民主党は参院選投開票まであと数日の時点で実施された終盤情勢調査でさらに支持が低迷し50議席を割る可能性が出ている。自民党は公示直後の序盤情勢調査から比例代表が伸び悩み、横ばいの状態だ。唯一、獲得議席を伸ばす勢いのみんなの党は、10議席台に乗る可能性がある。
こうした終盤情勢は共同通信社が4、5、6の3日間、実施した電話世論調査で判明した。
民主が50ラインを割り込めば党内からの責任追及が一気に強まり、菅直人首相がその地位にとどまっても、9月末の代表選挙は前倒しせざるを得ない事態も予想される。小沢一郎前幹事長を支持する勢力の中から対抗馬が出て激しい代表選挙に持ち込まれそうだ。
ただし小沢氏に対しては、参院選直後に検察審査会から二度目の「起訴すべし」との要求が提出される恐れがあり、そうした要求が出ると小沢氏は自動的に強制起訴に持ち込まれ、菅首相を攻撃する勢いをそがれる。
唯一議席を伸ばしたみんなの党は、民主党からの連立の誘いを拒否し、政局のキャスチングヴォートを握ろうとするだろう。国会は衆院で307議席を持つ民主党が引き続き政権を維持するものの、国民新党の4を加えても3分の2(320)に届かないため、予算と条約承認を除く法案は野党が一致して反対すれば、すべて参院で否決される。
昨年8月30日の衆院選での政権交代までの「ねじれ」国会で当時の自民・公明連立与党が乱発した衆院3分の2以上による再可決・成立は不可能となり、民主党はいろいろな政党との間での法案ごとの修正―部分連合を試みるしか打開の道は無くなる。
▽党内不統一が支持減らす
11日の投開票日までの5日間、民主党による巻き返しの可能性が消えたわけではない。しかし菅直人首相の消費税引き上げをめぐる一連の発言が菅民主党への支持を急激に引き下げ、さらに小沢一郎前幹事長が消費税を含むマニフェスト修正を約束違反として公然と批判し続けたことから政権与党内部の意思不統一を露呈し、有権者の民主党批判をさらにエスカレートさせている。そうした流れが最終調査で鮮明になった。
この結果、投票日当日までにさらに民主党が支持を減らす恐れがあり、終盤情勢の民主党「49議席」が反転する可能性は極めて小さい。自民党も一週間前の序盤情勢から横ばいのままほとんど変わっておらず、民主党が減らした分はほとんどみんなの党に吸収された形だ。
▽民主49対自民46
共同通信による最終情勢調査の結果は次の通りだ。
民主党49プラス8マイナス3(うち選挙区33比例代表16)▽自民党46プラスマイナス6(選挙区34比例代表12)▽公明党10マイナス3(選挙区3比例代表7)▽共産党4マイナス2(選挙区1比例代表3)▽社民党2マイナス1(比例代表2)▽みんなの党9プラスマイナス3▽たちあがれ日本1マイナス1(比例代表1)▽国民新党ゼロ・プラス1(比例代表1)▽諸派ゼロ・プラスマイナス1(沖縄、香川選挙区のどちらか1)
▽自民、比例が頭打ち
6月24、25、26日の序盤情勢調査と比べると、民主党は選挙区で2議席、比例で1議席減り、合計3議席減少した。かろうじて「誤差」のプラス8が選挙区での接戦ぶりを示すが、わずか1週間で後退したことは否定できない。これに対し自民党は選挙区で善戦し序盤調査と比べて民主党を1議席上回ったが、比例代表が全く伸びず、トータルでは横ばいのままだ。
民主、自民の差は6から3に接近したが、自民党が参院で第一党になる可能性は小さい。
▽民主50が分岐点に
自民が比例代表で伸びないのは、これまで自民党を長年支持してきた各種団体が自民離れしていることと、舛添要一(新党改革)、与謝野馨(たちあがれ日本)、園田博之(同)といった新党結成組が離党によって比例代表票を大幅に自民党から引き剥がしているためだ。
他方、民主党の菅直人代表(首相)にとって、「50議席」のラインが今後、政権運営を続けられるか否かの分岐点となりそうだ。いまのところ最終調査のままではこのラインを割りそうだが、わずかに1議席マイナスの「49議席」にとどまるのか、それとも40台半ばにまで落ち込むのかで、菅政権を取り巻く情勢は大きく違ってくる。
後者のケースでは、代表選の前倒しなどの危機に追い込まれ、政権の座にとどまれるかどうか怪しくなる。菅首相にとって危機打開のもう一つの手立ては、自民党を含む各党からの議員の一本釣りによって、失われた与党過半数を取り戻す手法である。かつては小沢一郎氏らが最も得意とする手法だが、その小沢氏が菅首相批判の側に立っている以上、奏功するかどうか怪しい。(了)
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