本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(493)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう( ほんまゆたか) : ポスト資本主義研究会会員
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2024.11.11

トランプ元大統領の再選

2024年の米国大統領選挙は、「トランプ元大統領の再選」という結果に終わったが、「これから、どのような変化が訪れるのか?」を考えると、たいへん厳しい情勢も想定されるようである。つまり、「MAGA(アメリカを再び偉大な国へ)」や「アメリカ第一主義」などのスローガンについては、「米国の実体経済を強くしようとする思惑」が、根柢に存在するものと思われるが、結果としては、「景気の悪化が税収減をもたらし、国家の財政悪化に拍車をかける恐れ」も想定されるのである。

別の言葉では、「1990年代にふたごの赤字に悩まされていた米国が、なぜ、2000年前後から急激な復活を見せたのか?」については、以前から指摘するとおりに、「600兆ドルを超える巨額なデリバティブのバブル」が指摘できるものと考えられるからである。そして、この原因となったのが「1980年代から始まった中国の資本主義化」や「1991年のソ連崩壊とその後の資本主義的な経済運営」であり、結果としては、かつての「東西冷戦」が終了し、「グローバル共同体の完成」につながったものと思われるのである。

より具体的に申し上げると、「共同体の規模拡大に伴い、マネーの残高が増える」という「私自身の仮説」からは、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」が「グローバル共同体及びマネー残高が史上最高を付けた時期」だったものと考えられるのである。つまり、グローバル共同体が造り出した「巨大な信用」が、「デリバティブという金融商品」と「デジタル通貨という史上初めてのマネー」に変化し、「世界全体に、巨大な流動性を供給した状況」のことである。

しかし、その後の展開としては、「東西冷戦の再燃」や「中央銀行のリフレーション政策」などにより、「ほとんどの資金が、国家の財政赤字に吸収された状態」となったことも見て取れるのである。しかも、現在では、「10月22日に発表されたIMFの警告」のとおりに、「信用リスクの外部移転手段として金融機関が用いるシグニフィカント・リスク・トランスファー(SRT)取引により、対象資産の質を巡る不安が高まり、不透明な取引で金融安定のリスクが増大しかねない状況」が始まったことも理解できるのである。

つまり、これから予想される展開は、「世界的な流動性の枯渇」であり、実際には、「無い袖は振れぬ」や「金の切れ目が縁の切れ目」などの諺のとおりに、「資金的な裏付けが存在しないトランプ大統領の政策」に対して、「景気の悪化」と「国民の不満が高まる状況」が襲う可能性である。

2024.11.14

2024年を振り返って

2024年も、間もなく、終わりの時期を迎えようとしているが、「今年の金融市場」を振り返ると、「金融のメルトダウンが着実に進展した年」であり、実際には、「金融の逆ピラミッドにおいて、株式や貴金属へと世界の資金が流れた状況」だったようにも感じている。つまり、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」の前後で完成し、「デリバティブのバブル」と「大量のデジタル通貨」で特徴付けられる「金融の逆ピラミッド」については、その後、「大地震後に発生した海上の津波」のように、徐々に、「何でもバブル」を発生させてきた状況だったことも理解できるのである。

具体的には、「量的緩和(QE)」の実施により、最初に、「世界の債券」がバブル状態となったものの、その後、「2020年の3月前後から、債券価格の下落(金利は上昇)が始まった展開」だったことも見て取れるのである。そして、その後のバブルとしては、「世界的な不動産バブルの発生と崩壊」が見て取れるが、結果としては、「米国の商業用不動産」に代表されるように、きわめて悲惨な状態に陥ったことが指摘されているのである。

そして、このような「何でもバブルの発生と崩壊」については、「大量に創られたデジタル通貨が、時間をかけて、メルトダウンを引き起こした展開」とも言えるが、今年の特徴としては、「大量のデジタル通貨が世界の株式市場に対して、バブルの発生と崩壊を引き起こしている状況」とも想定されるのである。具体的には、「米国のマグニフィセント7」と呼ばれる少数の銘柄群に、世界の資金が集中した状況のことだが、同時に発生した現象は、「金(ゴールド)価格の急騰」だったことも理解できるのである。

つまり、2024年に発生した劇的な変化としては、それまでの「デジタル通貨とコンピューターネットワークで形成された金融界のブラックホール」とでも呼ぶべき環境から、徐々に、世界の資金が「実物資産」へと流れ始めた状況が指摘できるのである。別の言葉では、「金融界のホーキング放射」とも言える展開のことでもあるが、実際には、「金融界のブラックホールから大量の資金が流れ始めた状況」であり、また、このことは、「自然界の大津波が、陸上を襲い始めた状態」のようにも感じられるのである。

そのために、これから予想される変化としては、「大量の資金が、最終的に、紙幣の形で市場に流れ始める展開」でもあるが、このことは、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制と呼ぶべき通貨制度」の崩壊を意味するとともに、「人類史上、未曽有の規模での大インフレの発生」を予想させる動きのようにも感じている。

2024.11.18

日本のエンゲル係数

「日本のエンゲル係数が、現在、急上昇中」というニュースが報道されたが、この事実から理解できることは、「日本の失われた30年間」に関する原因であり、また、「国民を犠牲にして金融システムを助けようとした政府や日銀の思惑」だと感じている。つまり、「約42年ぶりの高水準にまで上昇したエンゲル係数」については、「日本人の家計に余裕がなくなった状況」を表すとともに、「過去25年間の実質的なゼロ金利政策の弊害を象徴する出来事」とも思われるのである。

より詳しく申し上げると、「日本のGDPは、過去25年間、ほぼ横ばいの状況」だったものの、一方で、「日本のマネーストックを代表する指数であるM2」については、「西暦2000年に約630兆円」だったものが、「西暦2024年では約1250兆円」という規模にまで増加していることも見て取れるのである。つまり、「マネーの残高が急増しながらも、日銀によって吸収された状況」のために、「市中に出回る資金が、ほとんど変化しなかった状態」だったことも理解できるのである。

そして、「なぜ、このようなことが行われてきたのか?」については、基本的に、「日本や世界の金融システムを守りながら、国家の財政破綻を防ぐ」という目的が存在したものと考えられるが、この結果として発生しているのが、現在の「円安」とも言えるのである。別の言葉では、「国家の体力」を象徴する「金利」と「為替」に関して、今までは、「低金利」を維持してきたために、「円安」に見舞われてきたことも見て取れるのである。

そのために、これから予想されることは、「約550兆円の規模にまで膨らんだ日銀の当座預金」、すなわち、「2001年に、それまでの準備預金から当座預金に名称変更し、残高が急増した日銀の負債」に関して、何らかの激変が発生する可能性のようにも感じている。具体的には、「金利上昇に見舞われた日銀が、日銀券の発行残高を急増させながら、当座預金残高を急減させる可能性」でもあるが、このことは、典型的な「財政ファイナンス」とも言えるために、「世界の金融システムに対して、劇的な衝撃を与える可能性」も想定されるのである。

より具体的には、現在、危惧され始めた「世界的な流動性の枯渇」に関して、「日銀を始めとして、世界の中央銀行が大量の資金を供給する可能性」のことでもあるが、同時に理解できることは、「これほどまでの金融危機は、やはり、1600年前の西ローマ帝国崩壊の時にまで、歴史を遡る必要性がある状況」だと感じている。

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion14020 241226〕