日本国憲法は「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利がある。国は、すべての生活部門について、社会保障および公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という条文がある(25条)。
今日はこの条文の下、新型コロナウイルスと文化芸術にについて考えたい。政治家は全力を挙げてこの条文に沿った行動をしてほしい。今の日本の政権ではすべてが後手後手になっている。PCR検査を怠っている。緊急事態宣言は4月7日発令されたが4月16日に全国が対象に切り替えられた。京都では、芸術文化施設を全面閉鎖し(4/4)、市長が緊急事態を京都にも適用してほしいと国に要望した(4月10日)。100万人当たりの感染者数が全国都道府県で5位であるなど、感染拡大が続く。
▼文化施設軒並み閉館
ところで健康で文化的な生活が今は不可能。私が通っていたスポーツジムも閉鎖された、「文化博物館」も閉鎖された。祇園祭特別展「町衆の情熱」で懸想(山鉾を飾る美術垂れ幕)が見られる、金具飾りが見られると、見に行ったが文博は閉鎖されていた。国立博物館も、新装のローム博物館(元府立博物館)もロームシアターも全部閉鎖されている。
大量感染の元となったことから祇園のライブハウスは軒並み閉鎖、京都コンサートホールの演奏会にも中止だ。
▼祇園祭、巡行中止
例年7月1日から一か月間行われる祇園祭の鉾立て7/10、巡行7/17,7/24の是非が問われていた。山鉾を立てれば人が集まる、山鉾巡行では引手が連なり、周囲約2.5キロに観客が密集する、とあって、今年は巡行を中止することが決められた(4/20発表)、おそらく鉾立てもできないのではないか。
平安時代初期863年(貞観5年)に当時蔓延した疫病(当時わらわやみ、おこりなどと言われたがマラリヤかと思われる)で多くの死者が出たことを悼み、悪霊を退散させるための行事が始まりだったといわれる。やがて豪華絢爛の伝統文化として1000年以上続いてきた、それが中止になるというのは歴史上の大きなアイロニーではないか。
▼SaveOurSoaceハッシュタグ署名
ライブハウスの出演者が先頭に立って進めていた、文化助成を求める署名♯SaveOurSpaceがツイッターであっという間に賛同者30万人をこえたと聞いた。各種のライブ公演、音楽会、演劇文化公演から歌舞伎至るまで舞台が開けられない。博物館、映画館まで閉まった。
映画、演劇の世界では、俳優、音楽家はもとより音響、照明などなど、フリーで働く人々も無収入になる。人々は音楽や演劇を楽しむ機会を失われている。休業資金を出し、歌手、アーティスト、文化関係施設に給付し、生活を保障して、コロナ明けに備えることが重要だ。
休業したお店には200万円、減収世帯に最低10万円~60万円、などの給付がかろうじて決められたが、音楽、映画、ライブハウスなど文化関係への保障は決まっていない。
宮田亮平文化庁長官がメッセージを出した(3/28)だけで、文化、芸術の助成についてついての具体策がない。
▼素早い欧米の文化・芸術助成策、英、仏、伊、米
ヨーロッパでは真っ先に音楽関係、映画、俳優、などへの手厚い保護策がとられたことを紹介したい。
イギリスではすでに2000万ポンド(27億円)ガアート・カウンシルから支出されることが決まっており、その中には芸術文化関連フリーランス、一人当たり2500ポンド、34万円が支給される。いずれも面倒な手続きがなく、即時に振り込まれる。
フランス文化省の緊急支援策は、音楽家、俳優、フリーの文化関連労働者などの収入の穴埋めに10億ユーロ(1200億円)を投じる。文化芸術関係の小規模組織、個人事業者に1500ユーロ~3500ユーロ(18万円~42万円)を支給した。封鎖期間中はこの手当を打ち切らず延長するという。
イタリア政府、では財政困難の中にも関わらす、舞台芸術、映画企業、芸術家、実演家、緊急基金1億3000万ユーロ(156億円)が支出された。文化関係従事者の所得補償もある。
アメリカではブロードウェイが閉まり、ジャズクラブ、レストラン、リンカンセンターも閉鎖だが、芸術団体、仕事のなくなった音楽家、オペラ歌手、ジャズ歌手など休業した文化関係者の休業補償にとりあえず500万ドル(86億円)が用意された。
アメリカの特徴は、大手IT企業、銀行など大手企業の支援です。例えばナイキ。財団や幹部が即座に文化関係、アスリートなどに対し1500万ドル(16億6000万円)を寄付した。
コロナの中にあっても文化、芸術を保護し、終息すればすぐ再開できるようにとの配慮がひつようだ。一日も早く、健康で文化的な生活にもどり、音楽を聞き、演劇を鑑賞し、映画を楽しみ、カラオケも歌える、山鉾巡行も楽しめる日常に戻ることを願うばかりだ。
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〔opinion9682:200425〕