「これが民主主義の力だ。民主主義の津波だ」 ー おめでとう香港! おめでとう民主主義!

世界が見つめた11月24日の香港区議会議員選挙。「民主派」の圧勝となった。香港市民に、祝意と敬意を表したい。もちろん、この先の険しさは予想されるところだが、取りあえずの勝利に乾杯である。

香港区議選は4年に1度行われ、18の区議会の合わせて452議席を選ぶものだという。他の選挙と違い「市民による直接選挙」であることが強調されている。この選挙結果を香港の民意と見てよい。

この選挙が、「民主派」「親中派」との争いと報じられて、誰もいぶかしく思わない。つまり、一方に「民主主義の香港を目指すグループ」があり、他方に「中国と宥和する香港」を望む政治グループがあって角逐している。「民主」と「親中」が相容れないことは常識となっている。そのことは、この半年間のつぶさな報道で、世界に明らかともなった。実のところ、真の対決は「香港市民」「中国政権」の間にあるのだ。

最終報告で民主派385議席となった。議席占有率でほぼ85%という圧勝。これまで7割の議席を占めていた親中派はこれ以上はない惨敗に追い込まれた。小さな香港が、大きな中国に勝った。香港市民は自信と余裕を得るであろう。香港の雰囲気は変わるに違いない。中国は、この圧倒的な民意を尊重する賢明さを見せなければならない。香港市民への恫喝と弾圧を継続することは、国家と党と政権の権威を自ら貶めることになる。

注目すべきは投票率が71・2%に達していること。過去最高だった前回選挙の最終的な投票率を約24ポイント上回ったという。香港市民の、政治意識変革の反映と見るべきだろう。

わが国の2009年総選挙を思い出す。民主党政権を誕生させた総選挙は、最近では記録的な高投票率(69.28%)となった。それまで自民党政治に絶望しながらも、無力感から投票しなかった1000万人が動いたのだ。政治変革を求めたこの1000万人が、政権を変えた。「第1党・民主党308議席」対「第2党・自民党119議席」という民主党の圧勝だった。

しかし、次の2012年総選挙では、この1000万人が姿を消した。投票率は59.32%に戻って、民主党政権誕生の主役となった10%の有権者が退場することで、再びの自公政権となり、その後の投票率はさらに下落しながら安倍政権を継続させている。安倍一強体制を支えているのは、もの言わぬこの1000万人の選挙権不行使なのである。

それにしても、日本では10%の投票率アップが政権を交代させた。香港の24%アップは、さらに劇的な変化をもたらした。ニワトリとタマゴの関係でもあろうが、投票率アップは政権交代に欠かせない。

香港に学び高投票率を再現して、日本も香港に続きたいものである。
(2019年11月25日)

初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2019.11.25より許可を得て転載

http://article9.jp/wordpress/?p=13840

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