「チェルノブイリ・フクシマ・明日の地球」――明治大学リバティタワーで「原発を考える市民集会」が2月25日、開催された。現代史研究会・ちきゅう座・DAYSJAPAN共催で、第一会場は300人を超す参加者。第二会場を特設してビデオ放映するという盛況だった。
2人の専門家が、リアルな現場報告
広河隆一氏(フォトジャーナリスト)、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が登壇して、現地取材と原子力研究成果の両面から、「原発の恐ろしさ」を鋭く指摘。広河氏はチェルノブイリなどでの貴重な映像をスクリーンに映し出し、「チェルノブイリから学ばなかった日本」と題して、放射線被害の実態について語ったが、福島原発事故対応がいかにズサンだったかを思い知らされた。
小出氏は「原発の真実と嘘――原発は犯罪である」との演題で、原爆製造の端緒となった米国マンハッタン計画から説き起こして、原爆と原発にのめり込んで行った実態を図表や写真を示して分析、〝原子力神話〟の虚構を鋭く追究した。
誰も責任を取らない「原子力村」
「原子力発電は効率の悪い蒸気機関で、その熱効率は約33%。広島原爆で核分裂したウランは800g、長崎原発で核分裂したプルトニウムは1100gだったが、100万kWを発電する原子炉では300万kWの発熱を支えるため毎日3kgを核分裂させる必要がある。広島・長崎原爆3~4発分に相当する核分裂反応を行っている」という。しかも「ウラン資源は化石燃料より遥かに埋蔵量が少ない」そうで、原発は発電コストが安いとのPRはすべて嘘だった。さらに「高速増殖炉実用化」計画は、トラブル続きで破綻。「もんじゅ」に注ぎ込んだ1兆円は全くの無駄ガネとなった。小出氏は舌鋒鋭く、「現在の裁判の相場では1億円の詐欺には1年の実刑だ。1兆円の詐欺をしたら何年の実刑か? 1万年。経産省・原子力委員会など責任者を仮に100人とすればひとり100年の実刑となる」と、〝原子力村〟の面々が誰ひとり責任を取らない無責任社会を痛烈に批判した。同時に〝大人社会〟の問題意識の欠如を謙虚に語り、「原子力を選んだことに責任のない子供たちの放射線被曝対策こそ喫緊の課題だ」と熱っぽく訴えた姿が、聴衆をひときわ感動させた。
甲状腺がんから子供を守る運動を
たまたま「週刊文春」3月1日号に「郡山4歳児と7歳児に『甲状腺がん』の疑い!」と題する〝衝撃スクープ〟が掲載され、多くの参加者の関心を集めており、講演後の質疑で今後の対応策が話し合われた。甲状腺がんの綿密な検診が行われていないようで、山下俊一・福島大副学長の「医学的にあり得ないこと」という追加検診否定発言に、会場から批判の声が上がった。チェルノブイリの甲状腺がんが今なお深刻な問題になっている折、福島原発でも真っ先に医学的対応を急ぐべきではないか。メディアが総力を挙げて取り組み、「子供を放射線被曝から守る運動」を盛り上げてもらいたいと思う。
記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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