習近平第三期政権は「共同富裕」を目指していますが、その成否は、中国経済の行方に大きく依存しています。
昨今、不動産業の不振と地方政府の債務増大の深刻化が伝えられています。
中国経済の実情は、経済統計の誤差や政治的思惑によって、つかみにくい面がありますが、梶谷氏は、たしかな経済学の手法により、中国経済を把握しようとしています。
梶谷氏の『中国経済講義』を読んで印象的なことは、中国経済が、国際通貨としてのドルと人民元の関係に大きく依存していることを常に念頭に置いていることです。こうした世界資本主義論的な視点は、米中の経済関係を読み解くうえで、重要です。また、中国の不動産不況を日本の1990年以降のバブル崩壊と同じ「デット・デフレーション」、つまり民間の経済主体が抱える過剰な債務が原因の不況ととらえていることです。「中国は社会主義か資本主義か」といった抽象論議ではなく、中国経済に「資本の運動法則」がどのように作用しているか、具体的経済学的な分析が重要だと、改めて気づかされました。
情報の洪水に足をすくわれがちなわたしたちにとって、一度立ち止まって、複雑に絡み合う経済的諸関係のなかから経済学的な概念を取り出す作業を、梶谷氏とともに、じっくりやってみるのは、大いに価値のあることだと考えます。そこで今回はあえて「講義」という名称を冠したフォーラムを企画しました。
(世界資本主義フォーラム・矢沢国光)
●日時 2023年7月15日(土) 午後1時30分~4時
●テーマ 「中国経済講義:不動産と地方財政リスクのゆくえ」
【趣旨】ポスト・ゼロコロナの下で、中国経済の先行きに関する不透明性はかつてなく高まっている。
2023年4月に公表された、同年の第1四半期のGDP(国内総生産)は前年同期比4.5%の増加となり、予想以上の回復をみせた。一方で自動車などの大型の耐久消費財の消費は依然として低迷が続いていると伝えられるほか、一時期の低迷から持ち直したかに見える不動産市場も、特に中小の都市における住宅の需給バランスが崩れていることから、引き続き経済にとっての不安材料であることには変わりがないものとみられる。
本講演では、中国の中長期の経済発展の戦略を考察する上で大きな意味を持つ、不動産市場の動向と地方財政のリスクを分析したうえで、今後の中国経済の行方について考える。
(梶谷 懐)
- 講師 梶谷 懐(神戸大学大学院経済学研究科教授)
1970年生まれ。専門は現代中国の財政・金融。
著書に『現代中国の財政金融システム』(名古屋大学出版会、2011年、大平正芳記念賞受賞)、『日本と中国、「脱近代」の誘惑:アジア的なものを再考する』(太田出版、2015年)、『日本と中国経済』(ちくま新書、2016年)、など。
- 参考文献
梶谷懐『中国経済講義』(中公新書、2018年)
梶谷懐『日本と中国経済: 相互交流と衝突の100年』(ちくま新書、2016年)
- 開催方式 zoomによるオンライン
●参加方法 どなたも参加できます
(1)フォーラムの前々日(7月13日)までに、sekaiforum@jcom.zaq.ne.jpまで、「7.15参加希望」と書いて
・氏名[所属・立場、できれば電話番号、など]をお知らせください。
(2)参加申込者には、フォーラムの1週間前(7月8日)までに、ZOOM接続情報を送信します。届かない方は、矢沢まで連絡ください。
(3)参加費 500円[あと払いも可]、支払い方法は、世界資本主義フォーラムのサイトをご覧ください。 https://www.worldcapital.online/
●問い合わせ先 sekaiforum@jcom.zaq.ne.jp 090-6035-4686矢沢