菅直人首相は16日、再選後の新体制人事を進め、枝野幸男氏に替わる幹事長に岡田克也外相を起用することを決め、同日夕、岡田氏はこれを受諾した。枝野幹事長の交代人事は大敗した参院選の責任を取るという意味合いと同時に、先の代表選勝利を踏まえてそれまでの脱小沢色を薄め、挙党体制を重視する意味があった。しかし、岡田氏の幹事長起用は、脱小沢色の幹事長に替えて一層、脱小沢色が強く、しかもより大物の起用人事である。
岡田氏はグループには属さない一匹狼路線を歩んできたが、自民党を小沢一郎氏とともに離党、新進党を解党しようとした小沢氏を公然と批判、いったんは袂を分かった。小沢氏に先んじて民主党入りし、かつて菅氏が前回の代表を務めた際に幹事長として献身的に支えた。その際は野党・民主党だったが今回は政権与党の代表=首相を幹事長として支えることになり政治的重みが全く違う。
▽さすがの岡田氏も小沢批判
岡田氏よりあとから新進党―自由党―民主党と移った小沢一郎氏は、岡田氏を重用する人事はしなかった。小沢氏が代表を務めた時期も岡田氏を外相ポストに押し止め党内政局からはずし、もっぱら鳩山由紀夫前首相を厚遇した。昨年夏の政権交代後も外相に留任させ、さすがの岡田氏も珍しく小沢批判に転じ、今回の代表選では「起訴される可能性のある人が代表選に出馬することには違和感がある」と述べ、最も鮮明かつ強烈な小沢出馬反対を表明した。
岡田氏の持ち味はクリーンさと孤独を恐れない脱グループ原理主義にある。2005年には自民党の小泉純一郎首相が郵政民営化解散・総選挙に踏み切ったとき、民主党代表として戦い惨敗した。それでも岡田氏は「衆院選は特定の争点に絞って争うべきではない。国民が抱えるすべての課題や問題をめぐって争うべきだ」として譲らず、小泉首相の郵政民営化一点突破のまえに破れた。
▽仙石、玄葉、野田留任、片山氏起用へ
昨年5月、小沢氏が代表を辞任したとき、後任代表の最有力候補に上がったのが岡田氏だったが、小沢氏は自分に忠実な鳩山氏を後任代表に起用。岡田氏には一顧さえ与えなかった。こうした岡田氏の軌跡を辿れば、今回の枝野前幹事長を岡田新幹事長に替えた菅首相の人事は、脱小沢色を取り替えてより大物の脱小沢色の代表経験者を起用するという大胆そのものの人事だった。
菅首相は既に脱小沢の参謀格である仙石由人官房長官をいち早く留任させ、小沢氏が昨年の民主党政権スタート時に小沢氏廃止した政調会長人事でも玄葉光一郎現政調会長を留任させた。さらに選挙の顔となった連舫行政刷新担当相を留任させ、小沢氏が代表選で強調した地方重視を逆手にとって、かつての改革派知事のリーダー、片山善博前鳥取県知事の起用を内定している。
最重要の閣僚ポスト、財務相も日銀と組んで円高への為替介入に踏み切った野田佳彦財務相、連立与党を代表する国民新党の自見庄三郎金融担当相も留任させる。
小沢系列に色分けされる人事は、16日の時点では小沢寄りと見られるのは国対委員長候補の鉢呂吉雄氏くらいで、肝心の小沢氏本人をどのポストに起用しようと考えているのか、菅首相の心の中は不透明だ。国会議員票では互角の戦いをした「小沢色」を消したままねじれ国会を乗り切れるのか。菅首相は「世論調査での内閣支持率アップ」に賭けた観がある。
16日深夜の情報では小沢一郎、輿石東両氏をそろって代表代行に起用する案を菅首相は打診している模様だ。これも小沢氏が受諾するかどうか不透明だ。(了)
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