「初の所信表明で財政再建打ち出す―亀井代表が閣僚辞任、後任に自見氏」

著者: 瀬戸栄一 せとえいいち : 政治ジャーナリスト
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 菅直人首相は11日の衆院本会議で就任後初の所信表明演説を行い、財政再建のための「税制の抜本改革は不可避」だとして、与野党による消費税引き上げ協議を念頭に「財政健全化検討会議」の設置を提唱した。さらに鳩山前政権の「政治とカネ」などをめぐる混乱を陳謝し、「挫折を乗り越え信頼を回復する」と訴えた。

 一方、会期延長による郵政改革法案の今国会成立を主張し民主党側と対立していた国民新党代表の亀井静香郵政改革担当相は11日未明、閣僚を辞任する意向を明らかにした。民主党が10日、参院選を「6月24日公示―7月11日投開票」のスケジュールで実施する方針を固め、郵政改革法案の今国会処理を先送りし、いったん廃案にして選挙後の臨時国会で成立させるとの方針を国民新党に伝えたのに抗議したものだ。

 亀井代表は閣僚辞任後も連立を離脱せず、郵政改革担当相の後任に自見正三郎幹事長を推した。菅首相は11日午後、亀井氏の要望通り自見氏を後任の郵政改革担当相に任命した。菅首相は発足早々の混乱を早期に収拾し、国民新党の連立離脱を回避することに成功した。しかもウルサ型で肌合いが合わず、政策的にも財政再建と対極にある亀井氏は閣外に去り、菅首相はホッとしたところだ。

▽普天間は日米合意踏まえ解決

 所信表明演説で菅首相は、鳩山退陣の引き金となった普天間飛行場移設問題については「日米合意を踏まえて解決する」と言明、日米同盟を着実に深化させる、と述べた。さらに沖縄の負担軽減に積極的に取り組む姿勢を強調した。

 「真の国民主権の実現」を基本理念とし、内閣の政策課題として、経済・財政・社会保障の一体的立て直し、戦後行政の大掃除、責任感に立脚した外交、安保政策―などを列挙した。財政の危機的状況を改善するため「中期財政フレーム」や財政健全化の道筋を明らかにする「財政運営戦略」を今月中に策定すると述べた。

▽市民運動出身を強調

 演説の冒頭で菅首相は「草の根」の市民運動に取り組んだ経験を披瀝し「市川房枝元参院議員の事務局長としてかかわった経験」から一票の力が政治を変えるとの信念を持ったことを振り返り、サラリーマンの家庭に生まれ3度の落選を経験したことから学んだとして「志を持って努力すればだれでも参加できる政治をつくろうではないか」と呼び掛けた。自民党の最近の歴代首相が過去の大物首相の孫や子どもだったことを暗に批判。加えて前任者の鳩山由紀夫前首相との「違い」をそれとなく打ち出した。

 民主党は来週、14、15の両日、各党代表質問を行い16日の当初会期に閉幕する方針。ただし、自民党など野党の要求を一部取り入れて「1日だけ」延長し、衆参の予算委開会に応じることも持ちかけているが、野党側はもっと大幅な延長を要求している。さらに懸案となっている小沢一郎前幹事長の政倫審出席については「幹事長辞任でけじめをつけた」として応じない方針を決めた。(了)

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