「ウリハッキョ - 私たちの学校、私たちのふるさと」(CD)のお薦め。

5月3日、有明での憲法集会の中央ステージで、東京朝鮮中高級学校合唱部の皆さんが、胸に響く訴えをされ、美しい歌声を聞かせてくれた。

集会後、その生徒たちがコーラスのCDを販売していた。そのうちのお一人にサインをしてもらって、1枚買った。「東京朝鮮中高級学校合唱部『ウリハッキョ - 私たちの学校、私たちのふるさと』」というタイトル。2018年12月の収録で、1800円。これが素晴らしい。1枚といわず、もっと買っておけばよかった。

「私たちは朝鮮高校にも無償化が適用されるよう、運動を行っています。このCDの売上の一部がその運動資金に充てられます。」という訴えに応えるというだけでなく、「どこまでも澄んだ泉のような美しい歌声、心洗われるハーモニー」という惹句が、そのとおりなのだ。人にも薦めたくなる。

これまでは起床して朝食までの毎朝のBGMは、古きよき時代のアメリカンポップスだった。いま、「ウリハッキョ」がこれに代わった。「米」から「朝」にである。しばらくは、毎朝これを聞き続けることになる。

収録されているのは、下記の10曲。
このうち、「4. 声よ集まれ、歌となれ」「5. アリラン~赤とんぼ」「8. 花」の3曲が、日本語の歌詞で唱われ、その他は朝鮮語で意味は分からない。訳詞を読みながら聞いている。

   1. 故郷の春    
   2. 私の故郷
   3. 子どもたちよ、これがウリハッキョだ
   4. 声よ集まれ、歌となれ
   5. アリラン~赤とんぼ
   6. 月夜の星芒
   7. アリラン
   8. 花
   9. あじさい
   10. 私たちのふるさと - ウリハッキョ

題名からも分かるとおり、「故郷」の歌が多い。唱われているのは、しみじみと懐かしい故郷。遠い異国で懐かしむ故郷は、美しい自然の調和に恵まれ、豊かさをもたらす労働の喜びと自由に溢れた平和な里である。隣国からの侵略もなく、南北の分断も克服された、理想郷として追い求める彼らの故郷。それは同時に、人類共通の願いでもある。

なお、東京朝鮮中高級学校のホームページの閲覧をお勧めしたい。そこでの彼らの祖国の旗は、南北統一旗となっている。いうまでもなく、その南北分断には日本が大きな責任があるのだ。

http://www.t-korean.ed.jp/

このアルバムのほとんどが、しみじみとした、あるいはやるせない曲調である中で、日本語で唱われる「4. 声よ集まれ、歌となれ」だけが異色。労働歌の趣き。運動の歌、闘いの歌なのだ。「いますぐその足をどけてくれ。4・24(サ・イサ)の怒りがよみがえる。踏まれてもくりかえし立ち上がる」という歌詞の生々しさに、ギョッとさせられる。もしかして、私も足を履んでいる側にいるのではないだろうか。

声よ集まれ、歌となれ

   どれだけ叫べばいいのだろう
   奪われ続けた声がある
   聞こえるかい? 聞いているかい?
   怒りが今また声となる
   声よ集まれ 歌となれ
   声を合わせよう ともに歌おう

   聞こえないふりに傷ついて
   かすれる叫びはあてどなく
   それでも誰かと歌いたいんだ
   一人の声では届かない(だから)

   ふるえる声でも 歌となる
   声を合わせよう ともに歌おう

   ただ当たり前に生きたいんだ
   ただ当たり前を歌いたいんだ

   いますぐその足をどけてくれ
   4・24(サ・イサ)の怒りがよみがえる
   踏まれてもくりかえし立ち上がる
   君といっしょならたたかえる

   声よ歌となれ 響きわたれ
   声を合わせよう ともに歌おう

この歌詞の中に出て来る「4・24(サ・イサ)の怒り」とは、次のできごとを指す。

「連合軍総司令部(GHQ)の指示により、文部省(当時)は1948年1月24日、各都道府県宛に『朝鮮人設立学校の取り扱いに関する文部省学校教育局長通ちょう』(第1次閉鎖令)を通達。従わない場合は学校を閉鎖するよう指示した。
同胞らは各地で抗議活動を広げ、48年4月24日、兵庫では県知事に閉鎖令を撤回させた。
しかしその夜、GHQが『非常事態宣言』を発令し、いわゆる『朝鮮人狩り』が始まった。大阪の同胞たちは26日、府庁前で3~4万人規模の集会を行い、朝鮮人弾圧と閉鎖令の撤回を訴えた。大阪市警は放水・暴行で取り締まり、射撃まで行った。大勢の同胞らが不正に検挙されただけでなく、警察が発砲した銃弾によって、当時16歳の金太一少年が犠牲となった。
民族教育を守るための同胞たちの闘いは、閉鎖令の撤回を勝ち取った4月24日の兵庫での闘いに象徴的な意味を込め『4・24教育闘争』と呼ばれるようになった」(「朝鮮新報」〈在日本朝鮮人総聯合会機関紙〉記事)

以上は、ブログ「アリの一言」(鬼原悟さん)からの引用だが、同ブログは「GHQ(実質はアメリカ)と日本による暴力的な民族(教育)弾圧に対する朝鮮人の闘いの象徴が『4・24教育闘争』です。それは日本人にとって、戦後の朝鮮人差別・弾圧の象徴的な加害の歴史なのです。しかも、決して70年前の「過去のこと」ではありません。文字通り今日的な問題です。」と続けている。まったくそのとおりなのだ。

「4・24(サ・イサ)の怒りがよみがえる」という、「声よ集まれ、歌となれ」は、2013年に朝鮮大学校生によってつくられ、朝鮮高校への「無償化」適用を訴える文科省前「金曜行動」のテーマソングとなっているという。文字通り、闘いの歌として生まれ、闘いの中で唱い継がれている。私も、毎朝これを聞いて、思いを重ねることにしよう。

東京朝鮮中高級学校合唱部「ウリハッキョ – 私たちの学校、私たちのふるさと」購入希望の方は、下記にお申し込みを。

 http://www.ongakucenter.co.jp/SHOP/CCD946.html

価格: 1,800円 (本体 1,667円)
【発送手数料(送料)について】
発送手数料(送料)は、別途490円が必要となります。
(2019年5月7日)

初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2019.5.7より許可を得て転載

http://article9.jp/wordpress/?p=12550

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/

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