ネットル『ローザ・ルクセンブルク』を知人から借りた。それを読んでいたら、上巻142頁~143頁にローザ・ルクセンブルクの(ベルリンに移住した直後の)日常が彼女の手紙からの引用という形で記されていた。この原文は少し前に読み終えた彼女の書簡集(Rosa Luxemburg, Herzlichst Ihre Rosa, Dietz Verlag, Berlin, 1989)にあったはずだと思い、その時のメモを探した。以下のようなものが見つかった。
ローザ・ルクセンブルクの日常
ローザ・ルクセンブルグの書簡集をチビチビと読んでいる。その100頁に1898年頃の彼女の日常の暮らしのことが語られている。なんとなく、記憶に残したくなる記述である。
・午前8時前起床
新聞と手紙を読む(もっとも重要なものを読む)、乾布摩擦、着替え
朝食:ホットミルクとバターパン
・散歩一時間
・帰宅後
着替え、書きもの(メモと手紙)
・昼12時半
昼食:60プェニッヒの昼食、寝椅子で昼寝
・午後3時起床
お茶を飲む、メモを書く(午前中のことを)、(図書館から借りてきた)本を読む
・午後5時か6時
カカオを飲む、仕事(書き物、あるいは郵便局に手紙を投函)
・午後8時
夕食:ホットミルク、生卵三つ、ハムかチーズ、バターパン、そのあとさらに仕事
・深夜12時
就床
散歩と寝椅子での昼寝、そして簡単な食事以外は、ひたすら机に向かい、作業をするか、本を読むかである。ローザのあの多作の裏には、これだけの地道な作業があったということだ。
ネトル『ローザ・ルクセンブルク』の翻訳には違和感はほとんどない。ところが上の「最も重要なものを読む」は、訳文(訳者は米川紀夫氏)では「最も大事なことをすませます」となっている。これには何となく違和感があった。朝、新聞と手紙をひっつかんできた後、ふたたび毛布にもぐりこみ、「最も大事なことをすませます」、などと訳されたのでは、一体蒲団の中で何をやるのかと思ってしまう。やむなく原文にあたったが、原文では、この部分はlese die wichtigsten Sachen となっている。これを「最も大事なことをすませます」と訳すのは、とんでもない誤訳と言わざるを得ない。重箱の隅をほじくるように、こういう「誤訳」にいちいち腹を立てるつもりはない。またネトル『ローザ・ルクセンブルク』は、きわめて詳細な伝記になっており、読んでいて実に興味深い。こういうものを日本語で読めることを素直に喜びたい。だた、それだけに、上述のような「誤訳」は残念でならない。
J・P・ネットル『ローザ・ルクセンブルク』河出書房新社、1974年
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion8080:181014〕