『教育と愛国』という本は、異なる意見を持つ人を攻撃して、脅して従わせる動きが、大阪から広がろうとしていることを具体的に教えてくれる大変貴重な1冊と思います。
著者の斎加尚代(さいか ひさよ)さんは、毎日テレビのディレクター(毎日放送映像取材班)。『映像’17教育と愛国――教科書で今何が起きているのか』(2017年7月)で、第55回ギャラクシー賞テレビ部門大賞を受賞しました。 岩波書店 2019年5月刊)定価1700 円+税
学校と教師に集中砲火を浴びせ脅迫した事例、教育「改革」を首長がダイレクトに指揮する条例に関するページを紹介させていただきます。
維新の会の吉村洋文大阪市長(当時)が、慰安婦を取り上げた平井教諭の授業にかみついてツィートした。
「慰安婦問題を扱うこの教諭は、先の国会で河野外務大臣が『史実に反する』と答弁した事実は生徒に伝えているんだろうか。…公立公務員の教員の授業だ。新文科大臣はこの現状を知ってくれ」と。
そして、さらなる「集中砲火」を浴びせたのは維新などの大阪府会議員らだった。10月の府議会教育常任委員会で、延べ12人もの議員が次々とこの記事に触れて、追及を続けた。例えば
西田薫議員(維新)「(記事が)事実ならば、この教諭は教師ではない、活動家だという方もいました。…この教育公務員が(20年間に)指導した生徒は延べ何人になるんですか」
枡田大阪府教育庁小中学校課長「…7000人から8000人程度と概算できます」
平田教諭の授業内容は日本政府の見解も取り上げ、一方的にならないよう工夫されており、吹田市教委は「不適切ではなかった」と判断した。
にもかかわらず、勤務先の中学校や吹田市教委に抗議の電話が何本もかかり、11月には、差出人不明の脅迫状が届き、京都での校外学習を予定していたのにたいして、卑劣にも「京都で襲撃するぞ」と書かれていたので、校外学習は、急遽中止になった。
彼らが、モデルにした「教育」は、アメリカで展開された、「競争させ」「点数が悪い学校はつぶす」政策。
その手法を最初は支持する人が多かったが…。どうなったのか。著者の斎加尚代さんは、アメリカのブッシュの「ゼロ・トレランス」法案の実施とその破綻を調査しに行きます。そこでその法案を作ってきたニューヨーク州立大学のラヴィッチ教授自身が「あれは失敗だった。日本はまねをしないでくれ」と明白に宣言する様子までを明らかにしていきます。 是非下記動画をご覧になってみてください。
☆「米国流教育の落とし穴」毎日放送映像取材班 YOU TUBEから
https://www.youtube.com/watch?v=SuhjN5cCYRk
初出:「手をつなごうみんなが安心できる暮らしネットワーク」2019.6.18より許可を得て転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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