「たね蒔きジャーナル」11月3日書き起こしへの補足

みなさまへ   松元

けさほど送りました「たね蒔きジャーナル」11月3日分に紹介された小出先生の発言にかんして、永岡さんの書き起こしの表現が誤解を招くようだと、京都の諸留さんから補足のご指摘がありました。

専門的な内容で私には無論分かりませんが、「自発的核分裂」という現象がどのようなものであるか、私たちにも理解できるような当を得た補足と思います。ありがとうございました。

=====以下全文転送======

[palestine-forum]グループの掲示板に
松元保昭氏より投稿のあった
小出先生の「たね蒔きジャーナル」11月3日分の転送に
「ウランが核分裂して、セシウムやキュリウムが出来て、勝手に核分裂をします。・・・」
とありましたが、この箇所は、
誤解を生じやすい表現になっていますので、
念の為、問題の箇所を指摘、補足し、
誤解の発生を防いでおきます。

 問題の箇所の、小出先生の「たね蒔きジャーナル」11月3日分の転送部は
「・・・・まず自発的核分裂とは、放射能(セシウム、ヨウ素)はアルファ線、ベータ線を出して原子核崩壊する、キュリウムは、アルファやベータ崩壊せず、何をしなくしても勝手に核分裂する、ウランが核分裂して、セシウムやキュリウムが出来て、勝手に核分裂をします。・・・」

ですが、

 「ウランが核分裂して、セシウムやキュリウムが出来る」のではありません。

ウランの原子核が核分裂すると、
約40種類以上もの様々な種類の
(ウラン原子核よりも小さい)原子核が発生します。
同位体まで含めると、全ての放射性物質の種類は約百数十種類を超えます!
セシウム(原子記号Cs)も、原子番号が55で、
陽子数がウランの原子番号(陽子数)の92より小さいですから、

確かに、「ウランが核分裂して出来る核分裂生成物質のひとつには、
セシウムも含まれることは間違いないのですが。

 ただし、「ウランが核分裂して、キュリウムが出来る」のではありません。

キュリウム(原子記号でCmと表記します)の
原子番号は「96」で
ウランの原子番号(陽子数)92より大きい超ウラン元素です。

自然界に存在する元素はウランが一番重く
(原子番号でいえば92番=陽子数92個)、
これを超える原子番号を持つ元素は、
自然界には存在しません。
 このキュリウムは
「ウランの原子核が核分裂して出来るウラン原子核の破片」
ではありません。
ウラン原子よりも重く、
自然界には存在しない「超ウラン元素」のキュリウムは、
歴史的には、1944年に、米国人シーボーグ等により
プルトニウム239(これも人工元素のひとつ)に
32×10六乗eV(エレクトロン・ボルト)もの超高速高エネルギーα粒子を
衝突させることで、始めて地上に人工的に作られた人工元素です。

この時作られたキュリウムは、
原子量が242で半減期163日の放射線を放出する放射性物質でもある、
超ウラン元素であることが確認され、
キューリー婦人にちなんで名付けられた人工元素の
キュリウム242とされました。

 この最初のキュリウム242の発見後も、
次々に、多くのキュリウムの同位体
(原子番号は同じ96でも原子量が
それぞれ異なるキュリウム元素のことを
キュリウム元素の同位体といいます)
が発見されました。
最も半減期の長いキュリウムは、
キュリウム247の1560万年です。

 その後、更に、超ウラン元素の一つであるアメリシウム243
(原子番号95、原子量243の元素。元素記号Am)
に中性子を照射することでも、
キュリウム244(半減期18・1年)の超ウラン元素が
人工的に作られることも確認されました。
 ちなみに、このキュリウムの同位体は
キュリウム(Cm232)から、キュリウム(Cm252)まで、
19種類ものキュリウム元素の同位体が存在します。

これら19種のキュリウム元素同位体のすべてが放射性元素
(つまり放射線を放出する物質)で、
他の原子核へ変換(崩壊)していきます。
最も半減期の長いのがキュリウムCm247で1560万年です。
その他にも、34000年のCm248、9000年のCm250、8500年Cm245など
比較的安定したキュリウムもありますが、
その他のキュリウムの同位体の大半の半減期は
35日未満の短い半減期を持っていますので、
原子量を決める(計測する)ことは出来ず、
質量範囲は233~252の間でしか定められません。

 従って、「たね蒔きジャーナル」11月3日分の
転送文中の「ウランが核分裂して、セシウムやキュリウムが出来る」
という説明の後半部は、不正確な表現です。

 ウランの核分裂に伴ってセシウムという放射性物質は確かに出来ます。
これとは別の現象ですが、また原子核分裂現象ではなく、
原子核変換現象として、
原子炉内でウランがプルトニウムや、アメリシウムという
超ウラン元素に変換される現象も生じますが、
そうやって生じたプルトニウムやアメリシウムなどの超ウラン元素が、
更に炉心内のα線や中性子線が衝突すことで、
キュリウムやアメリシウム等の超ウラン元素が出来て、
それらの超ウラン元素の原子核が自然崩壊(原子核の自然変換)することで、
放射線を放出し、それがキュリウムやキセノンの発生となる・・・
というのが、より正確な説明です。

 たぶん、小出裕章先生も、
このように詳しく説明なさるのが煩わしいので、
大ざっぱな表現をなさったのだろうと思って、
念のため、問題の箇所のURL
内容文字おこし
http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65773401.html
でも確かめてましたら、

「原子炉を動かしてしまいますとウランが核分裂をしてセシウムやヨウ素もできますし、

一方ではキュリウムというような放射性物質も出来てきて。
その出来たものが勝手に核分裂をするというそういう性質を持っています」
と、小出裕章先生も、
ウランの核分裂に伴う副産物としてのキュリウムが生成される・・
と、おしゃられておられます。
ウランの原子核分裂それ自体からキュリウムが生じる核分裂生成物質ということは
小出裕章先生は、おしゃってはおられませんので・・・・

問題箇所は、「たね蒔きジャーナル」11月3日分の小出裕章先生の上記の発音声言を
「文字起し」なさった方が、
小出裕章先生の発言なさった通りには「文字起し」をなさらず、

漠然と
「ウランが核分裂して、セシウムやキュリウムが出来て、勝手に核分裂をします。・・・」と、
ウランが核分裂してセシウムもキュリウムも発生する・・・
誤解されやすい表現に言い換えてしまわれたものと思われます。

念の為に・・・・

それよりも、今回のキセノンやキュリウム騒ぎで
明らかになった放射性物質の核種を計測する方法が、
いかに難しいか、現在まで東京電力や政府や自治体やマスコミが
報道し垂れ流し続けている
放射能測定値がいかにあてにならないかが
見事に暴露されましたね。

これについては、次回お知らせします。

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