「内閣支持率最低の19%―強まる3月危機」「79%が与野党協議を支持」

 菅直人内閣の支持率が19・9%とついに「危険水域」に入った。ところが、菅首相らがねじれ国会での与野党協議によって危機打開の道を探ろうとしているのに対し、世論調査に応じた有権者の79・8%が「野党も与野党協議に応じるべきだ」と回答し、社会保障と税の一体改革への協議を強く望んでいることが分かった。
 菅直人氏が首相の座にとどまるべきだと思っている有権者は少ないが、野党側も解散・総選挙を主張し続けるより社会保障と税制については民主党政権との協議に入るべきだ、という立場が鮮明になってきたのである。
 小沢一郎元代表の強制起訴の伴う対応については、52・8%が議員辞職を求めた。
 これらの傾向は共同通信社が11、12両日に実施した電話世論調査で明らかになった。
 衆院での2011年度予算案をめぐる審議が始まり、菅内閣が2011年度予算関連法案の審議がヤマ場を迎える年度末(3月末)まで野党側が与野党協議を一切拒否し続ければ、政権そのものが立ち行かなくなる可能性がある。
 菅首相としては14日中にも「小沢切り」の処分を役員会などで決定し、得意の「脱小沢」路線に活路を見出したいところだ。一任されていた岡田幹事長はこれを受けて「裁判が終わるまで党員資格停止」を提案、了承された。しかし世論調査結果を点検する限り有権者は脱小沢を菅政権評価の決め手とは考えておらず、関心の的は社会保障と税の一体改革に絞られようとしている。

▽消費税引き上げ肯定も
 共同通信が行なった11、12両日の世論調査では、菅内閣への支持率は19・9%で、1月中旬に実施した同社の世論調査からわずか1ヶ月で12・3ポイントも下落した。逆に不支持率は前回の53・9%から63・4%に跳ね上がった。
 不支持の理由として最多だったのは「首相に指導力がない」で30・5%に上った。ついで「経済政策に期待が持てない」は27・4%(前回比5・2ポイント増)と多く、与謝野馨・元財務相や藤井裕久・元蔵相らを改造内閣に取り込んだ1月人事に多くの国民があまり期待していないことを示した。
 その半面、社会保障と税の一体改革の与野党協議については、「野党は応じなくてもよい」との回答がわずか13・3%と少なく、一体改革に伴う消費税引き上げについては「どちらかといえば」を含めると賛成が55・9%、反対が41・9%である。適当だと思う消費税率は「8%程度」が47・3%と最も多く、「10%程度」が33・5%、「15%程度」が4・7%だった。

▽自民支持と民主支持の差拡大
 民主党の支持率は前回1月の22・7%から20・9%に下落した。自民党も24・1%から23・7%になったものの、民主と自民の差は1・4ポイントから2・8ポイントに広がった。その他の政党支持率はみんなの党7・6%、公明党3・3%、共産党3・0%、社民党1・5%などである。
 注目されるのは、菅首相がねじれ国会打開の道として期待する与野党協議への支持が予想以上に多いことだ。全体で79・8%に上る与野党協議「支持」を政党別に見ると、民主党で90・9%に上ったほか、自民党支持者の中でも76・8%、公明党64・5%などと政党の指導部が「解散・総選挙」ないしは「菅退陣」を主張し続けているのに、支持層は相当数が協議に応じるよう期待していることだ。
 社会保障の財源となる消費税については、引き上げ賛成が民主党支持層で67・3%、自民党でも57・1%、無党派層で53・6%などを占め、ひところの消費税アレルギーが著しく弱まっていることが分かった。

▽菅の手で解散は無理か
 ひとまとめにすれば、有権者の多くが菅首相と民主党の「指導力の弱さ」を批判している半面、菅首相が再三、訴える与野党協議については幅広く支持しているのだ。
 だが、自民党の谷垣禎一総裁は「解散・総選挙」の主張を棒を呑んだように叫び続け、当初は菅政権に柔軟姿勢をちらつかせていた公明党も、自民党の強硬姿勢に同調している。
 だが、菅首相が民主党の敗北確実と見る総選挙に打って出る可能性は極めて低い。2005年小泉純一郎首相による郵政民営化総選挙で自民党が300議席を上回り、4年後の2009年夏の総選挙では全体が裏返ったように民主党が圧勝し政権交代が実現した。
 近い将来、菅首相が起死回生の解散・総選挙に踏み切れば今度は再び反転して民主党が惨敗するだろうと多くの国民が予想する。

▽恐怖のエジプト独裁崩壊
 2月6日の愛知知事選、名古屋市長選では、出身政党は別として河村たかし名古屋市長、大村秀章愛知県知事が、それぞれ民主党候補や自民党候補を圧倒して勝利した。いまや民主党対自民党による二大政党の対決―政権交代の流れが崩れつつある。
 仮に近い将来、解散・総選挙を断行したところで、民主は大敗するにしても自民が再び圧勝するのかどうか、見通しは難しい。河村氏のような減税派が議席を伸ばしたり、みんなの党などが衆院でも躍進しないとは限らない。
 わずか3週間のデモで、30年間に及ぶ独裁者が吹っ飛んだエジプト。それを先導したチュニジア。さらにエジプトに追随するかもしれない中東諸国。躍進を続ける中国でさえ、一党独裁を続ける限り、エジプトの二の舞を踏まないという「保障」は揺らいだ。
 1年半前、日本に政権交代が実現したと思った途端、民主党政権は鳩山由紀夫から菅直人へと交代し、早くも二人目の政治責任者が苦吟している。(了)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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