ハシズムについてはすでに広原盛明氏が執拗かつ的確な分析と批判を続けている。
付け加えることはないと思ってきたし今もそう思っている。だから以下に述べることは、フィールド・ワークなしの東京人の独断と偏見である。
「維新八策」を政策とする「日本維新の会」が、新自由主義と偏狭な右翼主義の合体したポピュリズム集団であることは明白である。私は「維新の会」は「張り子の虎」であり、この人気も近く消滅すると思っている。
《烏合の衆・野合の政治家でできた維新の会》
第一に人がいない。国会議員7名中、少しは知られた人物は民主脱党の松野頼久だけである。あれだけスリ寄った既成政党から有力政治家の参加が一人もいない。この一派の空疎さと、既成政党もそれほどバカではないことを示している。
東国原英夫などは、宮崎県知事を投げだし、都知事選に出て敗北し、今度は維新の会だという。理念と政策の一貫性など一片も感じられない。松下政経塾出の山田宏、中田宏も結局、区政と市政を投げ出したのではないか。つまり彼等は、仕事を全うできない「出来損ない」の野合集団なのである。堺屋太一、竹中平蔵、古賀茂明などの狙いは何なのか。官僚と政治のメカニズムを熟知する狡猾な彼等が、橋下如きに寄り添うのはよほどウマみがあるに違いない。あるいは日刊ゲンダイ風にいえば米日政府の陰謀があるに違いない。
衆院選候補者350人をカネも出さずにどうやって集めるのか。民主や自民にも無理な多数の候補者をどうやって出すのか。彼等が街頭演説で正体を見せればブームは瞬時にして消滅するであろう。
《コストカット・労組恫喝・コケにされた大阪人》
第二に、橋下自身の実績が十分に検証されていない。
高度成長期には大阪も大発展したのである。もし大阪の統治構造に問題があるのなら、その時点から発展は阻害されていた筈である。橋下は、何かにつけて「仕組みが悪い、怠け者が悪い」という。敵をつくり大衆の怨念を刺激して扇動する物言いである。
2012年9月12日の毎日新聞夕刊に、江畑佳明という記者が橋下政治4年半の評価を書いている。それを要約すれば、「あなたがたは破産会社の職員だ」と言って府庁職員を脅し、関西文化を無視して、強烈なコストカットと労組へのバッシングを強行した。これが橋下政治の本質であるというのである。その通りだろうと思う。
第三に、大阪人の政治的知性が試されている。
東京へのコンプレックス、不況による閉塞感、特有の「部分天才・全体馬鹿」体質。「橋下さん?実行力あってええんとちゃうの」と答える大阪人の政治的知性が問われているのである。横山ノック風なカルチュアはいい加減に卒業したらどうか。お得意の自虐精神は、阪神タイガースの応援にとどめたらどうか。政治を真面目に考え直したらどうか。
東京人として「上から目線」でいうつもりはない。石原慎太郎を戴く東京人も同罪である。
《「脱亜論」から「アジアは一つなり」へ》
「日本維新の会」は、大阪人の知的怠慢につけ込んで躍り出た。橋下は、早くも「慰安婦問題」や「集団的自衛権」で右よりの発言をしている。大阪府・大阪市という権力を握ったこの一派は、偏狭なナショナリズムを合体させた危険な集団だ。その勢いで日本を乗っ取ろうとしている。
1931年9月18日の満鉄爆破事件の陰謀を起点に、310万人の日本人と数千万人のアジア人の命を奪う帝国主義戦争に我々は突入したのであった。自民党と民主党の党首選びの茶番劇でも「憲法改正」、「集団的自衛権」を当然だとする異様な言説が氾濫している。21世紀の「脱亜論」が頭をもたげているのだ。彼等は、鳩山が「日米関係」を弱体化したという。話のベクトルが逆を向いているのが今の日本である。「大東亜戦争」は、無辜の民を虐殺した米国の原爆投下とソ連参戦で息の根を止められたのである。
中国で反日デモが燃えさかっている。
この状況に流されて現実主義のワナに嵌ってはならない。
岡倉天心は「アジアは一つなりAsia is One」と言った。「大東亜戦争」に悪用された先達の真意を、再定義し、「一つのアジア」を実現しなければならない。
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