すでに田畑光永氏が触れたことだが、別の切り口で一言する。
2013年4月23日の参院予算委における丸山和也議員(自民)への安倍首相の答弁は誤りである。この誤答は世界に安倍晋三の無知蒙昧を知らしめるものである。
「村山談話」に関連して安倍は次のように答えた。「侵略という定義は学会的にも国際的にも定まっていない。国と国との関係でどちらから見るかで違う」(『朝日新聞』、4月23日夕刊)。
「侵略」は国際的に明快に定義されている。国連が定義しているのである。
1974年12月14日に国連総会は「侵略の定義に関する決議」を採択した。決議は、長い前文で侵略の定義を定める背景と理由を述べたあとこう書いている。
「侵略行為が行われた否かという問題は、個々の事件につきそのあらゆる状況に照らして考慮されなければならないが、それにもかかわらずこの問題についての決定のためのガイダンスとして基本的な原則を定めることは望ましいことであると信じて、次の侵略の定義を採択する」。そのうえで第一条から第八条まで詳細な定義がある。ハッキリと「基本的な原則を定めることが望ましい」から「侵略の定義を採択する」と書いているではないか。
第一条のみを引用しておく。
「第一条 侵略とは、国家による他の国家の主権、領土保全もしくは政治的独立に対するまたは国際連合の憲章と両立しないその他の方法による武力の行使であって、この定義に述べられているものをいう」。
国連憲章では「侵略」へ対抗する武力行使は安保理事会による決定が可能である。しかし「侵略」の定義がなかった。そこで1967年の第22回総会に設置された「侵略の定義に関する特別委員会」が、延々7年にわたる審議の末に作成して上記を決議したのである。
現実の外交は国益の対立と妥協、対立と武力衝突の連続である。
安保理事会の力学も人々には周知の事実である。だからといって、「侵略という定義は学会的にも国際的にも定まっていない」などという無知な発言を認めるわけにはいかない。
これに対して与野党の議員、知識人、メディアが反論しないのは知的退廃である。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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