「従軍慰安婦問題」をめぐる対立は、中・韓両国だけでなく、国際問題にエスカレートしてきた。
韓国の元慰安婦らが1991年、日本政府に補償を求めて提訴。政府の調査を踏まえ、宮沢喜一内閣の河野洋平官房長が1993年、「旧日本軍が慰安婦徴集に直接あるいは関与した非を認め、お詫びし反省する」との談話を発表した。いわゆる「河野談話」で、以降自民党、民社党政権もこの方針を継承してきた。ところが、安部晋三第2次内閣になってから、その雲行きが怪しくなってきた。国連をはじめ各国は「性奴隷」として慰安婦問題を捉えており、〝右寄り〟安部政権への批判が広がり、発足当初の「見直し」方針が揺らいできた。
チグハグな答弁が投げた波紋は大きい
安部首相は3月14日の参院予算委員会で、質問に答え「慰安婦問題の見直しはしない」と明言、ちぐはぐな政権運営に各方面からの疑念が上がった。
一方、菅義偉官房長官は2月28日の答弁に続いて、3月14日の同予算委でも「韓国側との意見のすり合わせがどうだったか、その可能性は検証する必要がある」と発言しており、政権内のグラツキが不信感を高めている。
朴槿恵韓国大統領との会談を早く開くため安部首相の深慮遠謀とも考えられ、韓国が誘いに乗って繰るかどうか、先行きは不透明だ。
韓国政府の姿勢は、なお厳しい
「ソウル連合ニュース」の報道によると、韓国外交部の趙泰永(チョ・テヨン)報道官は3月18日の会見で、「日本との首脳会談実現のためには(慰安婦問題)解決のための措置が必要」と述べ、日本の具体的な行動を求めたという。揺らぐ安部政権の今後の姿勢を見守りたいとの発言と思われる。
「誰が聞いても分からない」産経紙が厳しく批判
安部内閣寄りの産経新聞は3月15日付朝刊で「『河野談話』見直しをめぐる政府の珍説にあきれる」との大見出しを掲げて、厳しく批判した。
「誰が聞いても、よく分からない。首相は河野談話を継承するというのだから、あきれるのである。『検証して事実誤認があれば、継承せずに見送る』――こういう段取りこそ筋だろう。・・安部首相の政治理念までも色あせて、国際社会の無用な侮りを受ける急場の段階であれよこれよと誤魔化しても何ら国益にならない」との指摘を半ばうなずけるが、保守的な産経からソッポを向けられるようでは、自公政権の前途は多難である。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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