「安保3文書」の閣議決定への抗議声明相次ぐ 市民団体、平和団体、労働団体などから

 岸田政権は12月16日、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」など安保関連3文書を閣議決定したが、これに対する抗議・反対声明や閣議決定撤回要求声明が16日以降、相次いでいる。共通しているのは、3文書に明記された「敵基地攻撃能力の保有」や「防衛費大幅増」が、憲法と戦後日本の国是である「専守防衛」を破壊しかねない、という強い危機感だ。国民的な議論を経ずして政府が一方的に戦後日本の防衛政策の大転換に踏み切ったことにも強い反発を示す。

 敵基地攻撃能力の保有は「平和国家」日本を破壊
 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(市民連合)は16日、「財源も実効性も民主的正当性もない。違憲の安保政策の大転換は許されない。『2023年安保』のたたかいへ」と題する声明を発表した。
 そこには、こう書かれている。
 「岸田内閣は『敵基地攻撃能力』の保有やそのための軍事費大幅増額などを柱とした『安保関連3文書』を閣議決定しました。これは、明白な憲法九条および国際法違反となる先制攻撃の準備に日本が着手する可能性をはらみ、また一貫して『専守防衛』の範囲内で抑制的に安全保障政策を組み立ててきた戦後日本の『平和国家』としてのあり方を根本的に破壊するものであり、市民連合としてもかねてから反対してきたことです。私たちは、これを断じて認めることはできません」
 「政府発表以外の踏み込んだ報道がほとんどないなか、国会で議論されることもなく、その財源も実効性も全く明らかにされないまま、一見穏やかそうに見える岸田首相の手によって、更なる憲法破壊が『静かに』なされていることの恐ろしさも感じざるを得ません」
 「安保関連3文書が決定されたからと言っても、閣議決定で決めたものは閣議決定で覆すことができます。私たち主権者が大きな声をあげて、予算を組ませなければ、計画を頓挫させられます」

 防衛費倍増は国民生活を圧迫
 フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)も16日、「『安保3文書』の閣議決定に抗議し、憲法理念の実現をめざす声明」を発表した。
 そこには、こうある。
 「いわゆる『安保3文書『の改定が閣議で決定された。国会での審議、採決もなく日本の安全保障・防衛政策の根幹を、内閣の裁量で一方的に決めたことに、まず抗議する」
「『安保3文書』改定は、スタンドオフミサイルなどの攻撃型兵器を保有し、防衛費をGDP 比2%に倍増し、今後は5年で総額43兆円もの防衛費をつぎ込むとしている。ことに『敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有は、『専守防衛』を大きく逸脱し、これまでの政府方針の大転換であり決して許されない。攻撃型兵器の配備は、周辺諸国の脅威として東アジアの軍事的緊張を高めることに繋がる。『専守防衛』は相手国への『安全の供与』だが、『敵基地攻撃能力保有』は『脅威の供与』である。憲法9条の平和主義が何をめざし、何をもたらしてきたかを、今まさに考えなくてはならない」
 「日本の市民社会は、相対的貧困率の高さに象徴される貧困と格差の問題、コロナ禍での失業や物価高騰に苦しんでいる。そのような市民生活の困窮に目を向けず、莫大な予算を防衛費に投入し、国の安全保障が国民の責任かのような発言を行い、所得税増、あろうことか東日本大震災の復興特別所得税にまで手をつけようとしている。これによって国民生活が圧迫されるのは火を見るより明らかだ。東アジアに軍事的緊張を高める安保3文書の改定を見送り、増税を方針を撤回することを、平和フォーラムは強く要求する。『戦争をする国』へと軍拡に走り日本の安全保障政策を変容させるのではなく、粘り強い対話と交流に力を入れ、東アジア諸国との関係改善を図ることが先決だ」

 周辺諸国との平和構築が先決
 これも16日に発表された声明だが、沖縄県憲法普及協議会と沖縄人権協会が連名で出した「敵基地攻撃能力保有に突き進む安保関連3文書の閣議決定に抗議する声明」には、こんな記述がある。
 「今回の安保関連文書は、周辺諸国の脅威を口実に軍事的対抗措置強化一辺倒のものとなっているが、その前に議論すべきは、ロシア、北朝鮮、中国という周辺諸国との間でどのような平和を構築していくのかという外交や経済、文化、人的交流を含む総合的な戦略である」
 「国民の中では、防衛力増強について賛成する意見が急増しているが、これは漠然とした不安から生まれているに過ぎない。今や軍事予算が世界9位ともなっている日本に、総合的な安全保障戦略の中で果たしてどのような軍事的能力が必要なのかという議論がまったくなされないまま、まさしく『気分』によってこのような傾向が生じていることは極めて危険というほかない。よって、わたくしたちは、閣議決定について政府に対して抗議し、3文書を撤回することを求める」

 このほか、16日以降、全国労働組合総連合、日本教職員組合、全日本教職員組合、日本原水爆被害者団体協議会、日本平和委員会、全日本民主医療機関連合会、新日本婦人の会、自由法曹団などが同様の声明や談話を発表している。

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