「参院選は7月11日投開票の方向―内閣支持61%で民主の大勢、会期延長見送り固める」

著者: 瀬戸栄一 せとえいいち : 政治ジャーナリスト
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 菅直人政権は組閣・党役員人事が世論から予想以上に高く評価されたと判断、この追い風が止まないうちに参院選に臨む決意を固めた。国民新党などが要求する2週間程度の会期延長を振り切り、会期を当初通りの6月16日で打ち切って参院選を「6月24日公示―7月11日投開票」のスケジュールで断行する。その背景には菅直人新内閣への世論の支持が61・5%(共同通信)と予想を超えて高く、参院民主党を中心に「高い支持率によって参院選で単独過半数を取ることも可能になった。この勢いがあるうちに選挙を乗り切りたい」との党内世論の沸騰がある。

 これに正面から反対しているのが亀井静香代表ら国民新党で、今国会を2週間程度延長し、郵政改革法案を成立させた上で7月25日投開票の線で参院選に臨むべきだ、と強く抵抗している。亀井氏は菅政権誕生に際しての民主―国民新党首会談で、菅首相が会期延長による今国会での郵政改革法案を約束したことを挙げ、自見正三郎幹事長は「連立離脱」の脅しをかけながら今国会成立を迫った。

 10日の午前から午後にかけて、民主党の枝野幸男幹事長と国民新党の自見幹事長が、仙石官房長官が亀井代表とそれぞれ会談。民主党側は「今国会でできるかどうかはともかく、早期成立を期すとの連立合意を誠実に履行したい」(仙石氏)として、民主党内が会期延長なしで固まりつつある状況を説明した。亀井氏はじめ国民新党は「あくまで今国会成立」を繰り返し、連立離脱さえほのめかした。

▽悲観から楽観へ

 民主党内の大勢が「7月11日投開票」で固まったのは、何よりも鳩山前内閣で19・1%にまで落ち込んだ内閣支持率が6月2日の鳩山首相退陣表明から同8日の組閣までのわずか1週間で61・5%に急上昇したことだ。鳩山―小沢一郎体制で参院選に突入すれば民主党の惨敗は確実視されていた。

 ところが、鳩山→菅への切り替えと大胆な「脱小沢人事」の断行によって、暗いムードの民主党が一気に「単独過半数も」というバラ色の楽観ムードに変わった。国民新党の連立離脱は困るが、どん底転落かと思われた民主党がマジックのように息を吹き返したのだ。

▽脈打つ政権交代への期待

 政党支持率は前回調査(4、5両日)の36・1%からわずか数日後の今回(8、9日)は43・8%と急上昇した。これに対し自民党は前回20・8%→今回20・0%に低迷している。みんなの党は前回8・3%→今回7・4%と明らかに「収縮傾向」が見え始めた。

 さらに比例代表の投票先についても、民主党が前回32・6%→今回43・8%、自民党は前回23・4%→今回21・6%と低下傾向を示している。これら二点と内閣支持率上昇が示しているのは、昨年9月の政権交代への有権者の期待がまだまだ脈打っていることだ。鳩山―小沢ラインには見切りをつけたが、民主党政権そのものへの期待感は続いていることを示している。

▽脱小沢人事を80%が評価

 さらに世論調査は「脱小沢人事」の評価について「評価する」は80・0%にのぼり、菅首相が訴える財政再建重視についても「評価する」が78・5%、「評価しない」は14・4%にとどまった。これを反映して消費税率引き上げについても「賛成」が19・6%、「どちらかといえば賛成」は38・1%と引き上げ肯定論が57・7%に及んでいる。

▽単独過半数期待が急上昇

 参院選の結果についても「民主党単独過半数」が前回26・5%→今回33・9%に上昇。民主党と国民新党の連立による過半数のほうが、前回28・7%→今回27・8%とやや減ったことも注目される。

 もちろん、世論調査がすべて的中するわけでもなければ、7月11日までにはまだ1ヶ月間ある。その間に予期せざる異変が起きないとも限らない。ただ一昨年9月に政権の座に就いた麻生太郎自民党首相が、リーマン・ショックも手伝って当初想定していた早期解散のタイミングを逸し、結果的に昨年夏まで解散―総選挙を遅らせた結果、自民党は惨敗と政権交代に追い込まれた。この経過を、菅新首相は「参考」にするであろうことは間違いない。(了)

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