「投資を呼び込み雇用を創出するため」という賭博解禁法案の立法理由

著者: 澤藤統一郎 さわふじとういちろう : 弁護士
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アベ・シンゾーでございます。何をやっても国民の怒りが政権批判に向かない、この不思議な国の内閣ソーリ大臣で、ご存じのとおり立法府のチョーでもございます。賭博解禁法案について、ワタクシの忌憚のないところをご披露申しあげます。最後まで、ご静聴ください。

議員立法として提出されております「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」でございますが、提案者諸君は「IR法案」と言っておるようでございます。しかし、ご指摘のとおり、この法案眼目は賭博の解禁にあるわけでございます。ですから、正確に申しあげれば「賭博解禁法案」、あるいはもっと端的に「賭場開帳御免法案」「バクチ法案」というべきでありましょう。

これを「カジノ法案」だとか、「IR法案」というのは、呼び方をマイルドにして実態をごまかそうという姑息なやり方。これは、不必要に国民世論の反発を恐れた、政治家として恥ずべき愚かな姿勢と言わねばなりません。お隣の韓国とは、我が国は国柄が違うのです。天皇陛下を戴くこの国は、どんな法案が出てきても、どんな強行採決をしようとも、「政府が右といえばまさか左とは言えない」ということでことが収まる「美しい国」ではありませんか。この国民性を徹底して信頼して真実を述べるべきが当然ではありませんか。

はっきりと申しあげます。アベ政権は、維新とともに、賭博解禁の法律制定を行おうとしています。で、それがナニカ? 文句があったら、次の選挙でアベ政権を倒せばよろしいのではございませんか。

ご存じのとおり、賭博は犯罪です。刑法185条は単純賭博罪を定め、「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する」とし、同186条は、常習賭博と賭博場開張等図利の罪を定めて、「常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。」「賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する」と定めています。

しかし、こんな法律は日本国憲法よりも古い、時代遅れの法律というべきではありませんか。時代が変わり、人々の生活環境が変わり、経済環境が変われば法律の改正や廃止は当然のことではありませんか。

いま、アベ政権は、愚かな賭博禁止に、合理的な風穴を開けようというのです。「IR法案」などと呼称しようという卑屈な姿勢はとりません。堂々と、数の力で審議も省略して強行突破させていただこうというのです。国民の皆さまから、いただいた議席を有効に活用しようというのです。それがナニカ?

このバクチ解禁法案につきましては、我が党の議員にも後ろめたさが感じられまして、「外国人観光客の集客を見込んでいる」とか、「ビジネスや会議だけではなく、家族でそうした施設を楽しむことができる施設」とか言っていますが、誰が聞いてもみっともない態度。わざわざ法案を作るのは「バクチ」を解禁するからであって、「入場者の大半は国民を、しかも地元民」を見込んでいます。それがナニカ?

皆さん、今国民が望んでいる政治の役割とはなんでしょうか。言うまでもなく、働く場を作り、雇用を創出することではないでしょうか。いま、アベ政権は雇用を作り、税収を増やしています。でも、まだ十分とは言えません。その目玉が、賭博なのです。

賭博にこそ大きな投資があるわけで、それこそが雇用の創出にもつながっていくのです。今回のこの賭博解禁法案こそが様々な投資を起こし、大きな雇用を作っていくということになるのです。だから、採決を強行しても、この法律の成立が必要なのです。それがナニカ?

何よりも経済振興が大切です。投資と雇用の創出。そのためには、徹底した規制の緩和、いや規制の撤廃で、儲けのために自由に事業ができるようにしなければなりません。

まずは賭博禁止の規制の緩和ですが、もちろんこれだけに終わらせてはなりません。いろんな規制に切り込んでいかなくてはなりません。

大阪の橋下徹さんは、「米兵に風俗の活用でも検討したらどうだ、と言ってやった。まあこれは言い過ぎたとして発言撤回したけど、やっぱり撤回しない方がよかったかも。きれいごとばかり言わず本気で解決策を考えろ!」などと発言していました。卓見だと思います。

今、管理売春は犯罪(十年以下の懲役及び三十万円以下の罰金)ですがこの規制も緩和ないし撤廃して売春を公認すれば、一大産業になります。大きな投資を呼び込み、雇用の創出と税収の増加を見込むことができます。アベ政権は、維新とともに真剣に検討課題といたします。えっ、それがナニカ?

事業成功の要諦は、みんなが望むことを的確に把握し、その要望に応えた商品やサービスを提供することににあります。ですから、政治を預かる者にとっての経済活性化の要諦は、国民が望む商品やサービスの提供を可能とするよう規制を緩和し撤廃することにほかなりません。そのような観点から、アベ内閣は、まず賭博を、次いで売春を、そしてその次には大麻を、麻薬を、覚せい剤の販売許容を検討します。日本が麻薬・覚せい剤を公認すれば、世界中からカネと人が集まります。投資が増え、雇用が飛躍的に増大すること間違いなし。銃砲刀剣類所持等取締法を抜本的に見直して、全国民が自由に銃や刀剣類を購入できるようにすることも経済政策として魅力満点です。「投資と雇用創出のため」と呪文を唱えれば、日本国民は抵抗しませんよ。それから、サラ金復活政策もありますね。これも大きな投資と雇用の創出。多重債務者の激増は、司法書士や弁護士業界の雇用創出にもつながります。

そして、言うまでもなく究極の投資は軍事費であり、最大の雇用創出は軍隊です。ワタクシ・シンゾーが、投資を呼び込み雇用を創出するために、まず手はじめに賭博解禁法案を強行しようとしていることについての深謀遠慮をよくご理解いただきたいと願う次第です。えっ、それがナニカ?
(2016年12月10日)

初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2016.12.10より許可を得て転載

http://article9.jp/wordpress/?p=7812

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/

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