本日(5月10日)の朝日新聞デジタルに、「検察庁法改正に抗議、ツイッターで470万超 著名人も 」という記事。20時18分の掲載である。
検察官の定年を65歳に引き上げる法改正案を認めていいのか――。作家や漫画家、俳優、音楽家らが10日未明、疑義を唱える声をツイッター上で次々と上げた。「#(ハッシュタグ)検察庁法改正案に抗議します」の投稿が相次ぎ、その数は午前8時過ぎには約150万件、同10時過ぎには200万件、午後8時には470万件を超えた。
NHKオンライン(5月10日16時59分)では、この数が380万件を超えたと報じられている。
検察官の定年延長を可能にする検察庁法の改正案について、ツイッター上では、9日夜から10日にかけて、俳優や演出家などの著名人による抗議の投稿が相次ぎ、同じハッシュタグをつけた投稿が10日午後3時半の時点で380万件を超えるなど、広がりを見せています。
朝日の記事を抜粋する。
「もうこれ以上、保身のために都合良く法律も政治もねじ曲げないで下さい。この国を壊さないで下さい」。俳優の井浦新さんが10日朝に投稿すると、「いいね」が1万(後には3万)件以上ついた。
法改正案への抗議として、ハッシュタグ(#検察庁法改正案に抗議します)で賛意を示したのは、俳優の浅野忠信さん、秋元才加さん、芸人の大久保佳代子さん、漫画家のしりあがり寿さん、羽海野チカさんら。小泉今日子さん本人によるものとみられる投稿もあった。
9日午後に10万件程度だった投稿数は、10日午前3時ごろに100万件を突破。「三権のバランスをくずすこと、国を『国民』ではなく『自ら』の都合のよい形にするのはやめてほしいです」という声があがり、著名人に対しては「勇気あるツイートに感謝します」「とっても頼もしい」という賛意も寄せられた。
ネットメディア・言論に詳しいジャーナリスト津田大介さんは、驚きを隠さない。
「新型コロナウイルスへの政府の対応は緩慢な一方、『不要不急』にみえる定年延長の法改正は迅速に進む。一般に馴染みがなく、わかりにくい問題だったが、政府に注目が集まる今だからこそ気づかれることになった」と読み解く。
内閣の判断で検察幹部の「役職定年」を延長できるようにする検察庁法改正案の委員会審議は今月8日、与党が強行する形で始まった。黒川弘務・東京高検検事長(63)の定年延長問題を追及する野党側は、森雅子法相の出席が必須などと求めているが、与党は応じず、与党は週明けの委員会採決をめざすとみられる。
安倍内閣は、1月末に政権に近いとされる黒川氏の定年延長を閣議決定。検察トップの検事総長に就ける道を開くことになったため、「検察の私物化」との批判の声が上がっていた。
これは、凄いことになってきた。山が動くという感がある。この法案は、単なる検察官の定年延長法案ではない。この法案のねらいは、官邸による官邸のための検察人事への介入である。人事への介入を通じて政権に対する検察の牙を抜くことにある。この法案は、官邸が幹部検察官を選り好みして、政権に擦り寄るヒラメ検察官には定年を延長し、硬骨漢には定年延長の途を閉ざそうというのだ。こうして、検事総長(全国の検察官のトップ)や検事長(全国8高検のトップ)の人事を、あわよくば検事正(各地検のトップ)までの全て官邸寄りの人物で固めてしまおうという狙いが見え見えである。
アベ政権とは、後ろ暗い政権である。政治を私物化し、行政を私物化してきた。しかも、その手法は嘘とごまかしで固められたもの。公文書の隠匿・廃棄・改竄はお手のもの。モリ・カケ・サクラでは、内閣の関係者多数が刑事告発されている。安倍晋三本人も告発対象となっている。
硬骨な検察リーダーが決意を固めれば、政権トップに対する刑事訴追がなされて、たちまち政権は崩壊の危機に陥ることになる。今はそのような事態なのだ。安倍晋三はマクラを高くして、眠ることができない。
かつて、検察のトップは、「巨悪を眠らせない」と名言を吐いている。そんな検察では、安倍は困るのだ。アベはぐっすり眠りたい。
そこで、アベは考えた。黒川弘務東京高検検事長を検事総長にしよう。黒川こそは、安倍政権の守護神と異名をとった検察官。かつて、彼が法務事務次官に就任したときも、官邸のゴリ押しだったと報道されている。そのための布石として、定年となった黒川の定年を延長した。今年の8月に定年退職する稲田検事総長のあとがまに据える含み。
検事の定年の定めは検察庁法に記載してあるが、定年延長の定めはない。そこで、アクロバティックに国家公務員法の規定を使った。まったく前例のないことである。この露骨な検察幹部人事介入強行に対する国民の非難が囂囂と巻きおこった。違法だ、脱法行為だ。官邸による検察を支配を許すな。
そこで、アベはまたまた考えた。違法・脱法だというのなら、法律を変えてしまえ。そうすれば問題ないじゃないか。自公で十分な議席をもっている。維新まで、アベに擦り寄っているいま、国会は思いのままだ。今のうちに、できることはやってしまえ。
これが、火事場のどさくさに紛れての検察人事コントロール法案の正体なのだ。
(2020年5月10日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2020.5.10より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=14860
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion9738:200511〕