「原発事故収束」へ5条件の緊急提言

大飯原発3、4号機再稼動をめぐって、野田佳彦政権への風当たりは厳しい。与党・民主党内でも、「再稼動は〝安全神話〟の復活だ」との反対論が根強い。重要政策につき党を二分するような論議が行われているのに、メディアの取り上げ方が一方に偏っているように思われる。

免震棟、ベント管などの整備が前提

民主党の「原発事故収束対策プロジェクトチーム(PT)」(荒井聡座長)の論議の行方を注目していたところ、4月10日の総会で原発再稼動の前提5条件を掲げた緊急提言を決定、輿石東幹事長に提出した。①国会、政府事故調査委の事故原因の究明・解析②原子力規制庁法案を成立させ、新組織のもとでマニュアル作成③改正原子力災害特措法に基づく防災計画の策定④免震棟の設置⑤ベント管など放射性物質を除去するためのフィルターの設置――この「5条件」を政府に要望した意義は大きい。ところが、新聞各紙の反応は鈍く在京6紙の中できちんと報じたのは、東京新聞11日付朝刊(2面4段相当)のみ。

メディアの問題意識が足りない

民主党内〝脱原発派〟の動きと軽視したとすれば、問題意識の欠如は甚だしい。「提言」は極めて良識的な内容であり、政府に拙速な判断の再考を促す提言と捉える視点こそメディアの責務と思う。東京新聞は「原子力規制庁の新組織や国会事故調の究明などを盛り込んだ5条件は、大阪府・市のエネルギー戦略会議が打ち出した8条件とも重なる項目もあり、大飯原発再稼動に反対する橋下徹大阪市長と足並みがそろった」とコメントしていた。

PTの緊急提言には「関係閣僚のみの判断ではなく、民主党としての見解をまとめることを強く求める」と付記されており、野田政権がどう処理するかが注目される。

大阪府・市も「再稼動反対」へ動く

大阪府・市の統合本部は4月10日、関西電力管内の原発11基を「可及的速やかに廃止する」など、同社定款の変更を求める8議案を決定した。大阪市は関電株9%を持つ筆頭株主で、神戸・京都両市との共同提案が成立しても、出席議決権3分の2以上の賛成が得えられる見込みはない。橋下市長はそんな事は織り込み済みで、「再稼動反対」の世論を盾に関電や野田政権を追い詰め、来る総選挙での躍進を狙っていると見られている。

東京都が「東電」の筆頭株主に

一方、東京都が東京電力の筆頭株主に躍り出たニュースにも驚かされた。昨年9月末時点の東電の株主構成は①第一生命(3・42%)②日本生命(3・29%)③東京都(2・66%)の順だったが、両生命保険会社が3月末までに株の一部を売却したためという。東京都は、東電がビルや工場など大口向け電気料金を値上げしたことに反発。6月末の株主総会で「株主提案権を行使して、株主総会の場で東京都の意見を表明していく方針を練っている。

東西マンモス自治体と電力会社との駆け引き、攻防の行方はいかに? 安全で公正な電力供給を目指し、知恵を出し合ってもらいたいものである。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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