■■9月11日天児慧フォーラムのご案内■■「毛沢東時代・鄧小兵時代に次ぐ『習近平時代』の世界戦略」(仮の題)

著者: 矢沢国光 やざわくにてる : 世界資本主義フォーラム
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 習近平中国の経済の現状と対外経済戦略については、6月12日、丸川知雄教授のフォーラムで知見を得ました。
 9月11日フォーラムでは、習近平中国の対外政策・外交、とくにアメリカの中国包囲網構築に対する中国の世界戦略について、天児慧教授に話していただきます。

 トランプ大統領は米中対立を激化させましたが、バイデン大統領のアメリカも、欧日等を誘って、対中国体制を再構築しようとしています。

 天児慧教授は『超大国・中国のゆくえ2 外交と国際秩序』(東京大学出版会2015)で、中国外交を「虚と実の外交」と総括しています。
虚とは、触れたり見たりできない実体――政治、思想、理論、作風など。
実とは、触れたり見たりできる実体――GDP、物価、貿易、金融、利益、環境破壊など。
 そして、「文革で毛沢東は、虚としての中国を演じきった」と。
 毛沢東の「世界革命」、「資本主義の道を歩む実権派」、「ソ連社会主義帝国主義」という実のない観念は、「世界戦争に備える」という、これまた実のない観念に基づいていた。毛沢東の対外政策(そしてそれと表裏一体の大躍進・文革という内政も)は、実のない観念を「演じきること」であり、そのけっかは、中国人民の一大災厄であった。

 天児慧教授はまた、中国外交には「型と利」があり、
  虚の外交は型(原則)の実現をめざす、
  実の外交は利(経済利益、海洋権益、安全保障などの国益)の実現をめざす、
としています。
 「スターリン死後の1957年、毛沢東は「東風は西風を圧倒する」と演説し、フルシチョフの「平和共存」に挑戦しました。「型の外交」です。「イギリスに追いつき追い越す」大躍進政策は、こうした「型の外交」を後押しするための政策であり、「利」の実現をめざすものではなかったと、大躍進の本質を総括しています。
 大躍進・文化大革命という、毛沢東時代の最大の「謎」を解くカギを天児慧教授は、「虚と型の外交」「実と利の外交」という対外政策の解明によって与えてくれました。
 
 毛沢東の外交は、「世界革命」という原則(型)のための外交であった。これに対して、鄧小兵時代は、「利の外交」が基本になった。習近平は再び「型」の外交を持ち出して「中国が大国であることを、相手に認めさせる」型(原則)の外交をしているが、習近平の「型の外交」について、天児慧教授は、こう述べています:
 習近平は、中国の伝統的な「王道」外交を提唱しているが、他国からは「覇道」と警戒されている。大国を前面に出すべきではない。
  
 (毛沢東時代の「型」の外交が「世界革命をめざす国家」の外交であったとすれば、世界革命を放棄した鄧小兵以降の外交は「主権国家」の外交といえるのではないか。「型と利の外交」を「世界革命国家と主権国家の外交」という視点と関連づけることはできないか。)

 天児教授は、本年5月刊行の講談社学術文庫版『中国の歴史11 巨竜の胎動』の新たに加筆された第10章「習近平の時代と世界への挑戦」で、習近平が、自らの役割を、毛沢東時代、鄧小平時代に次ぐ第三の時代の担い手と位置づけていること、習近平の統治スタイルが毛沢東の統治スタイルに回帰し、中国の伝統的な皇帝支配・王朝政治になっていること、しかし、習近平は最後の「共産党王朝」になる(と期待する)ことを述べています(*)。

こうした習近平政権の歴史的な位置づけにも言及してもらうことで、中国の対外戦略の理解・論議がより深まることを期待します。(矢沢国光)
 
(*)「…2017年10月、中国共産党第19回全国代表大会で第二期政権を任された習近平総書記は「政治報告」の中で、今の時代が「新しい時代」だということを強調した。…毛沢東の戦略目標を「站起来」(立ち上がろう=建国)、鄧小平の戦略目標を「富起来」(豊かになろう=富国)に対して、自らの時代を「強起来」(強くなろう=強国)と規定し、前二者との違いを鮮明にした。」
 「このように歴史を見ていくと、公式的には「人民の歴史」と言われるが、実際には突出した指導者の構想した絵をキャンバスに描いていったのが、「歴史」と言っても過言でないかもしれない。言うまでもなくその指導者とは、毛沢東、鄧小平であり、今日の習近平もこれに繋がってくる。誤解を恐れず表現するならば、彼らは中国王朝史に登場してきた皇帝に相当する存在であり、中華人民共和国史とは共産党王朝史であったといえるかもしれない。彼ら三人は独裁的な皇帝で、暴君であったが、勇気と知恵を持ち、時には民の声に耳を傾ける啓蒙君主でもあった。しかし三者とも、個々の人々の基本的な人権や自由平等の権利には冷淡であった。まさに儒教的な賢人為政者であった。
 しかし他方で、中国の社会・歴史に意味ある一石を投じながらも、彼らに握りつぶされ、切り捨てられ、無視されてきた無数のエリート、民草が存在してきた。…彼らは今日権力に圧殺されている状態だが、生き続けている。おそらく習近平の時代は中国共産党王朝の最後となるのではなかろうか。」

●主催 世界資本主義フォーラム
●日時 2021年9月11日(土) 午後1時30分~3時
  *午後1時からZOOM・ミーティングに入室できるようにします。
  *いつもよりフォーラムの時間が短いので、ご注意ください。
●講師 天児慧(早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授。専門は、現代中国論、アジア国際関係論。2010年4月より早稲田大学現代中国研究所所長。)
  
●テーマ 「毛沢東時代・鄧小兵時代に次ぐ『習近平時代』の世界戦略」(仮の題)
●参考文献等
 ・青山瑠妙・天児慧著『超大国・中国のゆくえ2 外交と国際秩序』(東京大学出版会2015)
・天児慧『中国の歴史11 巨龍の胎動 毛沢東vs.鄧小平 (講談社学術文庫2021/5/13) (習近平時代大幅加筆) 
・天児慧『中華人民共和国史』岩波新書1999

●ZOOMによるオンライン方式で実施します
参加方法 
(1)どなたも参加できます。参加費500円(あと払い) 
(2)前日(9月10日)までに、
 ■氏名
 ■オンライン参加する際のメール・アドレス
 ■(任意)所属・立場、天児慧先生に質問したいこと、など
を書いて、矢沢 yazawa@msg.biglobe.ne.jp 宛に、メールをください。
 (3)参加アドレス宛に、招待メールをお送りします。URL[ネット上のアドレスを示す青色の文字列]をクリックして「ミーティングに参加する」をクリックすれば、自動的につながります(つながるまで2分間ほど時間がかかる場合があります。ゆっくり待ってください)。
 念のため、フォーラムの前日(9月10日)に招待メールを再送信します(リマインド)。
 ※事前にフォーラムの資料をお送りすることがあります。早めに、参加申し込みしてください。
 ※万一、当日になっても招待メールが届かなかったら、090-9828-2342安岡まで電話ください。
※ZOOM接続が初めての方は、事前に接続予行することをおすすめします。矢沢まで、連絡ください。

●問い合わせ先 矢沢国光 yazawa@msg.biglobe.ne.jp 090-6035-4686