「放送文化基金賞」最優秀賞を受賞した以下の作品、アンコール放映をいたし
ますので、まだの方はぜひご覧いただきたく、お知らせです。
なお内容については、審査委員の評の方が適格なので紹介させていただきます。
NHK・ETV特集
『三池を抱きしめる女たち~戦後最大の炭鉱事故から50年』
7月5日(土)15時~15時59分 Eテレ。
○ 吉田喜重(映画監督)ドキュメンタリー部門審査委員長
「テレビドキュメンタリー作品のそれが宿命なのだろうが、これまで高く評価され
てきた太平洋戦争、あるいは広島、長崎の被爆、そして現在では東日本大震災の記録
は、いずれにしても悲しみの表現であった。しかし本年度の最優秀賞、NHK福岡・熊
本放送局制作『三池を抱きしめる女たち~戦後最大の炭鉱事故から50年』は、依然
として悲しみを伝えながら、かえって心を癒され、歓喜の気持ちすら抱かせる作品で
あった。
50年前、三池炭鉱で起きた炭塵爆発、死者458人、一酸化炭素中毒患者839
人、当時はその治療法もなく生きることを強いられた患者とその家族の半世紀を追跡
したものだが、不治の患者である夫に寄り添って生きてきた妻たちに焦点を当て、
理不尽な生を強いられた女性たちのありようを描く映像には、誰しもが人間の尊厳の
偉大さ、美しさといったものに思い至り、魂を揺さぶられるに違いない。」
○ 桐野夏生(作家) 審査委員
「一週間以上に及ぶ長い選考を終えてひとつき以上たったが、今でも眼前に鮮烈な
映像が浮かんで、胸が詰まる作品がある。それは『三池を抱きしめる女たち~戦後最
大の炭鉱事故から50年』だ。
死者458人、一酸化炭素中毒患者839人を出した三井三池炭坑の爆発事故当
時、
私は十二歳だった。担架で次々と運びだされる死者と、炭塵で顔を真っ黒にした男た
ちの姿はよく覚えている。助かった人がいてよかったと、子供の私は単純に考えてい
たが、現実はそうではなかった。彼らがその後どんな目に遭ったのか、この作品は昔
の映像を交えて、あますところなく伝えている。一酸化炭素中毒で変貌してしまった
夫を支え、会社を訴え、炭鉱内で座り込みまでした妻たちの奮闘ぶりは、言葉では言
い尽くせない。五十年という歳月を生きた妻たちの顔を見るだけで、価値がある。
映像の勝利である。」