「国会事故調」に、核心に迫る報告を期待

著者: 池田龍夫 いけだたつお : 毎日新聞OB
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国会の原子力調査委員会(黒川清委員長)は政府・東電関係者を招いて証言を求めてきたが、6月8日には清水正孝・前東電社長から事情聴取を行う。既に菅直人・前首相、勝俣恒久・東電会長らの聴取を終えているので、8日以降から最終報告書の作成に移る段取りのようだ。

「国会事故調」の発足は昨年12月8日で、「政府事故調」「民間事故調」に先行されたが、政府から独立した機関と位置づけられ、国勢調査権も付与されている。政府機関をはじめ地方公共団体、原子力事業者らに証言を求め、関係資料提出も要求できる。

〝日本の病根〟を洗い出せ

公開の委員会は先月末まで17回開かれたが、黒川委員長が〝菅証言〟後の記者会見で、今後目指すべきことに関し述べた言葉が印象に残る。

「3.・11は、日本の病根を照らし出した問題だと認識。今回の議論を通じて、非常時における政府、行政の在り方について真剣に考えていかなければならないことが明らかになった。われわれ国会事故調は、政府から独立して、独自に調査を行い、最終報告書において事故の原因解明につなげる報告を6月に行うよう引き続き努力して参りたい」――昨年3月11日から15日の「政府・東電『統合対策本部』設置」までの大混乱は、狂気の沙汰だった。その間に原子炉のベントや海水注入が遅れ、核溶融(メルトダウン)に至った経過が、聴取によって明確に裏付けられた。ただ、「東電の現場撤退問題」については、1年2カ月を経た今でも両者の意見が食い違っている。事故調各委員からの尋問が繰り返されたが、「記憶に無い」との答弁が多く、押し問答の印象を受けた。

現場で苦労した人のナマ証言を聴きたい

事故当時、東電前線指揮官の吉田昌郎所長は病気療養中だが、出張尋問ができないのだろうか。東電幹部にいくら聞いても、企業防衛的な返事しか返ってこないからだ。また、海水注入に難色を示したと伝えられる武黒一郎・東電フェローについては3月28日に意見を聴いたようだが、再聴取は必要ないのだろうか。また菅氏が大学同級生らを多数「内閣参与」に登用したことで、情報混乱に拍車をかけたと指摘されているが、関係者に当たっただろうか。非公式で接触しているかもしれないが、それらの情報も公開してもらいたい。

〝原子力ムラ〟にもメスを

黒川委員長が「憲政史上初の重責」と強調し、精力的に努力されている姿勢には敬服する。ところが、参議院会館講堂で開いている事故調会合への国会議員の参加が極めて少ないのには腹が立つ。菅氏証言の時でも10人足らず。インターネット中継ではなく、現場に来て、ナマのやり取りを聞くべきではないか。

さらに事故調への要望だが、「原子力ムラ」といわれる原子力専門家集団にもメスを入れ、徹底検証すべきである。斑目春樹・原子力安全委員長、近藤駿介・原子力委員長の責任は重大であり、見逃すわけにはいかない。

強固な危機管理機構を目指して、日本国民はもとより世界が事故調の大胆な報告書を期待している。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1962:120605〕