川柳こそは、庶民の文芸である。句形以外になんの作法もお約束もない。「俳句はかく解しかく味わう」(虚子)という著作はあっても、「川柳はかく解しかく味わう」はない。誰もが、なんの制約もなく自由に作れる。自由に解釈すればよい。時流に迎合の句も川柳ではあるが、庶民の文芸であるからには反骨の精神あってこその川柳。
朝日川柳欄は、時事ネタに強い。ここ数日のアベ・トランプ会談ネタ。さすがである。「得々と解説するは野暮と知り」であるので、コメントはやめて、同工異曲の一句を付けてみた。
まず確認あなた狸でぼく狐(宮城県 猪又義記)
「まず敬意虎に尾を振るキツネかな」
ハウアーユーそんな程度のことでした(神奈川県 吉井信之)
「ハウアーユーそんな程度に公費出し」
さまでして地球の裏に駆けつける(宮城県 河村麦丸)
「遺伝子に参勤交代朝貢癖」
駆けつけて警護するんだTPP(東京都 三神直)
「かいもなく煙と消えそなTPP」
何となく気が合いそうに見え怖し(埼玉県 忍足ミツ子)
「差別と排外の価値観を同じくし」
この二人強き昔を恋しがり(神奈川県 大坪智)
「強がるは弱き本性隠すため」
なお、駆けつけ警護ネタでは。
武器使用 相手も武器を使用する(東京都 後藤克好)
「武器使用血も流れます死にもする」
操りの案山子(かかし)が似合う稲田かな(神奈川県 高山哲夫)
「つけマツゲみだれ髪異様な閲兵式」
毎日の万能川柳には、時事ネタが少ない。それでも、最近はアベネタが結構多くなっている。こちらも結構ぴりっと辛い。最近の数句。
投書欄見てたら誤字か安倍総統 神戸 酒みちる
「さもあらん立法府の長だもの」
あの人は話が長く語彙不足 宝塚 忠公
「英霊の御霊に捧ぐ誠なり」
米英も政治家てのは変な人 倉敷 中路修平
「変な人政権握って迷惑人」
能力はないが権力ある不思議 大阪 佐伯弘史
「無能者に権力与える民主主義」
官邸にとっちゃ騒音民の声 神奈川 荒川淳
「トランプタワーの二人防音でハーワーユー」
総裁の任期延長やな予感 町田 岡良
「まず憲法の延長確認せい」
戦争を心配してる万柳欄 龍ケ崎 おまめ
「万柳欄?戦争?心配?わしゃ知らん」
国民の皆さんという大雑把 浜松 よんぼ
「皆さんにいつも私は員数外」
自治会長まずは組閣をすると云う 東京 小把瑠都
「クラス会自治会並みのアベ政権」
ついでに、あと幾つか。
「川柳子愚かな総理で秀句詠み」
「アベ総理毎日時事ネタ提供し」なのである。
しかし、川柳子には言っておきたい。
「よいネタと煽るべからずアベ暴走」
さらにおまけ。
「トランプの娘と婿は知る秘密」
「日本人総理と通訳だけが知り」
「アメリカはファミリービジネスカントリー」
「新王朝発足北朝鮮と合衆国」
最後に今日にちなんだ一句。
「立憲主義の月命日や19日」である。
(2016年11月19日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2016.11.19より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=7721
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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