「歌会始」の不思議~ことしもまたいろいろ

今日、1月14日は、皇居での「歌会始」であった。応募歌数は15000首を超えたが、有効だったのは14600首だったという。近年は、14000から16000首を推移している。

題は「明」、入選者10人の短歌と選者栗木京子、召人ピーター・J・マクミランさんの短歌に続いて、愛子さん、紀子さん、皇后、天皇の歌が朗詠された。

入選者は、17歳の高校生、18歳の大学生から、81歳まで、男女各5人、教員・元教員が3人、青森県での東日本大震災、石川県の熊本地震の被災者の歌が各一首、さまざまなバランスを配慮した、全体的に素直で、伝統的な歌いぶりの十首に思えた。20代、40代がゼロ、30代1人、ほか50代以上が7人で、応募者も偏在していると推測される。また、「新潟日報」(1月14日)によれば気になるのは、高校生の入選者は、おなじみの東京学館新潟高校の生徒で、佳作14人の中にも3人いるそうだ。組織的な大量応募の結果で、私学の広報に利用されてはいないか。いや、歌壇や選者たちが「歌会始」自体を利用している実態も否定できない。

 「歌会始」を国民と皇室を結ぶ文化的、伝統的な行事と位置づける向きもあるが、身分制度をあらわにしたイベントの一つにはちがいない。応募者の短歌はすべて天皇に「詠進」されるものであって、入選者、選者、皇族たちの歌が朗詠される間、当事者は立ち上がる。皇后も同様である。天皇の歌が朗詠されるときは、天皇以外全員起立する。天皇の歌が3回朗詠されるが、皇后は2回、その他は1回という。果たしてこれが日本国憲法下の文化的行事と言えるのだろうか。

 NHKの中継が始まったのは、1962年からで、「歌会始」当日発表されるまで、作品の報道は「禁止」されているが、NHKは入選者、入選歌関係の事前の取材は怠りなく、当日の中継で披露される不思議。まさに国営放送ではないか。

 <参考>

「歌会始の儀 「明」お題に、陛下 新年の平安への祈り詠まれ、悠仁さま初めてご参列」(産経新聞オンライン 2026年1月14日12時50分)
https://www.sankei.com/article/20260114-QRMYMLCJHRNQXNRJ6FZVT64YL4/

「歌会始選者5人決まる 宮内庁」(共同通信 2025年7月1日)
三枝昂之(81)=山梨県立文学館館長、日経歌壇選者▽永田和宏(78)=京大名誉教授、歌誌「塔」選者▽今野寿美(73)=現代歌人協会会員、歌誌「りとむ」同人▽栗木京子(70)=読売歌壇選者、歌誌「塔」選者▽大辻隆弘(64)=現代歌人協会会員、未来短歌会理事長
https://news.yahoo.co.jp/articles/62aaca23022b7f7878f1e3244c4f877e57fbacc8
ちなみに、永田は、朝日歌壇の選者でもあるし、栗木とは同じ「塔」の選者であることがわかる。三枝は「りとむ」の発行人で、今野は「りとむ」編集人で、夫婦である。

初出:「内野光子のブログ」2026.1.14より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2026/01/post-00e36e.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/
〔opinion14622:260115〕