「憲法は戦後最大の危機」と護憲団体が統一集会へ -5月3日の憲法記念日に-

著者: 岩垂 弘 いわだれひろし : ジャーナリスト
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 「平和といのちと人権を! 5・3憲法集会」と銘打った集会が、憲法記念日の5月3日、横浜市のみなとみらい地区の臨港パークで開かれる。主催は「平和といのちと人権を! 5・3憲法集会実行委員会」。これには、「憲法擁護・改憲反対」「戦争立法反対」「脱原発」「特定秘密保護法廃止」などを掲げて活動する団体・グループなど約20団体が参加・賛同しており、憲法記念日における護憲の催しとしてはかつてない広がりをもつものとなりそうだ。

 これまで、憲法記念日には、憲法会議など共産党系団体や市民団体でつくる「憲法集会実行委員会」と、旧総評系の「フォーラム平和・人権・環境」が別々に集会を開いてきた。が、安倍政権が昨年7月に憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を認めるととともに他国軍への後方支援を拡大することを閣議決定。その後、今年に入って自民、公明両党が自衛隊や国連平和維持活動(PKO)に関わる新たな安全保障法制の基本方針について合意し、これを受けて安倍政権はこの5月中旬にも関連法案を国会に提出する構えだ。安倍政権はまた、沖縄県民の総意を押し切って名護市辺野古で新しい米軍飛行場の建設を進める。

 加速するこうした一連の動きに、「憲法集会実行委員会」、「フォーラム平和・人権・環境」とも「憲法が戦後最大の危機にある」と危機感を深め、安倍政権に立ち向かうために共同の集会を開催することで一致し、新たな「平和といのちと人権を! 5・3憲法集会実行委員会」を結成した。集会呼びかけ人には、青井未帆(学習院大学教授)、上野千鶴子(社会学者)、大江健三郎(作家)、落合恵子(作家)、鎌田慧(ルポライター)、香山リカ(精神科医)、小森陽一(東京大学教授)、澤地久枝(作家)、瀬戸内寂聴(作家)、田中優子(法政大学総長)、鳥越俊太郎(ジャーナリスト)、なかにし礼(作家・作詞家)、浜矩子(同志社大学大学院教授)、樋口陽一(憲法学者)の諸氏らが名を連ねる。

 集会のスローガンは「『平和』と『いのちの尊厳』を基本に、日本国憲法を守り、生かします」「集団的自衛権の行使に反対し、戦争のためのすべての法制度に反対します」「脱原発社会を求めます」「平等な社会を希求し、貧困・格差の是正を求めます」「人権をまもり、差別を許さず、多文化共生の社会を求めます」の5本。

 集会は午後0時半から。大江氏のほか沖縄代表らの発言が予定されている。
 横浜市の臨港パークがこの種の集会の会場となるのは珍しい。集会実行委としては、都内で大勢の参加者が集まれる会場を探したが、いずれもすでに先約があって見つからず、東京から近い横浜の臨港パークということになったようだ。集会実行委は「万単位の集会を目指す」としている。

 ところで、この集会について実行委が記者会見をしたのは4月2日だが、翌3日付紙面でこれを記事にしたのは毎日(総合面に1段扱い相当、9行)と東京(社会面に写真つき2段扱い相当、28行)だけだった。読売、朝日、産経、日経には1行もなかった。このことに象徴されるように、各紙とも、改憲を掲げる政党の動きや国会内の動きは積極的に報道するが、護憲を掲げる団体の動きについては、ほとんど報道しないか、報道しても極めて小さい扱いだ。かつて、新聞各紙は特定の問題について報道する場合は、社論はひとまずわきにおいて、できるだけ公平かつ客観的な報道を心がけたものだ。それが、ジャーナリズムの基本とされた。しかし、最近は、自社の主張と異なる主張をする団体の動きは取り上げないという傾向が目立つ。これでは、読者の新聞離れがますます進むというものだ。

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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