生の社会科の単元に「天皇の地位」について学ぶのに、天皇皇后の視察の様子を間近で見ることで理解を深める、との主旨も記してあった。「間近に見る」といっても、車が通り過ぎる瞬時のことであろう。とってつけたような理由ではないか。しかも、参加児童の名簿の提出まで指示されたというのである。朝日新聞は、つぎのように報じた。

 県労働組合総連合や県原爆被害者団体協議会(佐久間邦彦理事長)など13団体が5日、児童の氏名や学級、よみがななどの個人情報を「事前に宮内庁に提出することとし、その同意が求められている」と指摘し、対応の再検討を求める要請文を広島市と市教育委員会に提出した。(「小学生の個人情報必要?不要と判明 天皇皇后両陛下の出迎え行事」『朝日新聞」2025年6月7日)

 朝日の記事は、地方版だったのだろうか、 気づかなかったのだが、「東京新聞」では以下のように報じていた。

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 天皇皇后夫妻が、地方の訪問先で戦没者や被災者の慰霊、遺族との面談、施設の見学などによって、何かが多く変わることはあり得ない。天皇皇后夫妻自身は一種の達成感は味わえるかもしれないが、それに伴う受け入れ体制整備のための、多額の予算と人員、自治体や市民生活への影響、負担を考えたことがあるのだろうか。天皇は、政治にかかわれないことは憲法上当然だが、上記の歓迎行事に見るように、保守政権の支持母体の一つでもある「日本会議」が大きくかかわっている事実、それに、今回の歓迎行事には表立っては見えなかったが、地方訪問先の都道府県の神社庁が大きくかかわっている実態もある。憲法上の天皇の権能を逸脱し、特定の宗教への加担を意味しないだろうか。いや一部の政治勢力は、天皇、皇族たちのパフォーマンスをどこかで利用してはいないか。マス・メディアは、気づかないのか、気づかないふりをして、無批判に天皇、皇室情報を流し続けているように見える。

 最後に、大阪万博訪問の折の歓迎行事案内のチラシをご覧ください。

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 主催として記載されているの以下の通りであった。

 天皇陛下奉迎大阪実行委員会(事務局 日本会議大阪内)
 〒541-0056 大阪市中央区久太郎町4丁目渡辺6号 大阪府神社庁内
 TEL ————  FAX———–    nippongaig——–com

初出:「内野光子のブログ」2025.6.21より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2025/06/post-aaa812.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/
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