「人事で支持率急落―33%が23%に」「菅続投による政治空白66%」

著者: 瀬戸栄一 せとえいいち : 政治ジャーナリスト
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 菅直人首相が27日に断行した人事は民主党内外から反発を受け、共同通信が28、29両日に行った全国緊急電話世論調査によると菅内閣支持率は23・2%で6月上旬の33・4%から1か月足らずの間に10ポイント強も急落した。
 いったん退陣表明しながら菅直人首相が続投していることも国民の不評を買い、「続投で政治空白が生じている」との回答は66・3%に上った。自民党に離党届を提出した浜田和幸参院議員を災害復旧担当の総務政務官に起用した人事に対しては「評価しない」との回答が52・6%を占めた。
 一方、菅首相が27日の記者会見と翌28日の民主党両院議員総会で「エネルギー政策が次期国政選挙の最大の争点になる」と明言したことは野党、特に自民、公明両党側に強い反発を生じ、自公両党の幹事長が29日朝の会談で「退陣表明した首相が衆院解散に触れるのは不見識だ」との批判で一致。
 自民党の石原伸晃幹事長は浜田和幸参院議員の総務政務官起用について、「信頼関係が壊れた」と反発し、菅首相が退陣の条件として挙げた2次補正、公債発行特例、再生エネルギー特例の3法案については、当面、審議に応じられないとの考えを公明党側に伝えた。

 ▽仙谷氏と激論に
 人事公表より1週間前の6月20日夜、岡田克也幹事長、仙谷由人代表代行ら民主党執行部5人は首相公邸で菅直人首相を囲み、退陣時期をはっきりさせるよう首相に迫った。
 岡田氏は「時期をはっきりさせれば自民党と折り合える」とし、自民党側からは早期退陣なら公債特例法案の成立に協力するとの感触を得ている、と首相に伝えた。しかし菅首相は「どうせ反古にされる。次の政権も行き詰まる」と頑として応じず、同日の夕刊各紙に「首相、退陣条件固める」との大見出しが躍っているのを指し、仙谷氏に向かって「どういうつもりだ!」と怒鳴りつけた。
 仙谷氏は首相と激しく怒鳴りあった直後、深夜のメールで「私を切ってもらって構わない」と首相に警告した。

 ▽秘密の工作見逃す
 21日夜、菅首相は岡田幹事長に対し、岡田氏が非公式に自民、公明両党との間で合意していた50日間の会期延長を「70日延長」に伸ばすよう指示した。さらに「第3次補正予算は新首相が対応する」との合意事項にも菅首相は応じず、「新体制で」との表現に改めさせた。これが自公両党を一層硬化させた。両党は菅首相が早期の退陣には応じていないことの表れと受け取り、岡田幹事長ら執行部の読み違いに不信感を隠さなかった。
 執行部の面々は亀井静香国民新党代表や北沢俊美防衛相ら菅応援グループの密かな巻き返し工作もしっかりとは把握していなかった。特に亀井氏が自民党の浜田和幸参院議員の離党を口説いている動きも、枝野幸男官房長官がわずかに察知していた程度で、執行部は出し抜かれた。

 ▽驚異の粘りを過小評価
 執行部の面々が読み違えたのはこうした秘密の工作だけではない。長年、野党の論客として鳴らした菅首相の驚異的な粘り、政権の座への執着を過小評価した節がある。6月2日に退陣表明しながら、いまだにその時期を明示しないのがその典型だ。
 同月4日には「そんなに辞めさせたいならおれの首を斧で切るしかないな」としばしばつぶやき、28日の両院議員総会ではエネルギー政策が次の国政選挙の争点になるなどと、公然と次期総選挙にまで踏み込む発言をした。
 自民、公明両党も厄介なジレンマを抱えた。菅首相が退陣の条件として二度も公言した2次補正、再生エネルギー、公債発行の3法案を人質にとり、審議を引き延ばせば延ばすほど、菅首相はなかなか辞めないというジレンマだ。自公が当面は審議入りを拒んでも、国会会期は70日間延長によって8月末まである。
 遅くとも8月中旬までには3法案を成立させ、ポスト菅の後継代表選びを8月後半には決着させておかなければ、ただひたすら菅首相の居座りを許し、国会閉幕後の9月にまで綱引きが続くことになりかねない。(了)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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