「核兵器、軍事的には無用」…パウエル元米国務長官が重要発言

著者: 池田龍夫 いけだたつお : 毎日新聞OB
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「原爆忌」まであと半月、核兵器の抑止力が未だに罷り通っている現実に、苛立ちが募っている。そんな折、「広島・長崎を思い出せ。核兵器は極めてむごい兵器のため使えず、軍事的には無用な存在だ」と語った、元米国務長官の正論に感銘ひとしおだ。

朝日新聞7月10日付朝刊が報じたインタビュー記事で、取材に応じたのはコリン・パウエル氏(76歳)。1991年の湾岸戦争では統合参謀本部議長としてクゥエート奪還作戦を指揮。2001~05年には国務長官の要職を務めた。イラクへの単独攻撃に慎重派だったが、最終的にはブッシュ大統領の意向に応じたことを「自らの汚点」と恥じている。

インド、パキスタン関係の悪化を修復

「核兵器は無用の長物」と強調し、2002年には核武装したインドとパキスタンとの関係悪化の仲裁に乗り出し、広島・長崎の悲惨な写真を何度も示して、「対立緩和」に導いた秘話も語っている。「まともなリーダーならば、核兵器を使用するという最後の一線を踏み越えようとは決して思わない。使わないのであれば、基本的には無用だ」と断言したのは、今なお対北朝鮮、対イランとの緊張関係に警鐘を鳴らす発言である。

前日の記事を受け、7月11日付朝刊オピニオン面に詳報を展開した朝日新聞の問題意識を高く評価したい。パウエル氏の率直な考えを引き出した記者の質問もよかったと思う。感銘した発言を紹介しておきたい。

日本に非核化政策の堅持を求める

「我々は多くの国を説得してきた。たとえばリビアは説得された。(ブラジルやアルゼンチンのように)自ら納得して核開発を止めた国もある。彼らは『経済を立て直したほうがいい』と考えたのだ」…「日本の核武装は、理にかなった行動ではない。日本は過去60年で、原爆や戦争による破滅状態から、素晴らしい経済や生活水準を手に入れ、最も成功した国の一つとなった。日本が核兵器や開発計画を持たず、持つという意味もないことを再確認することだ。日本がその立場から離れれば、非核化の進展は難しくなってしまう」など含蓄に富む警告ではないか。日本が核兵器を持つことがいかに有害かを説く姿が印象的だ。

安倍晋三内閣の原子力政策は後向きで、米国の核抑止力に頼り過ぎではないか。日米同盟の相手国・オバマ政権は、非核化政策への転換に切り替えており、その点でもパウエル発言の意味は大きい。

自民党、日本維新の会の一部から〝核武装論〟が出てきた現実を放置することはできない。国民も非核化、護憲の日本構築に努力すべきである。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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