「国家秘密売り渡し法案」は、廃案に

「特定秘密保護法案」を一読して、一般的な行政関連の法令と相違して受ける印象は、この法案は、一体、誰が立案したのだろう、と暗然としてしまうことです。 そして、法案の危険性云々の前に、抜け穴だらけの条文を観ていますと、各行政庁内で法令立案の業務に就いている官僚ならば、決してしないであろう法令実務の基礎を無視していることがあります。

まず、これだけ国民の権利を制限する治安立法であるならば、そして、第21条に定めるように「この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない。」と規定するならば、この法案に定める条項に出る用語を冒頭で厳格に規定するのが通常一般的なのです。

ところが、法案では、第2条で「行政機関」の「定義」を示すのみであり、重要な用語については、各条項に出る度に簡単に定義するのみで、まるで、各用語の拡張解釈を許す結果に繋がるものとなっているのが特徴です。

肝心の「特定秘密」に関しては、その指定基準、秘密指定の範囲、秘密指定の審査基準、管理主体の秘密指定に掛かる手続、等々について全く抜けているのです。 行政機関の長が「秘密」と云えば「秘密」になるのです。 そんな馬鹿な。

この法案と同じく「この法律及びこの法律の規定に基づく条例の適用に当たっては、国民の政治活動の自由その他国民の基本的人権を不当に侵害しないように留意しなければならない。」と附帯条項(第29条)がついています「屋外広告物法」では、第2条で規制対象である「屋外広告物」と「屋外広告業」の定義規定を置いていますので比較しますと歴然です。

立法技術的には、拡張解釈に依って立法当初は予期しなかった事例に法令を適用することを防ぐことは出来るのですが、この法案は、意図してそうした予防措置をしなかったのではないか、との疑いを抱いてしまいます。

根本的な疑問点は、国家秘密の統制と監督に携わる者が、法案上では、各行政庁の長のみであることです。 行政庁の長を指揮・監督し国家秘密の統括をする筈の長の名が何処にも出てこないのです。 そんな馬鹿な。

日本国の国家秘密に関わる事務は、各省庁が勝手にするのでしょうか。 一体、何が秘密で、どれだけ秘密があるのか総理大臣も知らないようになりますけれど、それで良いのでしょうか。

その上に、各行政庁と何等かの契約をしている企業体(「適合事業者」と定められています)へは、国家秘密がダダ洩れになっても、管理監督をどうするのかも一切規定されていませんけれども、一体どうする積りなのですか。 普通の法令ならば、不測の事態になれば、管理・監督の任にある行政庁の調査等を経て行政処分の定めを置くのですけれども、何もしない積りとしか思えません。 そんな馬鹿な。 国民は、場合に依れば重罪に問われるのに、国家秘密ダダ洩れにした企業は御咎めが無いのですか。 尤も、グラマンやロッキード等の米系大企業はどうしようもありませんけれども。

色々云っても、国会議席数では負けるのですが、「日本を取り戻す」のが唯の看板ではないのでしたら、法案の原案が英文らしき「国家秘密売り渡し法案」は廃案にして頂きたいものです。

法律実務が御専門の弁護士は、これ等の疑問点を法案そのものから抽出されておられますので御参照を。

http://moriyama-law.cocolog-nifty.com/machiben/2013/11/post-426e.html

特定秘密保護法による恐るべき国家改造 特定秘密保護法の正体はアメリカとグローバル企業による遠隔操作法だった! 街の弁護士日記 2013年11月30日 (土)