(2022年10月24日)
NHKと安倍晋三任命の森下俊三経営委員長の両名を被告として、NHKの報道姿勢と、最高意思決定機関経営委員会のあり方を根底から問う《NHK文書開示請求訴訟》。その第5回口頭弁論が、明後日に以下の日程で開かれます。
日時 10月26日(水) 午後2時
法廷 東京地裁415号
また、閉廷後下記の報告集会を開催いたします。こちらにも、ご参加下さい。
時刻 同日 15時30分~
会場 参議院議員会館 B102会議室
今回の法廷では、原告主張の第7準備書面の要約を、パワーポイントを使って、弁護士澤藤大河が解説いたします。テーマは、被告森下俊三の不法行為責任にしぼった陳述です。ぜひ傍聴をお願いいたします。
なお、今回傍聴券の配布はありません。先着順に415号法廷に入廷してください。コロナ対策としての空席確保の措置はありませんので、傍聴席の座席数は十分と思われます。
また、閉廷後の報告集会では、関係者からNHKにまつわる詳細な報告を予定しています。ぜひ、こちらにもご参加下さい。
この訴訟は、原告114名の情報公開請求訴訟です。もっとも、行政文書の公開を求める訴訟ではなく、被告NHKに対して、その最高意思決定機関である経営委員会議事録の開示を求める訴訟です。いい加減に誤魔化した議事録ではなく、手抜きのない完全な議事録と、その文字起こしの元になった録音・録画の生データを開示せよという訴訟になっています。
問題の議事録は、経営委員会が当時の上田良一NHK会長に「厳重注意」を言い渡したことや、その前後の事情が明記されているものです。なにゆえの「厳重注意」だったのか。経営委員会が、NHKの報道番組に介入して、良心的な番組の放送を妨害する意図をもっての「会長厳重注意」だったのです。とうてい、看過できることではありません。
NHKの良心的看板番組「クローズアップ現代+」が、「かんぽ(生命)保険不正販売」問題を放映したところ、加害者側の日本郵政の幹部がこの番組をけしからんとして、NHKに圧力をかけてきました。経営委員会は、この外部の圧力をはね除けて、番組制作の自主性を護らなければならない立場であるにかかかわらず、なんとその正反対のことをしでかしました。当時経営委員会委員長代行だった森下俊三が先頭に立って、日本郵政の上級副社長鈴木康雄らの番組攻撃に呼応して、番組制作現場への圧力を加える意図をもっての『会長厳重注意』を強行したのです。明らかに放送の公正を歪める、放送法違反の行為です。
森下俊三はその後経営委員会委員長となり、さらに再選されて今なお、経営委員会委員長におさまっています。こんな経営委員を選任したのは、あんな内閣総理大臣、安倍晋三でした。NHK経営委員会人事は、安倍政権の負のレガシーです。大きな責任が清算されずに放置されたままです。正常な事態を取り戻さねばなりません。
本件文書開示請求訴訟はその第一歩としての基礎作業です。これまで出てこなかった資料が、提訴によってある程度は開示されました。しかし、完全なものではありません。
本件の提訴後原告に開示された「議事録のようなもの」(部内では「粗起こしの議事録草案」と言われる)は、議事録ではありません。「のようなもの」ではなく正式の議事録を開示せよ、というのが原告の要求です。仮にもし被告森下が議事録を作成もせず、公表もしないとなれば、明白で重大な法律違反です。当然に内閣の任命責任が問われなければなりません。
そして、もう一つの開示請求対象は、「議事録のようなもの」の原資料である録音データです。「のようなもの」には作成者の記載はなく、正確性を確認する術はありません。そこで、録音記録を開示せよと要求したら、何と、「消去しました」というのです。バックアップもとっていないという。どこかで聞いたような話。さすがに、安倍が任命した経営委員長の弁明。
訴訟までされながら、なぜNHKは、原告たちに開示を求められた議事録やデータを出さないのか、あるいは出せないのか。NHK執行部に議事録を出せない理由はありません。むしろ、経営委員から不当な「厳重注意」の処分を受けた会長側とすれば、きちんと議事録を提出してことの曲直を糺して欲しいという希望があるに違いないのです。
しかし、経営委員会側は、出したくないのです。番組制作への介入を禁じた放送法32条2項に違反したことを正式な議事録に残したくないのです。違法を恥じない人物が、NHKの最高幹部になって、NHKの放送の自由を攻撃し、さらにはその証拠を残したくないとして、正式の議事録の開示を妨害しているのです。これを任命した総理の責任は重大で、現内閣には罷免を求めなければなりません。
原告たちは、被告NHKに対する文書開示請求権を持っています。その請求権の行使を妨害しているのが、経営委員会委員長の森下俊三なのです。これが、不法行為に当たるとして、損害賠償を請求しているのです。
NHKという組織では、経営委員会が最高権力者です。NHKの会長を選任することも、クビを切ることもできます。何といっても、その議事録には経営委員の放送法違反が書き込まれているという微妙な問題です。NHKが独自の判断で経営委員会議事録の開示も非開示もできるはずはありません。お伺いを立てて、経営委員会のご意向次第。
以上のスジを約10分のパワポにまとめて、ご説明いたします。本来、権力を監視することを本領とするのがジャーナリズムです。権力から独立していなければならない巨大メディアが、こんなにも権力にズブズブなのです。そして、自浄能力がない。NHKという巨大メディアの政治権力への従属性という問題の本質がよく見える法廷となるはずです。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.10.24より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=20184
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion12486:221025〕