「好戦的右翼」への対立軸はあるのか -2012年総選挙の戦況(2)-   

著者: 半澤健市 はんざわけんいち : 元金融機関勤務
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《合従連衡がどうして悪いのか》 
メディアの政治報道は人間関係の動きに終始している。
対立軸や政策ばどうでもよいのである。誰と誰がくっついた、離れたというのである。小沢がどうの、野田がどうの、石原がどうの、橋下がどうの、嘉田(かだ)がどうの、というのである。政治報道ではなく政治家報道である。政治部ではなくて永田町部、政治家部である。それが、こと選挙になると途端に同じ現象を評して「野合」、「原則なき連合」などと批判する。にわかに規範的・倫理的なポースをとるのである。あるいはシニカルな姿勢を見せるのである。これはダブル・スタンダードである。そういうメディアに対して政治家はなぜ反論しないのか。野合で何が悪いのか。原理の変更で何が悪いのかと。権力の奪取のための「野合」がなぜ悪いのかと。

マックス・ウェーバーはこう言っている。
「政治とは、国家相互間であれ、あるいは国家の枠の中で、つまり国家に含まれた人間集団相互の間で行われる場合であれ、要するに権力の分け前にあずかり、権力の配分関係に影響を及ぼそうとする努力である」(『職業としての政治』)。至言である。

《「好戦的右翼」を認めるか否か》 
私はメディアのありようを肯定しているのではない。有権者は、くっついたり離れたりするの話を面白がって読めばいいのである。そのかわり、原理・原則、対立軸が何かを、よく見て、よく読んで、よく考えて判定すれば良いのである。私は、「対立軸のどちらか」を定めるのが唯一の判断基準だと思っている。

来夏までの総選挙・都知事選・参院選の対立軸は、「好戦的右翼を認めるか否か」である。
選択肢となる政治集団の多くは「好戦的右翼」である。安倍・石破の自民党、石原・橋下の日本維新がハッキリとそうである。野田・前原の民主党も、オスプレーと強姦米兵にノーと言えないからそうである。「好戦的」が愛国的とは限らない。「右翼」が愛国者と限らない。それどころか逆の場合も多いのだ。大日本帝国の敗北に帰結した1930年代の日本歴史は、「好戦的右翼」が勢力を拡大した歴史である。
ならば「好戦的右翼」の対極には誰がいるのか。よくよく探さないと見えないのである。

《「好戦的右翼」への対立軸はあるのか》 
対立軸は多いが、複数を挙げるのは、マスメディアが優位な現代という精神退化の時代にマッチしない。飛躍を恐れず私は「原発」の是非を唯一の対立軸としたい。ただし政治家集団のいう「脱原発」が本物かどうか。その判定には細心の注意を払わねばならない。
私のように「原発にノー」が唯一の対立軸と考えれば、政党選択の意味は薄くなる。その限りで、個人の顔で選ぶという当ブログ当主田畑氏の考え―氏と私の対立軸認識が共通かどうかは別としても―と通底する。私のリストには、河野太郎、菅直人、嘉田由紀子、福島瑞穂、志位和夫、鈴木宗男、は同一線上に並ぶことになる。

原発の危険についてかつての同僚と私の意見は異なる。高度成長の尖兵を自任した彼らは「国際競争力」と「現実主義」の観点から私の原発廃止論を否定する。
しかし私は「被害妄想」という批判に全くたじろがない。我々の知識と精神構造は、「大本営発表」を信じた頃と同じだと思っているからである。元「尖兵」たちは権力によって完全に洗脳されていると思っているからである。

《あらためて小出裕章の警告を聴く》 
2012年12月1日に送信された「愛川欣也パックインニュース」という討論番組(「朝日ニュースター」番組の後身で、現在は「愛川企画」が有料でネット配信)に30分ほど生出演して語った小出裕章の発言に私は改めて驚愕した。東電福島原発の現状が如何に危険であるかを小出は語った。それは観ないとわからない。小出の証言は、他に長短さまざまあり、ネットで無料でみられる。読者は虚心に彼の言葉を聴いてほしい。我々は、「原発ムラ」の思想に汚染された脳天気の中にあるのである。

メディアは対立軸をアイマイにした報道を続けるであろう。原発と並んで最も核心的なテーマである「経済政策」―格差の拡大か是正か―と、「対米外交」―憲法「改正」で国防軍を米軍傭兵にすることの是非―を隠しまくるだろう。親中派の西園寺一晃が、次期「安倍首相」が靖国参拝をしたら、日中関係は決定的破局に至るだろうと言うのを、私はある会合で最近聞いた。「戦争か平和か」の瀬戸際という表現を、私は決して誇張ではないと思っている。一連の選挙は、「戦争か平和か」―少なくとも「決定的対立か平和か」―を決する重い選挙である。

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〔eye2107:1201205〕