バルセロナの童子丸です。
新しい和訳文を作ってみました。先日来フランスで大騒動になっている事件についてです。
今回はそれほど長くないものですが、お時間の取れるときにお読みください。またご拡散いただければ幸いです。
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http://bcndoujimaru.web.fc2.com/fact-fiction2/Who_profits_from_killing_Charlie.html
「イスラム・テロ」:警察国家化への一里塚
- 和訳:アジア・タイムズ「シャーリー殺しで誰が得をするのか?」
この数日間、スペインのテレビを見ても新聞(インターネット版)を読んでも、気が滅入るばかりです。それまでいかにもこの国らしい個性的な(というか、いい加減で勝手気ままな)番組を競って作っていたそれぞれの報道機関が、あの「シャーリー・エブド襲撃」の瞬間に、一斉にそろって同じ論調で同じ場面を流すオール・プロパガンダ機関に変身したからです。テレビのスイッチを入れるたびにフランスの様子が映って、「またこれか」と、即刻、どうでもよいようなスポーツ番組にチャンネルを変えるか、すぐに消してしまう日々が続いています。
欧州で「イスラム・テロ」が起こると、常にワンパターンで物事が展開します。どうせ例によって例のごとくだろうな、と思っていたら、1月9日になって、やっぱり例によって例のごとく、密室の中で「テロリスト全員死亡」…、死人に口無し。欧州最大の「イスラム・テロ」、 2004年の311マドリッド列車爆破事件を経験した国に住んでいると、どうせこうなるだろうなと思っていたことがすべて、やっぱりそうなった、ということになってしまいます。次に展開する事態も必然的に読めてきます。
フランス当局の「公式発表」のほかに、さまざまな「陰謀説」も飛び出すのは分かっているのですが、私にはさして関心はありません。 9・11事件のニューヨークWTC(世界貿易センター)ビル群の崩壊とは異なり、誰にでもわかる明確な物理的根拠があるわけでもなく、どうせ、どいつもこいつも、永久に根拠の示されぬ公式発表に基づいた憶測か、状況証拠に基づくだけの憶測でしか、ものが言えないわけです。しかし、明確に言えることがいくつかあります。「結果として何が起こるのか」という点です。
短期的には、民衆の注意が「テロ」に引き付けられることで、EU構成国の危機的な経済状況(特にフランスで)が覆い隠されてしまう効果があります。スペインでは当サイトでお目にかけているような、崩壊する国民生活だとか、救いようのない政治・経済の腐敗だとか、従来の政治体制の危機などといったものから、ちょっとだけ人々の意識をそらすことができたでしょう。さらに欧州の対ロシア・対中国外交で米国の命令から離れようとする動きが見えてきたことに対するけん制効果もありますし、インチキ「イスラム国」が跳梁跋扈する中東にヨーロッパ諸国を縛り付けることもできます。例によってネオコンのアメリカさんが大忙しのご様子ですから。しかし最も明確に言える点は、「テロ対策」を通して欧州全域で警察国家・監視社会化がまた一歩完成に近づくということです。
いま、世界中に16億人の信者を持つ大宗教の開祖に対して最大限の嫌悪と侮辱を表現し続けたシャーリー・エブドが襲撃され、スペインのテレビやラジオは「表現の自由をテロから守れ」の大合唱です。1月7日から8日にかけて、どの局の番組でも解説者たちによって「表現の自由」「表現の自由」が連呼されていました。こうして愚か者たちの「自由!」「自由!」の叫びの中で、我々の社会からあらゆる自由が圧殺されていくのでしょう。
以下に掲げる翻訳(暫定訳)は、2015年1月8日付のアジア・タイムズ紙に載せられたぺぺ・エスコバルの記事「シャーリー殺しで誰が得をするのか?」です。なお、この記事が出たときにはまだ「立てこもり」と「犯人の殺害」は起こっていません。(犯人の一人として殺害されたらしいシェリフ・クアシはラップを歌いながら踊りまくる実に陽気な「イスラム原理主義者」だったそうな…。まあ、例によって例のごとくですが。)
Who profits from killing Charlie? By Pepe Escobar Asia Times 8 Jan 2015
http://www.atimes.com/atimes/World/WOR-01-080115.html
訳文中の《注: 》の部分は訳者による注釈です。著者のぺぺ・エスコバルの最新の著作が「Empire of Chaos(カオスの帝国)」であり、この言葉が記事の方々で使われます。また「カオス」については当サイトにある「皇帝の激怒:世界をカオスで包んでしまえ!」(和訳:ジェイムズ・ペトラス著)も参照できるでしょう。
別に、ここに書かれているような見解に誰でも全て賛同してほしいなどとは思いません。ただ、 全体主義・警察国家化が着々と進められる国に住んでいる者の一人として、現代という時の本当の危機の在り方を分かってもらいたいだけです。現在、警察国家化・管理社会化、すなわち、困窮する「99%」の、「1%」の支配階級に対するあらゆる反対や反乱を、金輪際不可能にする体制作りが、一歩一歩、その度を強めているのです。そしてそれを危惧する声は「自由!」「自由!」の愚かな轟音の中でかき消されてしまう…。
なお、関連して、ネット上では「 マスコミに載らない海外記事」様による次のような翻訳記事もあります。ご参照ください。
シャルリー・エブドとツァルナーエフ裁判: Cui bono誰の利益になるのか? (ポール・グレイグ・ロバーツ著)
シャルリー・エルボ襲撃後の“言論の自由”という偽善 (Word Sosialist Web Site)
2015年1月11日 バルセロナにて 童子丸開
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シャーリー殺しで誰が得をするのか?
ぺぺ・エスコバル アジア・タイムズ 2015年1月8日
プーチンがやった。失礼、彼じゃなかった。結局、フランスの中心部を襲ったのはロシアの「攻撃」ではなかった。それはプロ級の聖戦主義コマンドだった。誰が得をするのか?
注意深い計画と準備、すなわち;カラシニコフ;ロケット推進の手榴弾発射装置;バラクラバ《注:目の部分以外を覆う頭巾》 ;予備の弾倉を取り付けた砂色の戦闘用チョッキ;軍用ブーツ;黒いシトロエンで易々と逃亡。その毒入りケーキに振りかける糖衣として;それを遂行するパリが本拠地の完璧な軍事支援体制。元フランス軍のトップ司令官の一人であるフレデリック・ガロワは、その「 市街戦ゲリラ技術」の完璧な応用を強調した。(西側のあの著名な対テロ「エキスパート」たちは必要とされる時にどこにいるのだろうか?)
彼らは完璧なフランス語を話していたのかもしれないが、他の人たちはそれがへたくそなフランス語だったと言った。いずれにせよ、彼らがつぶやいた魔法の言葉は何か;「我々はアルカイダである」。もっとすばらしいことに、彼らは通りにいた一人の男に「これはイエメンのアルカイダだとメディアに言え」と告げた。アメリカのテロ用語でそれはアラビア半島のアルカイダ(AQAP)を意味するのだが、それが、シャーリー・エブドの編集人で戯画家であるステファン・シャルボニェ(「シャルブ」)を、体裁を整えたAQAPの雑誌Inspireによって正式に推薦された暗殺リストに載せていたのだった。罪状は「預言者モハメッドへの冒涜」である。
そしてその下手人をみんなの脳に確実に刷り込む目的で、同時に殺人者たちは言った;「アラーは偉大なり」;「我々はシャーリー・エブドを殺した」;そして「我々は預言者の復習を果たした」。
事件は確定したのか? フランスの警察が容疑者を突きとめるのに(普段はどうか知らないが)わずか2、3時間しかかけなかった。アルジェリア系フランス人のサイードとシェリフ・クアシの兄弟である。第3の男、つまり黒いシトロエンの運転者である18歳のハミド・モウラドは、否定しがたいアリバイと一緒に警察に出頭した。ということで第3の男は不明のままである。
彼らは全員がバラクラバを身に着けていた。クアシ兄弟はまだ逮捕されていない《注:この記事の後、1月9日に彼らは「死亡した」》 。しかし警察は彼らが何であるか非常によく知っているようだ。なんとなれば、黒いシトロエンの中に置き去られた身分証明書を(大急ぎのコマンドがドジを踏んだ、ハア…)発見したからだって…。警察がその虐殺の以前には何も知らなかった、ってことかい?
注意すべきことだが、シェリフ・クアシの経歴は知れ渡っていた。彼は世界中で要注意リストに載せられていた。彼は他の6人と共に2008年5月に「テロ」の罪で3年間の懲役を言い渡されていた。実際には彼らは、マドラッサー《注:パキスタンのイスラム学校》 を通して12人のフランス人の若者をエジプトとシリアで、他でもないアブ・ムサブ・アル‐ザルカウイの下に送り込んだのだ。このザルカウイはアメリカのミサイルで殺されたイラクのアルカイダの首領で、 Daesh/ISIS/ISILの、精神的指導者だった男だ。
同様に注意すべきことだが、全面的な物語の筋書きが 情報の大量消費のために準備されていたのである。キーポイントは次である。フランス警察は「イスラム・テロ」の仮説だけを特権的に採用する。彼らの「エキスパートたち」によれば、これは「外国から命令されたものであり、シリアから戻って来て我々の手から逃れた聖戦主義者によって実行された」襲撃、あるいは「過激派となりアルカイダの名でこの軍事攻撃に関与した田舎の愚か者たち」かもしれない。
何とまあ、ゴミ見解が二つだ。これはプロの仕事だった。選択肢の第一にとどまるなら、これは ― 他ならぬ ― 逆噴出をきっちりと指し示しているのだ。そう、彼らはDaesh/ISIS/ISILの、NATO(重要なことにフランスが含まれている)によってトルコ and/orヨルダンで訓練を受けた、傭兵たちであるかもしれない。しかしそれは、もっと忌々しい偽の旗を掲げているかもしれない。彼らは同様にフランスの元または現役の特殊部隊でありうる。
イスラム旋風、駆け巡る
予測可能なことだが、イスラモファシズム《注:「イスラモファシズム」はネオコンの理論家マイケル・レディーンの言葉でG.W.ブッシュも使った》推進者たちはすでに野外演習を日/週/月/年単位で行いつつある。動物未満の知能指数を振りかざす愚か者ども/トロール《注:洞穴に住む空想上の生物》ども/群衆の塊は、疑心暗鬼にかられてイスラムを悪魔化する。パキスタンの部族地域からイラク中の露天街に至るまでの何百万人もの語られざる民が、聖戦主義の思考つまり「カラシニコフ文化」の犠牲者にされながら、精神と生活が荒廃していく苦痛を味わい続けているということを忘れてしまうのは、実に都合のよいことである。それはパキスタンでよく知られているように、最近の何十年間、直接的・間接的に「西側」に利益を与えているのだ。パキスタン、イエメン、シリア、イラクあるいはリビアの国民に対する習慣的な無人爆撃機による攻撃を考えよ。サドルシティーで目撃される虐殺がパリの10倍以上も悪いことを考えよ。
フランス大統領フランソワーズ・オランドが「例外的な野蛮さの行為」として定義するものは、フランスがサルコ大王《注:前大統領サルコジ》 からオランド将軍様ご自身までが最前線に立つ「西側」が、リビアやシリアで隊列を整えられた傭兵たち/斬首人たちを武装化し訓練を与え遠隔操作するときには、まさにこの定義そのものであるのに、適用されることがない。そう、その通り;トリポリやアレッポで市民を殺すことは完璧にOKなのだ。しかし同じことをパリでやってはならない。
そこで、この欧州の中心で起こったことは逆噴出の感覚がするものである。それは、ワジリスタンで結婚の宴会がヘルファイア・ミサイルで火葬されるときに人々が感じるものだ。同時にまた、ものすごく洗練された西側諜報機関網が、逆噴出がやってくるのを見つけなかったなど― そしてそれを防ぐ能力が無かったなど、完璧にあり得ないことだ。(スケープゴートにされたクアシ兄弟が絞首台にいなかったのはなぜか?)
もちろんだが、超精密な西側の対テロ・エキスパートのネットワークは ― あらゆる飛行場で我々全員をスッポンポンにすることには実に熟練しているのだが ― それがやってくるのを見つけていたのだ。しかし影の戦場の中で、「アルカイダ」と、その「裏切り者」のDaesh/ISIS/ISILを含む無数の逸脱者どもの旅行カバンが、「我々の自由に対する」都合のよい国内的脅威として、傭兵部隊と同じ規模で利用されるのである。
誰が得をするのか?
同じく予想可能なこととして、米国のシンクタンクの場は、開拓すべき多くの地政学的な空間に聖戦主義を供給する 「イスラム内」分裂のドラマを紡ぎだすのに大忙しである ― そのすべてがイスラム教徒内の内戦に西側世界を引き込んでいる。何とも滑稽なことだ。カオスの帝国は、すでに1970年代を通して、ソ連からやってきて南側世界《注:「南北問題」という場合の「南」で、西側世界による搾取と収奪の場》 に向かうあらゆるものと戦うために、聖戦主義/カラシニコフ文化を育てるのに大忙しだった。「分割して支配せよ」は、タリバンと癒着したクリントン政権からスンニ/シーア派の対立を ― ペルシャ湾岸にいる家臣どもに助けられながら ― 推進させるチェイニー支配に至るまで、「イスラム内」の火炎を煽るために利用されている。
では、シャーリー殺しで誰が得をするのか? イスラムを悪魔化するべきアジェンダを持つ者だけである。彼らを野蛮人であると非難する人々に対して彼らが実際に野蛮人であることを見せつけるために、シャーリー虐殺をやってのけるなど、洗脳された狂乱者たちの一団などではあるまい。フランスの諜報機関は少なくともこれが自爆犯の離れ業ではないと結論付けている。これはプロの仕業だ。それはたまたまフランスがパレスチナ国家を承認したわずか数日後に起こっている。そしてオランド将軍がロシアの「脅威」に対抗する制裁の幕引きを要求したほんの何日か後のことでもある。
カオスの帝国の本当のレバーを引く宇宙の支配者たちは、今までコントロールできると期待していた闇商売でのシステマティックなカオスの中毒状態になっている。間違えてはいけない。カオスの帝国はシャーリー後の状況を利用するためにできることをやり尽くすだろう。それが逆噴出であっても偽の旗であっても。
オバマ政権はすでに国連安保理を動かしている。FBIはフランスの捜査に「協力して」いる。そしてイタリア人のアナリストが忘れ難く書いたように、聖戦主義者はヘッジファンドのハゲタカを攻撃しない。彼らは風刺の効いた布切れを攻撃する。これは宗教ではない。これは断固たる地政学だ。ダヴィッド・ボウイの声が思い出される。「これはロックンロールじゃない。自殺だ。」
オバマ政権はすでに、あらかじめ捏造されたロシアの「脅威」に少しだけ、ほんの少しだけ、後ずさりし始めた西ヨーロッパに対して ― 暴徒スタイルの ― 「保護」を提供するために活動している。そしてまさに起こっているとおりに、カオスの帝国が最もそれを望むときに、邪悪な「大地」が再びその醜い頭を持ち上げるのだ。
そしてそうだ、私はシャーリー《注:シャーリー・エブド襲撃の直後から「JE SUIS CHARLIE(私はシャーリー)」と書かれたプラカードを掲げる群衆がフランス中に満ちている》 。我々を笑わせてくれたからではなく、はるかに忌々しく恐ろしい終わることのないシャドープレーの中で、彼らがいけにえの羊にされたからである。
【和訳・引用ここまで】
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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