「建国記念の日」だった2月11日、祝日を振り返る

 窓を開けると、前夜からの雪は止み、朝の陽ざしがまぶしかった。2月11日は何の日だっけ、三連休の初日というが。

「建国記念の日」だったのだが、近頃の祝日は、その由来も、だんだん訳がわからなくなって来た。天皇の代替わりの2019年には、天皇誕生日というものがなかったのは、私としてはすっきりしたものの、代替わり報道のものものしさに、辟易としたし、元号と西暦の換算の混乱はいまでも続く。昨年の東京オリンピックの年は、カレンダーの山の日、海の日、スポーツの日は、オリンピック日程に合わせ、移動した。

 そもそも、敗戦後の祝日法は、1948年7月に制定され、その当時は、元日(1月1日)、成人の日(1月15日)、春分の日(春分日)、天皇誕生日(4月29日)、憲法記念日(5月3日)、こどもの日(5月5日)、秋分の日(秋分日)、文化の日(11月3日)、勤労感謝の日(11月23日)だった。この九つの日であった。私の小学校からの学生時代のすべては、この祝日しかなかった。大学生になって、文化の日はかつての明治節、明治天皇の誕生日、勤労感謝の日は新嘗祭、春分の日は春季皇霊祭、秋分の日は秋季皇霊祭であったことを知った。社会人になって、退職するまで、土曜日は出勤日だった。

 いわゆる紀元節復活の動きは、占領軍か去って始動し、9回も国会に提出されながら、成立することはなかった。1965年、佐藤栄作首相は、政府は、2月11日を建国記念日とする法案を提出すると表明、神話にもとづく神武天皇の即位由来の「紀元節」「建国記念日」と名付けることを避け、「建国記念の日」を設けるという祝日法改正法案が、1966年6月25日成立してしまった。同法改正では、敬老の日の9月15日、体育の日の10月10日を新設するが「建国記念の日」だけは、何月何日にするのかは、政令で定めるとしたあいまいな形であった。総理府に設置した「建国記念日審議会」は9回の会議、5回の公聴会、世論調査を経て、9人の審議委員中7人の賛成多数で「2月11日」を答申、ただちに1966年12月9日の政令で、2月11日が「建国記念の日」となったという経緯がある。 敬老の日や体育の日をセットにして祝日、休日を増やすという世論操作が功を奏したのではなかったか。ちなみに、その審議会メンバーをみると、いかにも政府のシナリオ通り、出来レースの感が強いのは、現在も変わっていないのではないか。
 ちなみに、審議会の会長:菅原通濟、会長代理:吉村正、桶谷繁雄、榊原仟、田邊繁子、舟橋聖一、松下正壽各委員が2月11日に賛成。反対の阿部源一(東洋大学教授、経済学専攻)は、祝日とするのは望ましくない、強いて挙げるなら1月1日とする意見、奥田東(京都大学総長、農学専攻)は、人間社会でなく国土に重きをおくべきで、立春の日がよいとする意見であった。

 1973年からは、祝日と日曜が重なると、振替休日制度が導入され、休日は増えた。また、労働時間の短縮の流れの中で、まず、1992年4月から国家公務員の週休2日制が導入され、国公立学校においては、1992年から月一の土曜休みが始まり、完全に週休2日になったには2002年4月からであった。

 2000年代に入ると、これまで月日が固定していた祝日を移動することで、日曜日・月曜日の連休が増える仕組みが始まった。

成人の日:1948年から1月15日  ⇒ 2000年から1月第2月曜

体育の日:1966年から10月10日  ⇒ 2000年から10月第2月曜

            (2020年からスポーツの日)

海の日: 1996年から7月20日  ⇒ 2001年から7月第3日曜

敬老の日:1966年から9月15日  ⇒ 2003年から9月第3日曜

 さらに、2007年から5月4日の「みどりの日」、2016年から8月11日の「山の日」を新設して、5月ゴールデンウイークの3連休の確保、8月のお盆休みのスタートを早めた。もちろん、祝日、休日が増えることは悪いことではないが、まずその恩恵に浴することできるのは、公務員や学校、大手企業の社員たちではないか。その一方、出勤日の残業、待ち帰り残業が増えたりすることもある。そもそも暦通りに休めない職種や中小・零細企業の労働者がいる。正規労働者の休日を確保するために非正規労働者で補完、夜間労働や長時間労働を非正規のシフト制でカバーする事業も増え、利用者や経営者の利便性や効率性と裏腹に、労働環境の格差はますます広がっていくのが現実ではないのか。

 祝日・休日とは、縁遠くなった身ではあるが、そんなことを考えた「祝日」ではあった。
初出:「内野光子のブログ」2022.2.12より許可を得て転載
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