7月8日付毎日新聞によれば、1972年の沖縄返還を巡る日米間の密約を示す文書につき、元毎日新聞記者・西山太吉さんらが国に開示を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は7月7日、判決期限を今月14日に指定した。2審を見直す際に通常開く弁論を経ておらず、国に開示を求めて1審判決を取り消して原告側の請求を退けた2審・東京高裁判決(2011年9月)が確定する見通しとなった。
西山さんらは、日米高官が米軍用地の原状回復費400万㌦を日本が肩代わりすることなどに合意(密約)したことを示す文書など7点を外務・財務両省に開示請求。両省が文書はないとして不開示決定したため提訴していたものだ。
米国には公文書が存在しているのに・・
「沖縄密約」については、2000年に米公文書の存在が判明したが、日本政府はその存在を否定し続けている。西山さんは7日、「第一級の歴史的価値のある外交文書の存在が米国側では『ある』と証明されているのに、日本側では『ない』で済まされようとしている。存在が握りつぶされてしまうのなら、裁判所は不見識極まりない。廃棄したから文書がないのは仕方がない、などいうことが認められたら、何のための情報公開法なのか。法の精神を蹂躙している」と厳しく指摘していたが、まさにその通りである。
一審の杉原裁判長判決を思い出す
お粗末極まる最高裁の姿勢には驚くばかりで、一審での杉原則彦裁判長の名判決が頭に浮かんだ。2010年4月9日、東京地方裁判所の第103号法廷。杉原裁判長の凛とした訴訟指揮は見事で、「外務大臣が平成20年10月2日付けで示した別紙1-1行政文書目録1記載の各行政文書を不開示する決定を取り消す」との主文を読み上げた。続けて「財務大臣は、別紙1-2行政文書の開示決定をせよ。被告は、原告ら各自に対し、それぞれ10万円及びこれに対する平成20年10月2日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする」と申し渡した。事件当時の外務省北米局長・吉野文六氏らの証言などを通じて真相に迫り、日本政府の姿勢を強く批判したのである。しかし東京高裁判決で逆転、今回の最高裁判決に継承されてしまった。
「米国から〝写し〟を取り寄せ、説明責任を果たせ」
波多野澄雄筑波大名誉教授(日本外交史)は「01年に情報公開法が施行される直前に廃棄されたのではないか。最高裁判決で司法判断に決着がついたとしても、米国側に密約を示す文書が存在している以上、国は写しを取り寄せるなどして説明責任を果たすべきだ」(毎日8日付朝刊)との指摘は尤もである。
今なお続く沖縄米軍基地問題。その原点が「西山事件」なのに、上級審の逃げ腰の姿勢が悲しい。
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