国連総会(193カ国)は10月26日、米国による対キューバ経済封鎖の解除を求める決議案の採択を行ったが、米国が初めてこれに反対せず、棄権した。この結果、決議案は賛成191、反対ゼロ、棄権2(米国とイスラエル)で、25年連続で採択された。昨年もこの決議案が採択されたが、投票の内訳は賛成191、反対2(米国とイスラエル)、棄権ゼロだったから、米国による対キューバ経済封鎖の解除を求める決議案への反対はついになくなったことになる。まさに画期的なことで、キューバの経済封鎖問題に関心をもってきた人たちには朗報と言える。
キューバでフィデル・カストロ氏らが革命政権を樹立したのは1959年である。米国政府はこれを崩壊させようとして1962年から、キューバに対する全面的な経済封鎖を実施してきた。それは、米国の企業に対しキューバとの貿易、金融を禁止するほか、キューバに寄港した船舶の米国への寄港を禁止するなどとするもので、世界的に他に例を見ない厳しい内容とされる。
こうした措置はキューバ経済に深刻な打撃を与え、、キューバ政府は「不当で犯罪的な経済封鎖によってキューバがこれまでに受けた損害は1258億7300万ドルにのぼる。こうした経済封鎖は、キューバ国民の日常生活に深刻な影響を与えてきた」と主張してきた。
このため、キューバとしては1992年から毎年、国連総会に経済封鎖の解除を求める決議案を提出し続けてきた。年ごとにキューバの主張に賛同する国が増え、25年目にして「反対なし」にこぎつけたわけである。
10月28日付「しんぶん赤旗」のニューヨーク電によれば、国連総会で決議案採択にあたり米国のパワー国連大使は「経済封鎖はキューバ政府でなく米国を孤立させた」と、外交的な誤りを認めた。米国の対キューバ外交の敗北と言っていいだろう。これに対し、キューバのロドリゲス外相は、米国の棄権を「両国の関係改善にとって積極的な一歩だ」と歓迎し、経済封鎖の全面解除を求めた。
米国の「棄権」の背景に、米国が昨年7月にキューバと54年ぶりに国交を回復したという事実があったのは言うまでもない。
ともあれ、キューバ側は、国交正常化には米国による経済封鎖の全面解除が不可欠、との態度を崩していない。米国のオバマ政権も経済封鎖を解除したい意向だが、経済封鎖の解除には米議会の承認が必要だ。が、米議会は、経済封鎖の解除に反対する共和党が多数を占めており、いまのところ、経済封鎖の全面解除がいつになるか見極めがたいというのが現状である。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6334:161102〕